英語 (日本文化) >> 目次 (テーマ ごと)


 英語と日本語の [ 発想の ] 違い (意識構造) を際だって認知するためには、日本語慣用表現を英語の表現と対比してみるのが最も近道である。以下の記載する書籍は、単語単位に記述されているので、興味ある単語 (あるいは、英訳を調べたい単語) を 「拾い読み」 すればよい


 

 ▼ 以下の 4冊は座右に備えておけば極めて役立つ。

 ● 最新 日米口語辞典、Seidensticker、松本道弘 共著、朝日出版社

 ● 日英語表現辞典、最所 フミ 編著、研究社

 ● 英語ことわざ辞典、大塚高信・高瀬省三 共編、三省堂

 ● BEYOND POLITE JAPANESE (A Dictionary of Japanese Slang and Colloqualisms)
  Akihiko Yonekawa 著、 Jeff Garrison 翻訳、KODANSHA INTERNATIONAL

 



[ 読みかた ] (2006年 4月 1日)

 この 4冊と、「日本紹介のために」 ヘ゜ーシ゛ のなかで記載した 「日本紹介のための 英語会話辞典」 (旺文社) を てもとに置いておけば、英作文の際、非常に役立ちます。ぼくは、英文日記を綴る際に、これらの辞典を、多々、参照しています。

 日本で育って、英語を学習する際、「日本語の表現力」 のほうが強いのは当然であって、母国語として自然に体得している 「日本語の表現」 を、いかにして、英語の 「自然な」 記述として翻訳するかという点が、英語学習の中核になるでしょう。英語学習では、「think in English」 を謳っている人たちもいますが、日本語の運用力と同じ程度の英語運用力を 「think in English」 で実現できることなど、どだい、無理な話です。たとえば、小説や哲学辞典・数学辞典などに記述されている日本語を、日本語運用力と同じ程度で、英語で考えて記述できますか [ できないでしょう ]。

 さて、以下の日本語を英訳してみて下さい。

  一徹/ 枯れた芸/ 腹芸/ 自主性/ 人脈/ 誠心誠意/ 包容力/ 問題意識

 英訳しにくい日本語ばかりを、わざと、示したのですが (笑)、これらの単語を、われわれは、ふだんの会話 (文脈) のなかで、自然に使っていますが、英訳するとなれば、これらの単語が使われている日本語の文を すべて 英訳しても、なかなか、「意味」 を伝えるのが難しい概念ですね。逆に言えば、英語文化の独自な概念もあって、日本語に翻訳できない語もあります。たとえば、justice という概念は、英語文化と日本語文化では、微妙に ス゛レ ているようです。

 日本で育っている日本人が、日本人であることを捨てて、英語を英語文化の文脈のなかで話すようになることが英語学習ではないでしょう。言い換えれば、日本人が英語を学習するということは、(当然ながら、コミュニケーション のためなのですが、) いっぽうで、ふたつの文化を学習することでしょうね。すなわち、日本文化を確認することにもなりますし、ほかの文化を知ることにもなります。その意味では、外国語を 1つ (以上) 学習することは、益する所が大ですね。

 言語は、そもそも、コミュニケーション の手段ですから、英語を学習するのであれば、英語を使った コミュニケーション が最大の目的ですが、(小学校から英語を習っている日本人の すべて が英語を使って コミュニケーション するような機会はないですから、) 上述したように、みずからの文化・思考法を確認するための手段として英語学習を考えても良いのではないでしょうか。
 ぼく自身のことを言えば、40歳代前半までは、英語を使って仕事することが、ときどき、あったのですが--ちなみに、ぼくの専門技術である テ゛ータヘ゛ース 技術は、すべて、欧米人から教わったので、英語で習得したのですが--、それ以後は、そういう状態は、ほとんど、無くなって、英語で綴られた ウェッフ゛・ヘ゜ーシ゛ や英語文献から情報を入手するために英語を学習しているというのが現状です。そして、ぼくは、いま、日本語の思考法と英語の思考法を対比しながら、それぞれの思考法の特徴を確認しています。そういう学習であっても、英語に接していますので、欧米人と たまに会談することがあったときに、英語は、自然としゃべることができます。たとえば、本 ホームヘ゜ーシ゛ の 「T字形 ER手法の英訳」 は、たまたま、2週間に 1回の頻度で、7回ほど、T字形 ER手法の技術を (日本に単身赴任していた) 米国人に教えたときに綴った 「軽い読み物」 として英作しました。「技術」 そのものを説明するために英作することは、それほど難しいことではないのですが--というのは、技術の立脚点になっている数式を綴って、それらを片言の英語で説明しても、数式さえあれば、数学を知っている欧米人なら理解できますから--、日本語の思考を際立って示している概念を英語で説明するのは非常に難しいでしょう。

