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Exuberance is Beauty. (William Blake)

 

 Bloomsbury Thematic Dictionary of Quotations の セクション beauty のなかで、以下の文が私を惹きました。

    You know, you can only perceive real beauty
    in a person as they get older.

    Anouk Aimee (1932- ) French actress.
    Remark, Aug 1988

 
 セクション beauty には 41篇もの引用文があったのですが、そして、beauty という いくらでも意見を言えそうな テーマ にもかかわらず、私の眼をひいたのは上の引用文だけでした。私が年老いてきたからかもしれない──若さがもつ beauty には私自身が興感を もう覚えないのかもしれない。

 他人 (ひと) を判断するときに私は相手の顔 (と眼) を観るのですが、私は占い師じゃないので、顔 (と眼) を観て他人の人生を占うというような手品をやっている訳じゃないんであって、そのひとの気配を観ているということでしょうね。「思ひ内にあれば色外 (ほか) に顕 (あら) はるる」 (「心右記」) というように、相手の気配を われわれは普段の生活のなかで確かに感じているでしょう。他人 (ひと) には わからないように隠れてやっていることは、当人が よほどの名優でもないかぎり、気配が漂揺する。猫を 10匹被ったくらいじゃ 四辺の人たちには見え見えでしょうね。私は思いが顔に直 (じか) に浮かぶほうなので、回りくどいことは止めて直截に ふるまうようにしています。私が腹蔵なく しゃべるのは、私の顔にでた喜怒哀楽を邪推されたくないので、包み隠さないで しゃべっているというだけのこと。

 この論調で筆を進めれば 「反文芸的断章」 の エッセー になるので、ここで トーン を変えて、「老いるにつれて、人柄のなかに beauty を感じる」 か、、、私は賛同し難い。ビジネス社会の人間関係において、じぶんを抑えてきたがために、抑圧された自意識が恨みがましく滲みでた顔なら私は数多 (あまた) 観てきました──その顔が睥睨していようが右顧左眄していようが、「不満感」 が漂揺している。勿論、私も それを免れている訳じゃない。穏やかな real beauty [ それを 「品」 と云っていいのかも ] を感じた人物を私は数名知っていますが、かれらは宗教家あるいは大組織のリーダーです。かれらを観ていて私がわかったことは、リーダーとは底の抜けた柄杓状態になれば本物なのでしょうね──だから、他人を動かすことができるのでしょう。逆に言えば、悧巧さや強慾さが顔にでているようじゃ real beauty は伝わる訳がない。じぶんのことを先に護身して、さて他人と仲良くなろうというのは図々しいのでしょうね──自戒を込めて。

 
 (2011年 6月 1日)

 

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