2022年 4月 1日 「あとがき」 を読む × 閉じる


 本書を執筆した理由は、モデル 論を学習するための入門書として、いわゆる 「数学基礎論」 の基礎知識を説明するためでした。「数学基礎論」 は、コンピュータ の故郷です。その 「数学基礎論」 に沿った モデル 論を学ぶ基本的前提を本書では説明しました。

 「数学基礎論」 が計算機科学への応用と基礎論の テクニカル な抽象論に二極化されて、システム・エンジニア が 「数学基礎論」 の書物を読もうと思っても その中身が抽象すぎて難しいので敬遠するという実態を私は観てきて、システム・エンジニア にも わかりやすいように中身を執筆したつもりです。ただ、いっぽうで 現実の モデル 作成では (システム 作りの分析段階において)、システム・エンジニア の個人的力量に依存した モデル らしきものが蔓延しているのも事実です──その実態に対する私の抵抗を示すために本書を執筆したことも理由の一つです。分析は科学です (科学のはずです)。モデル 作成技術は、システム・エンジニア の個人的力量に依存した diagramming 法ではない。

 E.F. Codd 氏は、1970年代に、データ 設計を科学にしました。彼の理論は、Relational completeness (完備性/完全性) が証明されています。当時から すでに 50年以上の年月が流れていますが、データ 設計技術では E.F. Codd 氏の理論を超える技術が現れていない。しかし、システム 分析は、今なお 「暗黒大陸」 のままの状態です──「私は、こうして痩せた」 というような個人的ダイエット体験を披露したような メソッド が蔓延して乱立している状態です。分析が科学であるのなら、分析のなかにも (E.F. Codd 氏が データ 設計において証明したように) 完備性/完全性を満たす モデル 論を定立できるはずです。その科学的な やりかた の一つを本書では記述したつもりです。

 本書は、マーケット では ウケ ないだろうという (残念ながら) 半ば諦めにも似た気持ちを以て私は執筆していました。実際、本書は マーケット では ウケ なかった──今まで出版してきた拙著のほとんどすべては (「リポジトリ 入門解説」 を除いて) 4刷以上になっていたのですが、本書は 1刷で終わっています (苦笑)。しかし、拙著のなかで、私が気に入っている著作です (「論理データベース論考」 と 本書は、私が一番に気に入っている著作です)。「論理データベース論考」 を執筆しなかったら、本書を きっと執筆していなかった──そういう意味では、「論理データベース論考」 と本書の二冊は、私自身にとっても、「数学基礎論」 の基礎知識を体系立ってまとめた私自身用の サブノート なのです。

 前回綴ったように、本書の最終 ページ で示した モデル 観が今の私の モデル 観です。その モデル 観を前提にして モデル 作成技術を整えたのが TM3.0 です。TM3.0 は、今年 (2022年) の夏頃、出版します (原稿は ほぼ脱稿しています)。出版社は、今までの拙著を出版していただいた SRC 社ではなくて、技術評論社です── SRC 社は、十数年くらい前に出版事業を停めました、私の辿り着いた モデル 観を SRC 社から出版できたことを嬉しく思っています、私の モデル 観は SRC 社から出版してきた一連の拙著とともに進化してきました、私は SRC 社に育ててもらったと言っていいでしょう。システム・エンジニア でもなく プログラマ でもない私のような 「文学青年」 が まがりなりにも モデル 論を探究できたのは SRC 社の高恩に依る。本書の 「あとがき」 の註釈を綴るにあたって、感謝を述べたい (私の生涯忘れない感謝です)。

 本 エッセー を以て、「『いざない』 を読む」 は完了します。モデル 論に関する エッセー は、しばらく休止します。休止の後、モデル 論について どういう エッセー を書くかは まだ決めていませんが、(モデル 論について) なんらかの エッセー を新たに綴りたいと思っています (私から モデル 論を とってしまったら、私は ただの ナマケモノ になってしまうので-笑)。モデル 論の新しい エッセー を たのしみに待っていてください。

 本書で辿り着いた モデル 観を前提にした TM3.0 が技術評論社から出版されるので、完備性/完全性を満たした モデル TM をみていただければ幸甚です。乞う、ご期待。 □

 




  × 閉じる