 たとえば、「人脈が広い」 という言いかたは、あちこちの つきあいに出ていって社交的 (a social mixer) で 「コネ」 が多数ある (He has pull all over) ことを意味しているので--He を使った理由は、sexual discrimination として使ったのではないのであって、日本では、「宴会」 (a banquet や dinner party とはちがい、「身内」 があつまって、「一家、一族郎党」 であることを 「酒の席」 で確認する会だとぼくは思っているのですが) に出ていって、顔が広い (He has extensive contacts) ようにふるまうのは、ほとんど、男性であることを示しているのであって--、欧米の through the old-boy network に近い networks/ access を多数 もっていることではないでしょうか。そうかといって、欧米の クラフ゛ (club) 的な形態 [ 意図的に閉鎖した 「選ばれた」 つきあい ] とも違うでしょうね。

 「日本を紹介するための英語会話辞典」 では、「宴会」 に関して、的確な補足情報を記述しています。以下に引用します。

    In Japan, having drinks together is a way of establishing closeness and trust. So if you turn down invitations,
    not just to enkai but even for drinks after work, too often, you'll be considered a person who's hard to
    get along with.

 ちなみに、この辞典では、「宴会」 を An enkai is a Japanese-style party と英訳していますが、的確に配慮した訳ですね。

 俗語は、日本語でも、ぼくには、わからない意味が多い。たとえば、「キモ かわいい」 という言いかたは、日本語でも、ぼくには意味がわからない。日本語の俗語を、英語の対応する俗語に翻訳して、欧米人と語る機会などは、まず、ないと思うのですが、"What do you call/say this in English?" と問われたら、"The English for kimo-kawaii is..." ちょっと、困ってしまいますね (苦笑)。ぼくは 「お高くとまっている (so stuck-up)」 訳じゃないのであって、日本語で意味のわからない語は英訳できない。 "I don't know. It's young guys' slang." しか言いようがない。一時的な・流行語の俗語ではなくて、一般化して口語のなかで使われている俗語であれば--たとえば、「ちゃちな」 とか 「フ゜ータロー」 など--、「Beyond Polite Japanese」 辞典を使えば、英訳できます。

 




 

 ▼ 以下に記載する本は通読されたい (「拾い読み」 でもよい)。

 ● 日本人の発想から英語の表現へ、国際交流基金 編、研究社

 ● 日本語と英語 その発想と表現、長谷川 潔、サイマル 出版会

 ● 英訳 日本語らしい表現 660、中村保男 編著、(財)日本英語教育協会

 ● 日本語と英語 (その発想と表現)、長谷川潔 著、サイマル 出版会

 ● 現代日英表現辞典 (英語でどういうか)、三枝幸夫 編、研究社出版

 ● この日本的表現を英語で何という、ヒ゜ーワイ・ス 監修、松下文男 編、中経出版

 ● 英語でなんて言うの? (見つけた! ス゛ハ゛リ この表現)、西田武寛 著、タ゛イヤモント゛ 社

 ● これを英語で言いたかった!、田所メアリー 監修、シ゛ェームス゛・カ゛イカ゛ー 執筆、朝日出版社

 ● もっと これを英語で言いたかった!、田所メアリー 監修、ランス・A・リントナー 執筆、朝日出版社

 ● どうしても これを英語で言いたかった!、田所メアリー 監修、シ゛ェームス゛・カ゛イカ゛ー 執筆、朝日出版社

 ● 言えそうで言えない英語表現、山岸勝榮 著、研究社出版

 ● 広辞苑の新語を英語で何という?、岩村圭南、フ゛レーフ゛ン・スマイリー 共著、朝日出版社

 ● こんなに英語で表現できる (英語使い分け事典)、石橋眞知子、明日香出版社

 ● 2001 JAPANESE AND ENGLISH IDIOMS,
  Nobuo Akiyama and Carol Akiyama, Barron's Educational Series, Inc.

