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More haste, less speed. (Proverb)

 

 Bloomsbury Thematic Dictionary of Quotations セクション Haste の中で、次の文が私を惹きました。

    In skating over thin ice, our safety is in our speed.

    Rakph Waldo Emerson (1803-82) US poet and essayist.
    Essays, 'Prudence'

 
    Hurry! I never hurry. I have no time to hurry.

    Igor Stravinsky (1882-1971) Russian-born US composer.
    Responding to his publisher's request that he hurry his comple-
    tion of a composition
    Attri.

 
 日本語の諺にも 「急がば回れ」 とか 「急いては事をし損じる」 という 「性急 (せっかち)」 を誡める諺がありますね。「果報は寝て待て」 とか 「待てば海路の日和あり」 という格言もあります。いずれの諺も根柢にあるのは 「時機を待て」 という教訓でしょうね。

 私は若い頃 (20歳代、30歳代) には随分と 「性急 (せっかち)」 だった──思い立ったら、直ぐに行動しないと気が済まなかった。65歳になる今では、まったく逆の傾向にあります──腰が重くて、なかなか動こうとはしない。そうなったのは加齢に因るものなのかどうかは わからないけれど、若い頃と今と比べて、「時機」 という観点から私の振る舞いを鑑みれば、「待てば海路の日和あり」 という事態が確かに多かったように思う。

 「機会原価 (opportunity cost)」 という経営意思決定上の語がありますが、株 (a stock) のように刻々と価値が変動する事象を除いて、会社経営でも日常生活でも、速断しなければならない事態というのは ほとんどないでしょう。寧ろ、速断を避けて、事案を数日寝かして再考して (on second thoughts)、最終判断を下すことが ほとんどでしょう。

 私のことを言えば、たぶん元来 「怠け者」 な性質なのかもしれないのですが、なかなか決断しない──事案が気になって、決断していないことに気をもんでいるというのではなくて、決断しようという気が そもそも ない (苦笑)。私に係わる事案なのに何もしないで、事の成り行きに身を任せているという次第です。

 仕事上でも、私は自営ですが、独立開業しているのも係わらず、独立して以来 30年のあいだ営業を一切して来なかったし広告も 一切 出して来なかった。それでも 30年間 やって来られました。私が独立開業した理由は、起業して儲けようという意図はなくて、他人からの制約・束縛を離れて、自分のやりたいことをやるためでした。その目的は、65歳となった今、或る程度 実現できたと思っています。そういう やりかた をしてきて、苦労 (特に、経済的苦労──2011年から 2016年のあいだに会社が危なかった時の苦労) がなかった訳じゃないけれど、その苦労を取り立てて苦痛であると感じなかった [ 今振り返ってみれば、当時、苦労だとは そもそも 思っていなかった節がある ]。

 私のそういう態度が世間の常識から観て常識外れだということは私も重々承知しています。実際、数人から非難されました──「甘えている」 「社会人としての常識がない」 と。そういう非難を私は甘んじて受け入れますが、私とて 65歳の大人なので、まったくの計画 (計算) なしに事の成り行きに任せている訳じゃない。考えたうえで敢えて危険を冒しているつもりです (英語で言えば、take a calculated risk)、無鉄砲でやっている訳じゃない。そうでなければ、独立開業する訳がない。最後の一線を越えないで [ 破産・破綻しないように ]、計算 (やりたいことをやっているという充実感と経済的な安心感との trade-off) をやっているつもりです。来し方を つらつら思えば、出世したいとか名誉を得たいという野心がないのであれば、「ゆっくり急げ (More haste, less speed)」 というのが生活の コツ なのかもしれない。

 
 (2018年 8月 1日)

 

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