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Commonsense is the wick of the candle. (Emerson)

 

 Bloomsbury Thematic Dictionary of Quotations セクション Inspiration の中で、次の文が私を惹きました。

    Ninety per cent of inpiration is perspiration.

    Proverb

 
    I did not write it. God wrote it. I merely did
    his dictation.

    Harriet Beecher Stowe (1811-96) US novelist.
    Referring to Uncle Tom's Cabin
    Attrib.

 
 Inspiration の語義は、the process of being inspired、a person or thing that inspires、a sudden clever idea (Pocket Oxford Dictionary )。Inspire の基本的な語義は、fill with the urge or ability to do or feel something (同)。Inspiration の日本語訳として、「霊感、妙案、鼓舞」。

 若い頃に 「文学青年」 を気取った人たち (あるいは、天才気取りの人たち) は、inspiration を粧う きらい があるようです──「文学青年」 の私が正に そうでした (苦笑)、35歳 (40歳くらいかな?) まで そうだったかもしれない。そういうふうに粧う人たちは、「天才肌」 だと云われて嬉しがる。「天才肌」 というのは天才ふうの気質・気性が感じられるということであって、天才たる実績を為したことを云うのではないでしょう──思いがけない着想が浮かぶ故に天才肌だと云われても、その着想が逞しい思想・学説に結実することがない、天才肌とは 所詮 (世人から見れば) inspiration に頼って活溌溌地たらんとする見せかけの様態 [ すなわち、ナマケモノ ] と同値ではないか。ロダン (彫刻家) の次の ことば を私は座右の ことば にしています(「ロダン の言葉」)──

    天才? そんなものはけっしてありません。ただ勉強です。方法です。
    不断に計画しているということです。

 本ホームページの 「思想の花びら」 を開設したときに、ロダン の この ことば を最初に引用しました。「思想の花びら」 を開設した時期は 2001年12月24日ですから、今から遡って 19年くらい前であって私が 47歳の頃です。「思想の花びら」 を開設した時期が そのときでしたが、その一番最初に ロダン の ことば を引用したということは、それ以前から この ことば が私の意識に強く刻まれていたということです。当時、私は、T字形 ER法を改訂するために数学・哲学に専念していた頃で、数学・哲学の天才たちが著した書物を読んでいました──本物の天才たちの前では、天才肌を粧った 「文学青年」 の気取りなどは撃砕されました。そして、そういう天才たちを読んで私がわかったことは、天才たちは成すべきことを為すために つねに工夫している、ということでした──天才たちの特徴として、世上云われている 「霊感」 など彼らには無縁だということです。私くらいの程度の凡人が天才たちを真似るとしたら、天才たちの そういう態度しかないでしょうね。ロダン の ことば を もう一つ引用しておきます──

    辛抱強くあれ! 霊感をあてにするな、そんなものはないのだ。
    芸術家の資格とは、知恵であり、誠実さであり、意力である。
    諸君の仕事を、あたかも実直な職人のように果たしたまえ。
    (「遺言」)

 天才を気取る人は inspiration が天才たる特徴であると思っているかもしれないけれど、inspiration というようなものは天才の拒絶するものではないか。どのような実直な仕事でも そうであると想像できるのですが、天才たちの仕事 (成果物) も 「成すべきことを為す」 ということを意識した労働であるということ──ただ、凡人は、得てして 「為しうることを成す」(できることしか やらない) というふうに安直なほうに逃げやすい、、、だから、「成すべきことを為す」 ために 「つねに工夫している」 ということを私は忘れないでいたい。

 
 (2020年 5月 1日)

 

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