 ● 和英 日本ことわざ成語辞典、山口百々男、研究社


 以下に記載する本は Kodansha International が出版している 「POWER JAPANESE」 シリース゛ のなかに収められている (前述した 「BEYOND POLITE JAPANESE」 も、この シリース゛ のなかに収録されている)。
 
 ● LOVE, HATE AND EVERYTHING IN BETWEEN
  村上真美子 著、Ernest Reiss 翻訳、KODANSHA INTERNATIONAL

 ● KANJI IDIOMS, George Wallace, Kayoko Kimiya, KODANSHA INTERNATIONAL

 ● "BODY" LANGUAGE, Jeffrey G. Garrison, KODANSHA INTERNATIONAL

 ● COMMUNICATING WITH KI: THE "SPIRIT" IN JAPANESE IDIOMS,
  Jeffrey G. Garrison, Kayoko Kiyama, KODANSHA INTERNATIONAL

 ● ANIMAL IDIOMS, Jeffrey G. Garrison, Masahiko Goshi, KODANSHA INTERNATIONAL

 



[ 読みかた ] (2006年 4月 1日)

 以上に記載した書物と同じ書物を購入することを薦めているのではなくて、こういう類の書物が てもとにあれば、英語学習を進めやすいことを言いたいのです。たとえば、一覧表の最初にほうに記載した書物 (「日本人の発想から英語の表現へ」 (国際交流基金 編、研究社) や 「英訳 日本語らしい表現 660」 (中村保男 編著、(財)日本英語教育協会) は、もう 20年くらい前に出版されたので入手できないと思います。

 日本語の 「独特な」 表現法を英訳した書物を読んで--あるいは、逆に、英語の 「独特な」 表現法を和訳して--、日本語の思考法と英語の思考法のちがいを学習するのが英語学習の 1つのやりかただと思います。「ことわざ」 は、民族の知恵を凝縮した言い伝えですが、同じ現象を観ても、民族ごとに 「解釈」 が違ってきます。たとえば、「Rolling stone gathers no moss. 」 は、日本では、「転がる石に苔生さず」 と言い、「たびたび商売を替える人は金持ちになれない」 という意味だそうですが、米国では、逆に、「苔生さず」 を良い意味に解釈して、転職などを是とする人たちが多いようです。そして、興味深いことに、日本でも、最近では、「苔生さず」 を 「苔のような厭な物が生じない」 というふうに解釈する若い人たちが多いそうです。ちなみに、小生は、52歳ですが、「苔生さず」 を 「苔のような厭な物が生じない」 というふうに解釈するほうです。

 あるいは、「月 (the moon)」 を観て、虫の鳴き声を聴いて、「風流だ」 と感じる風習は欧米にはないでしょう。蛙・虫の鳴き声は騒音でしかないし、「lunatic (= mad, extremely foolish)」 という語が示すように、欧米人が 「Luna (= the goddess of the moon)」 に対して抱いている像は悪い。源氏物語の英訳が、欧米で、どのように読まれたのかを、小生は、日本人として、知りたい。月明かりのなか、光源氏が笛を吹きながら、たんぼを歩いている光景は、日本人にとって 「しっとりとした風流」 を感じても、欧米人にとっては、「幻想的な感じ (an air of fantasy)」 なのでしょうね。

 小生は、「禅」 を信奉していますが、仏教で云う 「空の空なるかな、すべて、空なり」 は、英訳しにくいですね。「禅」 の和英辞典は、読書案内 「仏教」 のなかに記載したのですが、民族の思考に影響を及ぼしている宗教の考えかたを英訳するのは、キリスト 教の考えかたと、皆目、相違するので、なかなか、伝達しにくい。社交の ルール では、宗教・政治に関する話題は避けるのが賢明であるとされています。「空の空なるかな、すべて、空なり」 を下手に英訳すれば、「神」 を否認することになりますから。「仏」 と 「神」 のちがいを英訳するとなれば、非常に難しいでしょう。そういう英訳では、文を英訳したあとで、そうとうな量の補足説明を添えなければ誤解を生じるでしょうね。
 したがって、日本語の 「独特な」 言いかたに対応する英文を暗記しても危険であるということです。

 海外出張 (欧米への出張) を数多く体験した人たちのなかには、欧米人の 「砕けた発音」 を真似して、「ケ゛リ (Get it?)」 とか 「ウォナヘ゛ (Wanna bet)」 という言いかたを覚えて、あたかも、英語を上手に話しているような錯覚に陥っている人たちもいますが、そういう真似は、日本人が英語を使うことにはならないでしょう--もっとも、英語を学習していて、そういう錯覚に陥る時期があることを小生は否定はしないけれど、、、(なぜなら、小生も、そういう時期があったから--苦笑)。
 英語学習の目的の 1つに、「国際人になる」 (cosmopolitan とか go internationl ということかしら) という点が云われていますが、欧米人を真似ることが国際人ではないでしょう。われわれが英語を学習するのは、英語が国際的に コミュニケーション の手段として使われているからであって、みずからの identity を喪って、欧米人を真似ることは go international にはならないでしょうね。逆に言えば、みずからが帰属する国の文化・言語表現・思考法に対して、ちゃんとした知識を習得して、その知識を的確に述べるだけの力がなければならないということです。

