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A rose amid nettles.

 
 モーツァルトの音楽を語るとき、「軽味」が特徴として指摘されているが、その 「軽味」は、透き通った悲しみ----生活の事象に触れて感じる反応としての 一時的な悲しみではなくて、身体を静止して平穏にしていても、なお、感じる とでも言いたくなるような、人間の身体のなかに生理的に浸み わたり同化しているとでも言ってよい生得的悲しみ----のように、 私は感じる。

 40歳以前には、モーツァルトの音楽に対して感応できなかったが-- たぶん、思考を向上したいという思いが、ほかの感情を凌駕して、私を覆っていて、「生まれて、生きる」 という営みのなかに潜んでいる悲しみを感じることができなかったのだと思うが--、 50歳を超えた今では、モーツァルトの音楽を、「天上の音楽 (Heaven Music)」 と言いたい。 ピアノ協奏曲とクラリネット協奏曲は、比類がない。

 
 (2005年 5月 8日)


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