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Great things have small beginnings.

 


 「構造」は「モノと関係」を使って記述されるので、「構造」を検討する際、「全体と個」に対して、つねに、配慮していなければならない。たとえば、1つの学問領域--あるいは、そのなかの研究対象--を学習する際、(検討対象が、どのような「区域」のなかで扱われているのか、という点を確認して、) まず、体系を理解して、そして、その体系 (文脈) のなかで、個々の概念を習得する。

 或る研究対象 (事実的対象) を、どのようにして、1つの「構造」として定式化するか、という点は、「科学的方法」を前提にしている。「科学的方法」として、数学や記号論理学を前提にした方法が使われることが多い--というのは、「すべての」事実的対象を記述するアルゴリズムを「証明」として提示して、式の妥当性を検証できるので。言い換えれば、事実的対象に対して、式を使って、実験 (験証) できる。

 或る領域を学習しはじめた人たちが、その領域のなかで使われている「科学的方法」に対して、興味を抱いて、往々にして、「科学的方法」ばかりを、直接の学習対象にして、「科学的方法」を実際に適用して、なんらかの式を作ることに対して興味を示さないことがあるようです。「木を観て森を見ない」という故事がありますが、「科学的方法」そのものばかりに興味を示して、具体的な式を提示しない態度は、「森を見て木を観ない」と言っていいでしょう。

 「科学的方法」を、直接、検討対象にすることは、数学の前提や記号論理学の体系を問うことであって、およそ、入門段階の人たちが検討できるような対象ではない。あるいは、もう少し、一般的に言って、「体系」そのものを検討対象にして、「体系」を問うことは、入門段階の人たちが検討できるような対象ではない。

 実証研究では、(それぞれの学問の歴史のなかで継承されてきた「科学的方法」を前提にして、) まず、事実的対象の「構造」を記述するのが、作業の起点です。実証研究を、いくども、くりかえして、具体的な式 (結果) を、いくつも、打ち立てながら、「科学的方法」を使う際に、(数学や記号論理学が提示する語彙のほかに、) どのような「観察述語」を使えば良いのか、という点を配慮するのが、「科学的方法を検討する」ということです。したがって、「科学的方法」を検討するためには、(数学や記号論理学を専門にしていなくても、或る程度、) 数学の技術や記号論理学の技術を習得していなければならないし、かつ、それぞれの応用科学のなかで特徴的に使われている「観察述語」も知っていなければならない。
 それぞれの応用科学のなかで特徴的に使われている「観察述語」を知るためには、それぞれの応用科学の知識を、そうとうに習得していなければならない。したがって、入門段階では、「科学的方法」を、直接、検討対象にすることは、皆目、無理なことです。

 入門段階の人たちが、研究方法とか学問体系とか学問の前提に対して、興味を示すことは悪いことではないのですが、まず、個々の実証研究を積み重ねるようにしてください。

 
 (2005年 5月 1日)

 


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