 




 外国人から日本のことについて質問されて、日本人として、日本のことを、ほとんど知らないために、返事に窮した経験のある人々は多いと思う。自らの国のことを他の国の人々に伝達できないなら、英語を習得して国際人になるということは空言になる。自らの identity があってはじめて go international できる

 外国人が集まる party に参加するなら、日本人として、日本のことを伝達できる話題は、2つや3つほどを事前に仕入れておいたほうがいい。

 なお、文中の★は「お薦め」の意味である。

 

 ▼ 以下に記載する書物は、日本の文化や伝統を扱っている。

 ● JAPAN an Illustrated Encyclopedia, KODANSHA
  [ 英文 ] (★)

 ● 対訳 日本事典, 講談社 インターナショナル
  [ 英和対訳 ] (★)

 ● 日本紹介のための 英語会話辞典、荒磯芳行、Jean Moore 編、旺文社、
  [ 和英対訳 ] (★)

 ● 英語で日本の生活を説明する、石橋和代、ヘ゛レ 出版
  [ 和英対訳 ] (★)

 ● 日本文化を英語で説明する辞典、本名信行、ヘ゛イツ・ホッファ 編、有斐閣
  [ 和英対訳 ]

 ● トレント゛ 英語 日本図解辞典, 小学館
  [ 和英対訳 ]

 ● 日本を知る101章、下中 弘 編、平凡社
  [ 和英対訳 ]

 ● 日本の心:文化伝統と現代、新日本製鐵株式会社広報企画室 編、丸善
  [ 和英対訳 ]

 ● 日本のすべて、木村尚三郎 監修、三菱自動車工業株式会社人事部編、三省堂
  [ 和英対訳 ]

 ● ニッホ゜ン 英語で丸かじり、M・フ゛ライス、N イトウ、NEC クリエイティフ゛
  [ 和英対訳 ]

 ● JAPAN AS IT IS:日本 タテヨコ、GAKKEN
  [ 和英対訳 ]

 ● しきたり、国際日本語研究所 編、アフ゜リコット
  [ 和英対訳 ]

 



[ 読みかた ] (2006年 5月 1日)

 私が日本文化の書物を読め始めた理由は、「『日本語的発想と英語的発想』 の類似点・相違点」 を調べるためではなかった。いまでこそ、その点を調べることは、私の興味になっているが、当初、日本文化の書物を読み始めた理由は、もっと現実的な理由であった。私が、たびたび、米国に出張していた頃、米国人から日本のことを訊かれて、ちゃんと応えることができなかったという現実的な理由であった。つまり、私は、日本人として、日本のことを、ほとんど、知らなかったし、(そして、日本のことを知らないが故に、) 日本の文化を ちゃんと説明することができなかった。日本で生まれて、日本で育って、日本という国家のなかで育った私は、「日本」 という渦中にいるが故に、生活のなかで体験した事態や接してきた事物を 「当然のこと」 として感知していたので、それらを知らない人たちに適切に説明できなかった。いっぽうで、私は、日本が欧米化されてきたなかで、欧米で生まれて日本に移植された概念を知っていた。

 当時 (20数年前)、コンヒ゜ュータ・ソフトウェア を作る技術では、日本は、欧米に比べて、後れていたので--いまでも、後れているのかもしれないけれど--、欧米の アフ゜リケーション・ハ゜ッケーシ゛ を輸入し日本化して日本に導入するという 「日米の technological gap」 を活用した仕事に私は従事していた。日本では、いまだ、知られていない欧米の概念・技術を、たとえ、日本のなかで、私が知っていると誇っても、欧米では、「物真似」 とみなされて相手にされない。喩えてみれば、私が すでに知っていることを、ほかのひとが私に語って--しかも、そのひとの語っていることが私の知っていることに比べて粗末であれば--私は相手の言うことなど耳を傾けないのと同じことである。私は、欧米のことを知っていて、逆に、日本のことを語ることのできない日本人という奇怪な状態に陥っていたことを気づいた。私は、「identity」 という大それたことを言うつもりはないのであって、もっと身近に言って、party に参加しても、相手と会話 (コミュニケーション) が成立しない気まずい状態が起こった。私は、日本文化として、「芸者」 や 「相撲」 などを列挙するつもりはないのであって、「sho^sha (総合商社)」 や 「lifetime employment」 や 「KEIRETSU (系列)」 や 「KAIZEN (改善)」 ということを、米国人が (日本人の会社員たる) 私に訊いてきても、私は、それらを適切に説明できなかった。日本人として日本のことを改めて学習しなければならないことを私は痛感した。

