anti-daily-life-20200801
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Why are you discussing among yourselves about not having any bread?
(Matthew 16-8)

 



 小林秀雄氏は、「西行」 の中で次の文を綴っています。

     西行は何故出家したか、幸いその原因については、大いに
    研究の余地があるらしく、西行研究家達は多忙なのであるが、
    僕には、興味のない事だ。凡そ詩人を解するには、その努め
    て現そうとしたところを極めるがよろしく、努めて忘れよう
    とし隠そうとしたところを詮索したとて、何が得られるもの
    ではない。

 今までの生活を きっぱりと捨て、新たな生活を始めたとき、昔の生活を語りたくないという人たちもいるのではないか──覚悟をきめて踏み出した生活が後々の人生を形成した場合には 特に そうではないか。私の場合は、大学・大学院を出てから [ 社会人になってから ] 30歳すぎまでの時期を封印しています。その時期のことを私は 「努めて忘れようとし隠そう」 としている──社会人になってから 30歳くらいまでのあいだ、世間的には有名な企業に勤めていたけれど、組織になじめない私の精神は惨めな ドン 底に存 (あ) った。本 ホームページ では、その頃の生活を いっさい 言及していない (意図的な空白状態です)。他人から その頃のことを触れられる [ 訊かれる ] のも嫌だし、私が当時の生活を語るのも厭 (いと) う。時空というものは断続なく流れているので、今の私が存るのは その封印された過去を切り取り捨てることができないけれど、そうであれば、私のほうで意識的に封印します。

 今の私の仕事は、30歳すぎに就いた仕事 (データベース 技術) が起点です。以来 35年ほど、私は その仕事に専念し その仕事を拡張してきて現在に至っています。その切っ掛けを与えてくださったのが ビル・トッテン 氏です。当時の日本社会 [ 日本の会社組織 ] には私は適応できない性質でした、そんな私を彼は組織のなかで自由に振る舞うようにしてくださった、私は伸び伸びと仕事をすることができました──その仕事のなかで考えたこと・実現してきたことは、本 ホームページ のなかで綴られている仕事に関する記述が すべて を物語っています。データベース 技術を起点にして モデル 技術を探究するに至るまで、喩えれば 私は ゴツゴツ とした大きな岩 [ 或るひとつの something ] を懸命に転がしてきました。今も 勿論 その途上です。

 社会に次々に現れる最新の コンピュータ 技術をシステム・エンジニアとして取り組んで行くという やりかた は立派ですが、(私は自らの職分として システム・エンジニア を自称していますが) 私は システム・エンジニア であった例 (ためし) がない──私は プログラマ としての技術も持ちあわせていないし、SE としての プロジェクト・マネジメント の力も持ちあわせていない、ただ ひとりの 「文学青年」 が たまたま 長いあいだ モデル 技術 (正確に言えば、「論理」) を探究してきたというだけの話です。私は、30歳以後、ただひたすらに それを進めてきました。だから、私が封印している頃のことを思い起こしても、「何が得られるものではない」。「文学青年」 が モデル の理論・技術を扱うと こうなるという例が TM3.0 なのです。本 ホームページ のなかで以前にも綴りましたが、私は事業を起こす [ 興す ] ために独立開業した訳でもないし、その事業を成功させて金儲けしようと思って独立開業した訳でもない、私の思いは コンピュータ 技術にも それを事業とすることにもあったのではない (当初、このことを説明しても だれにも わかってもらえなかったのですが、この頃は わかってくれる人たちが多くなりました、それは たぶん 私の貧乏状態を見て思ってのことだろうけれど [ 笑 ] )。「いかに物事を考えればいいか」、これが私の しつこく 追究している テーマ なのです。そして、他人から制約束縛をうけないために独立開業してモデル 技術を考えることが恰好の やりかた だったということです。

 
 (2020年 8月 1日)


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