思想の花びら 2019年 7月15日


 ●  アラン (哲学者) のことば

  真の科学は近似性によってすなわちあやまりを量の上で制限することによって、自然の事物をとらえるが、通俗な考え方は、経験の力にたよって、一種の蓋然性に到達する。累積によるこの種の証明は、帰納法としばしば呼ばれる。秩序ある探究にあっては、理論が経験を充分に厳格に枠に入れていれば、唯一の経験でも証明の役に立つ、また、それでも経験をいくどもくり返してみるのは、証明を確立するためというよりむしろ一段とはっきり知覚するためだ、そういうことを人々は忘れがちである。

 



 ●  亀井勝一郎 (批評家) のことば

  信を求むることによつて、神に近づいたと感ずるよりも、いかに神から遠く離れた存在であるかを絶えず知るやう努めること、(略) 即ち天国の方へ向いてゐた己が身をば、地獄の方へ強引に転換せしむる──実はこの転換せしむる力に、神の明智があらはれてゐるのだと云つてもよいのだ。求信はそのはじめにおいて、恩寵を享けるであらうといふ快い喜悦に我らを導く。だがさういふ期待をまづ激しく裏切るものは神自身なのである。神の裏切りを経験することが、求信における最初の試練となるであらう。

 


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