 たしか、その頃に、「日本の ヒ゛シ゛ネス 慣行と米国の ヒ゛シ゛ネス 作法」 の キ゛ャッフ゜ を描いた 「Gungho」 という映画を観た記憶があるが-文化の違いは、映画として、やや誇張して テ゛フォルメ されてはいたが--、いまでも (日本では、欧米化が進んだとはいえ、) ああいう 「行き違い」 は起こりうるのではないか。その映画は、「Gungho」 という標題が示すように、最終場面では、「協力しよう」 という (「文化の壁」 を超えた) ハッヒ゜ーエント゛ になっているのだが、もし、現実に、ああいう事態が起こったら、「文化の壁」 は、多数の協議を熱心に・冷静に重ねなければ、超えることはできないのではないか。

 前掲した書物のなかでは、日本文化の英訳を、もし、「本気で」 学習したいのであれば、以下の 3冊を お薦めします。

  (1) JAPAN an Illustrated Encyclopedia, KODANSHA
  (2) 対訳 日本事典, 講談社 インターナショナル
  (3) 日本紹介のための 英語会話辞典、旺文社

 ただし、「JAPAN an Illustrated Encyclopedia」 は大冊で、文が すべて 英文なので、「本気で」 学習するひとでなければ読めないでしょうね。

 もし、欧米人との party に参加するときに、話題を事前に仕入れる 「軽い」 目的であれば、前掲した書物のなかから 数冊を てもとに置いていれば良いでしょう。たとえば、以下を お薦めします。

  (1) 日本紹介のための 英語会話辞典、旺文社
  (2) 日本文化を英語で説明する辞典、有斐閣
  (3) 英語で日本の生活を説明する、ヘ゛レ 出版
  (4) JAPAN AS IT IS:日本 タテヨコ、GAKKEN

 




 

 ▼ 以下に記載する書物は、日本人の慣習を表現する 「英訳しにくい」 日本語を扱っている。

 ● NTC's Dictionary of Japan's Business Code Words, Boye Lakayette De Mente、NTC
  [ 英文 ] (★)

 ● 日本人語、三菱商事広報室、東洋経済新報社
  [ 和英対訳 ]

 ● 日本人の秘密、長谷川勝行、ひらがな タイムス゛ 別冊
  [ 和英対訳 ]

 ● STRANGE BUT TRUE (A TRUE-LIFE JAPANESE READER), Tom Gally、KODANSHA INTERNATIONAL
  [ 和英対訳 ]

 



[ 読みかた ] (2006年 5月 1日)

 「NTC's Dictionary of Japan's Business Code Words」 は、「超」 お薦めの書物です。この書物は、いまでも、市販されているのかしら。もし、市販されているのであれば、ぜひとも、入手して下さい。われわれ日本人が、生活や仕事のなかで、さして、こだわらないまま使っている ことば のなかで、外国人から観れば、日本人の考えかたを示している ことば を選んで、欧米の考えかたと対比しながら、(ことば が示している) 日本人の考えかたを丁寧に述べています。「平等」 や 「足をひっぱる」 などの説明を読んでいて、外国人 (Boye Lakayette De Mente 氏) から指摘されて、私は、改めて、日本人として、「なるほど」 と思い当たる点も多かった。
 本書は、「(日本人の考えかたを典型的に示している) 英訳し難い日本語」 に対して英訳を与えるという和英辞典ではなくて、いくつかの日本語を選んで-- 100語以内ですが--、それらが示す日本人の考えかたを欧米の思考法と対比しながら分析している 「日本文化論の書物」 であると云っても良いでしょう。したがって、見出し語となる日本語の選択そのものが、著者の力量 (資料を あつめる力、資料を読める力、資料を秩序立てる力、および資料を総合して判断する力) を示します。この点でも、Boye Lakayette De Mente 氏の力量は卓越していると思います。

 




 

 ▼ 以下に記載する書物は、日本の経済 (や政治など) を扱っている。

 ● TIME でみる 日本の素顔、TIME 編集部 著、竹村日出夫 編訳、洋販出版
  [ 和英対訳 ] (★)

 ● 「ニュース゛ウィーク」 で読む日本経済、沢田 博 編訳、講談社 ハ゛イリンカ゛ル・フ゛ックス
  [ 和英対訳 ]

 ● ワシントンホ゜スト が書いた 「日本」--「Japan」 クリッヒ゜ンク゛、東郷茂彦 編訳、講談社 ハ゛イリンカ゛ル・フ゛ックス
  [ 和英対訳 ]

 ● JETRO Nippon 2001, JETRO
  [ 和英対訳 ]

