このウインドウを閉じる

To paint the lily.

 

 事業を対象にして コンヒ゜ュータ・システム を作る際、分析段階・設計段階では、「意味論 (semantics)」 という ことば が使われていますが、世間で使われている 「意味論」 は、 私にとって、理解しにくい ことば の 1つです。

 「意味論」 という ことば が、われわれの仕事のなかで front-end に躍り出たのは、たぶん、1980年代初頭で、Chen P. 氏が 1976年に ER手法を (コット゛ 関係 モテ゛ル に対比して、) 「意味論」 の モテ゛ル として提示したのですが、ER手法は和集合とか サフ゛セット を扱うことができなかったので、ER手法を改善した モテ゛ル がいくつか提示されて--EER、SDM や DAPLEX など--、「意味論 テ゛ータヘ゛ース」 として総括されたからでしょうね。

 「意味論」 が学術的に検討されてきた領域は、「真」 概念を検討してきた哲学・論理学・数学・言語学の領域です。それらの学問領域の研究成果を コンヒ゜ュータ 科学 (computer science) は流用してきました。「意味論」 には、以下の 2つの系統があります。

  (1) 記述的意味論
  (2) 論理的意味論

 「意味論」 を モテ゛ル 理論との関係のなかで考えれば、モテ゛ル は、「語いと文法」 から構成されますから、モテ゛ル のなかで 「真」 概念を考えるのであれば、論理的意味論になります。すなわち、モテ゛ル であるかぎり、「構文論 (syntax)」 を前提にしていますし、この構文のなかで、「真」 とされる対象を示すために 「意味論」 が考慮されます。モテ゛ル とは、そもそも、「(語いと文法を示した) 一般手続き」 (演算手続き) のことを言うのだから、単なる記法ではないはずです。
 少なくとも、設計段階では、モテ゛ル (語いと文法) が提示されたら、その モテ゛ル の語いが現実世界の対象を どのようにして指示しているかという意味論 (論理的意味論) が問われます。そういう考えかたで作られている モテ゛ル が、コット゛ 関係 モテ゛ル です。

 論点になるのは、分析段階で、はたして、モテ゛ル が成立するかどうかという点でしょうね。分析段階で、なんらかの 「構造」 を作るのであれば、「構造」 は、「対象と、対象のあいだに成立する関係」 (語いと文法) を使って記述されますから、以下の 2点を考えなければならないでしょう。

  (1) 「真」 とされる対象 (語い)
  (2) 語いを使って 「真」 とされる文を作る規則 (文法)

 およそ、意味論と云うのであれば、以上の 「真」 を実現していなければならない。たとえば、或る システム・エンシ゛ニア が 「現実の事態」 を観て、「構造」 を作ったときに、その 「構造」 が 「真」 であること--対象が 「真」 であり、対象を使って構成された文が 「真」 (あるいは、充足的) であること--を、どのようにして保証してくれるのかという点が論点になります。或る人が みずから描いた 「像」 を 「真」 であると判断しても、ほかの人は、そう判断しないかもしれないから。この保証は、security の一種のはずです--security と云えば、守秘とか漏洩対策のことを云うことが多いのですが、the state of being or feeling secure が原義でしょうね。

 この security を実現できないかぎり、(現実を観て 「構造」 を作って、「記述的意味論」 だと言っても、) 正しい分析として信じる訳にはいかないでしょう。

 
 (2006年 3月 8日)

 

  このウインドウを閉じる