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The nurse is valued till the child has done sucking.

 

 私は、雑誌 「企業会計」 (中央経済社) を たまに読みます。昨年と今年は、「企業会計」 を、たびたび、購入して読みました。というのは、昨年と今年、会社法・「財務報告に係る内部統制」・会社法施行規則・会社計算規則・電子公告規則が公表されたので、それら一連の法令を学習するために読みました。

 雑誌 「企業会計」 を読みながら、コンピュータ 業界で出版されている雑誌を対比して感じたことは、「企業会計」 に匹敵するような中級・上級 向けの コンピュータ 雑誌があるのかしら、という点でした。
 私は、過去 20年くらい、日本で出版されている コンピュータ 雑誌を丁寧に読んでいないので--2種類の コンピュータ 雑誌の 「目次」 を ざっと観るくらいなので--、日本で出版されている コンピュータ 雑誌のなかで、「企業会計」 に匹敵するような雑誌があるのかどうか を判断できないのですが、「企業会計」 の原稿は、会計学者 (大学教授、大学院教授)たちや実務家 (公認会計士、税理士、弁護士など) が執筆していて、質が高い。ただし、論文集ではない。いわゆる 「制度会計」 に係る 公準・基準・手続きの全般を検討している専門誌です。或る意味では、「産学協同」 のひとつの形態と云っていい専門誌です。

 コンピュータ 誌は、業界で起こった できごと を 「報道する」 性質が強いようです。私の好きな英語誌 「ComputerWorld」 も、どちらかと言えば、その性質が強い。かつて (1980年代)、「DATAMATION」 とか 「Software Magazine」 という専門誌があって、個々の コンピュータ 技術を丁寧に検討していたのですが--コッド (Codd E.F.) 氏が 「DATAMATION」 に寄稿していましたが--、1990年代に廃刊になりました。私は、「DATAMATION」 と 「Software Magazine」 を講読していましたが、廃刊になったときに、「ひとつの時代の終わり」 を感じました。
 本 ホームページ の 「読書案内 (日本史年表)」 のなかで (103ページ 参照)、私は、以下の補遺を綴りました。

    年表を読んでいて感じる点は、1970年代が 「ターニング・ポイント」 だったかな
    という点です。この点を、神田文人 氏 (「昭和史年表 (完結版) [ 年表で綴る
    昭和のあゆみ ]」 の編者)は、以下のように総括なさっていらっしゃいます。

     1970年代に始まる新しい時代の波は 1980年代に入って いっそう顕著になる。
    一つは 「軽薄短小」 といわれる現象である。これは開発以来の電卓の急速な
    「軽薄短小」 化という、低成長時代の小資源国日本の経済活動の成果の表現で
    あった。が同時に、文化面でも 「軽薄短小」 化が進み、書籍より雑誌が、月刊誌
    より週刊誌が、総合雑誌より タウン誌・情報誌が市場価値を高め、さらに映像化が
    急速に進んでいる。もう一つの現象として 「選択的嗜好」 が目立っている。
     経済成長により一定の満足度が得られたため、マスプロ、マスセール の時代から
    「選択的嗜好」 の時代に移った。多様化の時代といわれるゆえんである。

 コンピュータ 業界では、1980年代終わりから 1990年代初めにわたって パソコン が普及して、さらに、1990年代なかばには、The Internet が普及して、上に引用した傾向が顕著になってきました。

 たぶん、どの時代でも、どの社会でも、新しい事物・事態が導入される 「現代」 は、(過ぎ去った頃に比べて、) 「いまどきの、、、」 というふうに非難の対象になるのかもしれないですね。

 ひとりの人間が貯蓄できる知識量には限界があるのかどうかを検証するのは むずかしいでしょうが、少なくとも、伝達される知識量には、なんらかの制限があるはずです。たとえば、書物も、300ページ を超えた大作というのは、なかなか、執筆しにくいでしょうし、読みにくいでしょう。とすれば、限られた ページ 数のなかに盛り込む知識は、新しい知見が入れば、いっぽうで、いくつかの学識を割愛しなければならないでしょう。そのときに、全体像を整合的に伝えるには、そうとうな見識がなければならない。ひとつの専門領域に関する入門書を執筆するというのは、ことさように、むずかしい。でも、そういう 「通論」 が基礎知識なのです。基礎知識を習得しないで、いま話題になっている技術を習得しても、その技術しか知らない便利屋 (handy-andy) で終わってしまいます。

 そういう基礎知識に言及しながら最新技術を的確に解説する専門雑誌があれば、理論も技術も正当に継承されるでしょう。「企業会計」 は、そういう性質の雑誌です。そして、そういう性質の雑誌を、われわれ コンピュータ 業界でも、ぜひとも、欲しいと思っているのは私だけではないでしょう。

 
 (2006年10月23日)

 

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