 ● JAPAN ALMANAC 2002、朝日新聞社
  [ 和英対訳 ]

 ● JAPAN Economic Almanac 2001、The Nikkei Weekly、日本経済新聞社
  [ 英文 ]

 ● 全図解 日本のしくみ [ 政治・経済・司法 編 ]
  安部直文 著、テット゛・高橋 [ イラスト ]、講談社 ハ゛イリンカ゛ル・フ゛ックス
  [ 和英対訳 ] (★)

 ● 全図解 日本のしくみ [ 生活文化・社会・医療・娯楽・スホ゜ーツ 編 ]
  安部直文 著、テット゛・高橋 [ イラスト ]、講談社 ハ゛イリンカ゛ル・フ゛ックス
  [ 和英対訳 ] (★)

 ● 数字で読む日本人、溝江昌吾 著、シ゛ャイルス゛ーマリー 訳、講談社 ハ゛イリンカ゛ル・フ゛ックス
  [ 和英対訳 ] (★)
  [ 本 ホームヘ゜ーシ゛ 107ヘ゜ーシ゛の 「日本史 資料 (通史)」 のなかで紹介した 「数字で読む日本人 2002」 の
   一つ前の版 (2000年版) の翻訳本 (和英対訳) ]

 ● JAPAN Geographical Perspectives on an Island Nation、帝国書院
  [ 英文 ]

 



[ 読みかた ] (2006年 5月 1日)

 [ Japan Almanac ]

 前掲した書物のなかで almanac は 2001年/2002年の 「年度」 が記されていますが、本 エッセー を認めた年月日が 2001年11月15日だったので、当時の白書なのであって、当然ながら、つねに、最新年度の almanac を入手するようにして下さい。なお、almanac は、以下の ウェッフ゛・ヘ゜ーシ゛ で閲覧できます。(サーチ・エンシ゛ン では、「almanac」 を キーワート゛ にして下さい。)

  (1) JETRO
  (2) Nekkei Net (2001年度)
  (3) Infoplease

 こういう類 (almanac) の英文は、「英借文」 の手本ではなくて、日本の経済について英語で語るときに、てもとにあれば役立つ資料でしょうね。資料は、つねに、最新の テ゛ータ であればあるほど現実の正確な状態を伝えますので、the Internet が使える環境であれば、ウェッフ゛ 上で、最新の テ゛ータ を入手するようにしていれば良いでしょう。

 
 [ TIME でみる 日本の素顔/ 「ニュース゛ウィーク」 で読む日本経済/ ワシントンホ゜スト が書いた 「日本」 ]

 日本のことを英語で伝えるいっぽうで、欧米人が日本を どのように観ているかを知っておいたほうが良いでしょう。そうすれば、みずからの伝えようとしている日本像と日本を外 (そと) から観ている人たちの抱いている日本像が、どの程度に ス゛レ ているのか を認識できるので、日本のことを正確に伝えるには どうすれば良いかを考える てだて になるでしょう。TIME 誌・NewsWeek 誌・WashingtonPost 紙 は、一級の雑誌・新聞なので、日本に関して、それ相応の テ゛ータ を調べて記事を掲載していますから、噂話のような憶測の報道ではないので、一読の価値はあるでしょう。そして、いっぽうで、それらの第一級の報道機関と比べて、外国の一般大衆 (ordinary people) は、日本のことを ほとんど 知らない。だから、海外に出張する日本人は、みずからの国を正確に伝えなければならないでしょうね。

 私は、かつて、通訳者の アシスタント として、日本人たちの海外 ツアー (訪米) に同行したことがあるのですが、ツアー に参加していた或る日本人が米国人と会話していたときに、「We Japanese are unique...」 という言いかたをしていたのを聴いて、苦笑いしたと同時に、冷や汗が流れました。およそ、国家であれば、unique でない国家はない。日本のみが unique である訳はない。かれの英語を聴いていて、日本経済を担っていると自負している企業人の 「日本を考え思い伝える力」 が、この程度なのかと愕然としたのを いまでも記憶しています。
 かれが言い放った暴言は、英語が拙いという英語学習の弱点からきたのではないと思う。もし、かれが日本語で語っても、たぶん、かれは、日本のことをちゃんと語ることができなかったでしょうね。ああいう粗末な言いかたは、英語学習の拙さとは違う根本的な思考力の欠如からきていると私は思っています。日本で生まれ日本で育って日本で生活しているが故に--渦中にいるが故に--、日本のことを落ち着いて考えなかったとしたら、ほかの国の人たちと対談したときに、みずからを誇示して高飛車になるか、あるいは、逆に、萎縮・卑下してしまうかのいずれか極度の反応を示すようです (苦笑)。英語学習は、海外の企業と経済取引をするための実用性のほかに、みずからの国家のことを落ち着いて考えるためにも、役立つはずなのですが、、、。

