2019年12月 1日 「5.1.3 仮言の論理法則と『対偶』」 を読む × 閉じる


 前々回 (「5.1.1 論理法則」) 、私が記号論理学を はじめて学習したときに、論理式 p → (p∨q) が 「恒真」 であるということを直ぐには わからなかったことを述べましたが、同様に数学基礎論の書物を読んだときに次の論理式が同値であることが当初わからなかった──

    p ⇒ q ≡ ¬p ∨ q.

 この同値関係が当初わからなかったので、丸暗記していました (苦笑)。数学基礎論・記号論理学の書物を数々読み進めるつれて、この同値な論理式のあいだには、もう一つ論理式を入れてみれば わかることに気づきました──

    p ⇒ q ≡ ¬(p ∧ ¬q) ≡ ¬p ∨ q.

 この同値関係のなかで、論理式 p ⇒ q ≡ ¬(p ∧ ¬q)は記号論理学では仮言命題の同値関係として扱われることが多くて、論理式 p ⇒ q ≡ ¬p ∨ q は数学基礎論で 「双対」 のなかで扱われることが多いようです。

 論理式 p ⇒ q ≡ ¬(p ∧ ¬q) は、次のように考えれば わかりやすいでしょう (ただし、二重否定を前提にしていることに注意されたい [ ¬¬q = q ])──

    p ⇒ q 天気が良ければ、野球をする。

    ¬(p ∧ ¬q) 天気が良ければ、野球をしないことはない。

 ド・モルガンの法則を適用して、

    ¬(p ∧ ¬q) ≡ ¬p ∨ q.

 
 そして、もう一つ とても大事な仮言命題の同値関係を次に考えてみます──

    p ⇒ q ≡ ¬q ⇒ ¬p.

 この論理式 ¬q ⇒ ¬p は、論証では大事な仮言命題であって、「対偶 (contraposition)」 という特有な名称を付与されています。私が モデル 技術 TM を作る際に根拠にしていた二人──ウィトゲンシュタイン氏 (哲学者) と ゲーデル氏 (数学者)──も たびたび 「対偶」 を使っています。p ⇒ q ≡ ¬q ⇒ ¬p の同値関係が成り立つ理由は、f (p, q) ≡ p ⇒ q とすれば、次のように考えればいいでしょう──

    1. p と q を入れ替える [ f (q, p). }
     f (q, p) を f (p, q) の 「逆 (converse)」 と云います。

    2. p と q を それぞれ ¬p と ¬q で置き換える [ f (¬p, ¬q). ]
     f (¬p, ¬q) を f (p, q) の 「裏 (reverse)」 と云います。

    3. 「逆」 と 「裏」 を同時にやれば、f (¬q, ¬p) は ¬q ⇒ ¬p となる。

 ちなみに、p ⇒ q と ¬q ⇒ ¬p の それぞれの真理値表を作成してみれば同値になる (拙著 「論理 データベース 論考」 55ページ)。p ⇒ q のことを 「前件肯定式」 と云い、¬q ⇒ ¬p を 「後件否定式」 と云います。仮言命題では、「前件肯定式」 と 「後件否定式」 の ふたつが妥当な論理式です。

 なお、p ⇒ q は、集合論に翻訳すれば、p ⊂ q となります。哲学の書物を読むときに気をつけてほしいのは、p ⇒ q を p ⊃ q と記述していることがあります── p ⇒ q のことを哲学関係の書物は 「含意 (implication)」 の意味で p ⊃ q と記述し、数学の書物は p ⊂ q と記述しています。p ⇒ q を p ⊃ q と記述する理由は、p ⇒ q が論理的に真で かつ p が真ならば q が偽であることは絶対に起こらない── p が真ならば すべての論理的可能性について q も必ず真になる──、言い替えれば p が q を導くことを意味しています。いっぽう、数学では ふたつの集合のあいだの包摂関係を意味しています。⊂ について この ふたつの正反対の記述を読んで私は 当初 戸惑ったのですが──というのは、私は数学基礎論を学習する前に哲学の書物を読んでいたので、p ⇒ q は p ⊃ q というふうに記述すると覚えていましたが──、今は数学の p ⊂ q を使っています。 □

 




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