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You cannot fashion a wit out of two half-wits. (Neil Kinnock)

 

 Bloomsbury Thematic Dictionary of Quotations セクション Foolishness のなかで、次の文が私を惹きました。

    A fool at forty is a fool indeed.

    Proverb

 
   Fool の定義は、person who acts or thinks unwisely or imprudently です (Pocket Oxford Dictionary)。反対語が、たぶん、wise なのでしょうね──「たぶん」 と綴った理由は、wise も fool になることがあるので (私がそう思う理由の詳細は後で述べます)。

 「40歳の凡暗は、本当に凡暗である」 か、、、なんとなく わかる気がする。40歳といえば、オジサン とよばれる頃で、仕事では実際的知識を習得して体験も積んで、大事な仕事を任せられている年齢でしょう。そういう人が unwisely or imprudently に振る舞うあるいは思考するというのは、やはり凡暗とよばれても しかた ないでしょうね。ちなみに、wise の定義は、having or showing or dictated by wisdom, having knowledge, suggestive of wisdom です (US では、alert, crafty のこと)。wise の中核概念は wisedom および knowledge ですね── wisdom の定義は、experience and knowledge together with power of applying them です。

 論点となるのは、wisdom および knowledge の作用範囲です。つまり、どういう domain (領域) に於いて そういう wisdom および knowledge が使用に堪えうるか、ということです。或る時代の或る社会に於いて、或る知識を持って判断することが賢いとされていても、他の時代・社会では、愚かな判断としてみなされる──すなわち、wisdom や knowledge は個性的であって普遍的ではない、ということ。その普遍性を追究している人たちが、哲学者・論理学者・数学者とか科学者でしょうね。それでも、或る時代に彼らが証明して真とされた 「理論」 が 後の時代には覆される (あるいは、改訂される) ことも起こります。況 (いわん) や社会通念をや。

 しかも、ひとつの概念 (社会通念) が単独で存している訳ではなくて、他の諸々の概念との諸関係のなかで作用するので、或る社会の ひとつの通念を修正 (あるいは反故) にしようと思っても、なかなかそう簡単にはできない。社会の制度や通念を作ったり変革したり捨てたりできるのは、天才の為せる ワザ でしょう (荻生徂徠 風の言いかたをすれば、そういう人たちを 「聖人」 というのでしょう)。そういう人たちの言動は、我々の眼には奇妙にうつるけれど、世間は そういう人たちを fool として嘲ることはしないで、「変人」 とみなすようです。

 40歳にして凡暗とは、或る社会のなかで年相応と期待されている思量 (知識、経験) に欠ける状態を云っているのでしょうね。仕事をしている人であれば、その仕事のなかで体得した知恵を他の生活の局面でも活かすことができて、人柄が調和がとれている [ 歪 (いびつ) ではない ]、というのが年相応の 「大人」 なのでしょうね。いっぽうで、終日、ひとつの研究に専念していて日常のことに疎い専門家もいます──数学者や哲学者のなかに そういう人たちが多いようです。そういう人たちのことを absent-minded と云っていますが、absent-minded は凡暗ということじゃなくて、偉才に対して敬愛を込めて云っている──あれほどの すごい研究をしているのだから、他のことは少々ぬけてもしゃーない、と。そして、ジョーク の ネタ にされることが多い。

 40歳にして凡暗であるというのは困るけれど、物事の細部にばかりに気を配り他人の過失を咎めて、社会通念という枠組みから逸れないように監視しあうのも どうかと思う。そういう状態では、仕事に没頭して思考を巡らすということが難しく、上辺 (うわべ) だけを取り繕うことに気を向けるようになってしまわないか?

 私がいっしょに仕事をしていて、疵のある歪な人のほうが いい仕事をすることを多く観てきました──勿論、そういう人たちばかりだと仕事は逆にうまくいかないけれど、全体の 1割か 2割ほどは そういう人たちがいるほうが断然いい。私も若い頃 (30歳代) は管理しにくい生意気でしたが、当時の社長 (ビル・トッテン氏) の庇護があって、伸び伸びと仕事ができた (勿論、そのために、他の人たちが迷惑を被っていることは、ちゃんと意識していました)。そして、その時の仕事 (データベース 設計) が今の私の仕事 (事業分析・データ 設計のための モデル 作成) となった。当時、私は、我が儘な ヤツ とか 「新人類」 「宇宙人」 と云われていたけれど、凡暗ではなかったつもりです。

 
 (2017年10月15日)

 

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