 
 [ 図解 日本のしくみ/ 数字で読む日本人 ]

 「JAPAN Geographical Perspectives on an Island Nation」 (帝国書院) は、中学校・高等学校で使っている 「地理の教科書」 風な書物です。こういう書物を、まず、読んで、日本国土の全貌を把握するのは、中学校・高等学校で学習した地理の知識と相まって、効果的・効率的だと思うのですが、全文が英文なので--ヘ゜ーシ゛数が少ないと言っても--日英の通訳者になるという目的があるか、あるいは、「外国人になったつもりで、日本のことを英語で学習する」 という強烈な熱意でもなければ、なかなか、読まないでしょうね。ちなみに、私は、3 分の 1 ほどしか読んでいない (読んでいる途中で、退屈になって、離れました)。

 「全図解 日本のしくみ」 (講談社) [ 「政治・経済・司法 編」 と 「生活文化・社会・医療・娯楽・スホ゜ーツ 編」 ] は、お薦めの書物です。日本語版 (日本実業出版社) が さきに出版されて、それから英訳本 (講談社) が出版されました。日本語版のみを読んでも、日本の様々な制度・慣習・事物・事象に関して、おおまかな・まとまった知識を得られる簡便な書物です。1つの テーマ に関して、記述量は、1ヘ゜ーシ゛ あるいは 2ヘ゜ーシ゛ で、かつ、図解が挿入されているので、詳細な説明を期待したら、期待はずれになるかもしれないのですが、ふだんの会話のなかで語る情報としたら、事足りるでしょう。テーマ としては、たとえば、米の流通のしくみ、国勢調査のしくみ、宅配 サーヒ゛ス のしくみ、超高層 ヒ゛ル 工事のしくみ、テレヒ゛ 局のしくみ、CATV のしくみ、視聴率のしくみ、国会のしくみ、証人喚問のしくみ、中央官庁のしくみ、自衛隊のしくみ、証券取引所のしくみ、裁判のしくみ、検察庁のしくみ、警察庁のしくみ、警視庁のしくみ、著作権保護のしくみ、フ゜ロ・ホ゛クシンク゛ 界のしくみ、相撲界のしくみ、死刑執行のしくみ、CD-ROM のしくみ、ハ゛ーコート゛ のしくみ、介護保険のしくみ、PKO のしくみ、衆議院選のしくみ、インサイタ゛ー 取引規制のしくみ、など。こういう テーマ を英会話のなかで語ったり英作文のなかで綴ることができたら、情報の 「give and get」 が円滑になるでしょう。たとえば、日本の裁判制度は しかじかだが、米国では どういう制度なのか ということを米国人に訊けば--実は、書物を調べれば、米国の裁判制度を事前に知ることができるのですが (笑)--、もし、会話であれば、相手がしゃべっているあいだ、英語を聞き取る (listening) 練習になるでしょう。ちなみに、そういう知識がないままに、米国人が 「陪審員制度」 について語ることを--しかも、ふつうに しゃべる速度で--聴きながら理解しようとしても、日本で英会話程度の学習しかしていない日本人は聞き取ることはできないでしょう。英語を学習する前に、まず、事物・事象に関する知識がなければならない。とすれば、英会話の文型練習ばかりに労力を費やすのは無駄であって、「英語で知識を得る」 ということを目的にして英語を学習したほうが良いでしょうね。

 「数字で読む日本人」 は、余興で読んで下さい。

 




 

 ▼ 以下に記載する書物は、日本の歴史を扱っている。

 ● ハ゛イリンカ゛ル 日本史年表、英文日本大事典 編、講談社 ハ゛イリンカ゛ル・フ゛ックス
  [ 和英対訳 ] (★)

 ● 英語で読む日本史、英文日本大事典 編、講談社 ハ゛イリンカ゛ル・フ゛ックス
  [ 和英対訳 ] (★)

 ● 英語で話す 「仏教」、高田佳人 著、シ゛ェームス・M・ハ゛ータ゛マン 訳、講談社 ハ゛イリンカ゛ル・フ゛ックス
  [ 和英対訳 ]

 



[ 読みかた ] (2006年 5月 1日)

 「日本史を英語で学習する」 ということは、英語の専門家か、あるいは、よほどの 英語 マニア しかいないでしょうね。私も、日本史を英語で通読した訳じゃない。前掲の 3冊は、参考書として所蔵しているにすぎない。たまに、拾い読みする程度である。

 「対訳 英語で読む日本史」 (講談社) は、本 ヘ゜ーシ゛ の最初に記載した英語版百科事典 「Japan: An Illustrated Encyclopedia」 のなかから、日本史関係の記述を抜粋して 1つにまとめた書物です。表紙には、11 Experts Reflect on the Past と記されていて、11名の研究家 (そのなかで 2人は日本人ですが、ほかの人たちは日本人ではない) が執筆しています。新書本を 一回り大きくした寸法で、全体で 220ヘ゜ーシ゛ の量ですが、後半に (167ヘ゜ーシ゛ 以後に) 添付されている日本史年表・日英語索引を除いたら 160数ヘ゜ーシ゛ のなかで、古代 (縄文時代) から平成時代までを通観して、見開きの対訳本なので、英文のみでは、80数ヘ゜ーシ゛ で日本史を コンハ゜クト に通観した書物です。

 日本史そのもの-の知識は、本 ホームヘ゜ーシ゛ の読書案内 「日本史」 で記載した書物を読んだほうが、詳細な知識を得られるし、仏教そのもの-の知識も、読書案内 「宗教」 のなかに記載した書物を読んだほうが専門的な知識を得ることができますが、この対訳日本史は、「11人の超一流 シ゛ャハ゜ノロシ゛スト たちが英語で書き下ろした日本全史。外国人の目から見た日本史は どういうものか」 (本書の book-jacket に綴られている宣伝文の一部を そのまま引用) を知りたかったので、私は--すでに、或る程度の日本史知識を習得していますが--拾い読みしている次第です。「超一流 シ゛ャハ゜ノロシ゛スト たち」 が綴っているので、まとめかたが巧みです (英語という言語の性質もあるのかしら)。たとえば、江戸時代を、John W. Hall 氏 (エール 大学教授) が執筆なさっていらっしゃるのですが、「黒船」 に関して、以下のような巧みなまとめになっています。

  It was Abe, however, who had to face crisis created by the arrival of U.S. Commodore Matthew Perry in 1853. Abe did two things that signaled the end of Tokugawa power. By soliciting all daimyo^, including tozama, for opinion on how to handle the American request for opening of Japanese ports, he abandoned the shogunal prerogative of determining foregin policy unilaterally. By encouraging daimyo^ to build up their own coastal defenses, he weakened the sho^gun's power to control their military strength. With the end of Japan's isolation and the advance of millitary technology, the shogunate lost its ability to assert national authority, ultimately bringing the Tokugawa regime to an end.

 つまり、阿部正弘が下した 2つの決断が徳川政権の終わりを告げたということです。その 2つの決断とは、

   (1) 外交は、従来、幕府の一存だったのだが、その特権を放棄して、大名の意見を諮問した。
   (2) 大名の軍事力を幕府は、従来、制限してきたが、その制限を捨て、大名たちに海岸警護体制を奨励した。

 そのために、鎖国が終わり、大名たちの軍事技術が進歩して、幕府は全国支配の能力を喪ったとのことです。
 執筆者が外国人であれば、政治・外交が得意であっても、文化が疎かになっているのではないか という日本人がいるかもしれないけれど--執筆者が外国人なので、日本独特の文化を理解できないという偏見を抱いている人たちがいるかもしれないけれど--、以下を読めば、Hall 氏の 「日本文化に対する確実な分析」 に接して驚嘆するでしょう--ほとんどの日本人に比べて、かれは、日本のことを確実に知っています (もっとも、日本の政治・文化に関する専門家だから、当然と言えば当然なのですが、外国人には日本文化が理解できないという軽薄な・stereotyped な思い込みを抱いている日本人が多いことに対して、私は うんざりしています)。

  After 1800, many Japanese were attracted to an emerging school of National Learning (Kokugaku). This interest in Japanese tradition took on both nationalistic and religious dimensions, especially in the work of Hirata Atsutane, who called for a return to Shinto^ tradition. Revival of the ideological features of Shinto^ provided many Japanese with a sense of cultural security amidst the emerging sense of crisis. It laid the basis for the powerful conservative reaction to the foreign threat under the slogan Revere the Emperor, Expel the Barbarians (sonno^ jo^i).

 日本人の日本史専門家と、外国人の日本史専門家が、同じ資料を分析して、それぞれの意見を述べる際、私は、それぞれの 「視点」 に対して興味を覚えます。「対訳 英語で読む日本史」 を拾い読みして感じた的確な・コンハ゜クト な まとめかたを、私は、家永三郎氏著 「新日本史」 (昭和 22年初版、冨山房) を読んだときにも感じました。

 




  << もどる HOME すすむ >>
  読書案内