2002年 5月31日 作成 キャッシュフロー 会計 >> 目次 (テーマごと)
2006年 9月16日 補遺  

 

 1. キャッシュ の概念

 キャッシュ とは以下の 2つをいう。

 (1) 現金と要求払預金 (当座預金、普通預金、通知預金など)
 (2) 現金同等物
    (2)-1 期間 3ヶ月以内の定期預金
    (2)-2 譲渡性預金 (CD)
    (2)-3 コマーシャル・ペーパー (CP)
    (2)-3 取得日から 3ヶ月以内に満期日・償還日が到来する公社債

 
 2. キャッシュフロー会計の目的

 経営成果を判断するには、収益性ばかりではなく、流動性も考慮しなければならない。
 貸借対照表および損益計算書は、「資源の運営」 を報告することを目的としており、「資金の運用」 を報告するための ドキュメント ではない。
 キャッシュフロー 会計の目的は、キャッシュフロー 計算書を使って、会計が認識している損益を--損益計算書は、収益に対しては実現主義を適用し、費用に対しては発生主義を適用しているが--キャッシュフロー の観点から調整して、現金主義を適用した損益計算書を作成する点にある。損益計算書上では 「黒字」 であっても、キャッシュ が ショート したために倒産する 「黒字倒産」 は起こり得る。そのために、小生は、経営者として、損益計算書の数値よりも、月々の 「資金繰り表」 を注視している。

 [ 参考 ]
 キャッシュフロー 計算書が制度化される以前にも、「資金繰り表」 が作成されていた。
 ただ、「資金繰り表」 は、内部目的や (銀行などから) 借入する際に提示する資料として作成されることが多かったので、様式が マチマチ になっていて、制度化されていなかった。
 なお、キャッシュフロー 計算書の作りかたには、直説法と間接法がある
 直説法は、キャッシュ の出入りを個々に調べて作成するやりかたであり、間接法は、損益計算書を スタート にして、キャッシュ の出入りに関与する項目を調整する--たとえば、減価償却費は キャッシュ には関与しないので、(損益計算書では控除項目になっているから) 逆に足し算して相殺して--作成する方法である。
 間接法のほうが作成しやすいので、多くの企業では、間接法を使っている。

 
 3. キャッシュフロー 計算書

 1999年 4月以降の連結決算では、キャッシュフロー 計算書が財務諸表の 1つになった。
 キャッシュフロー 計算書の構造は、以下の活動に対応して 3つに区分されていて、それぞれの活動ごとにキャッシュ の増減を示すことになっている。
  (1) 営業活動 (operating activities) [ 損益計算書および流動項目 ]
  (2) 投資活動 (investing activities) [ 固定資産 ]
  (3) 財務活動 (financing activities) [ 長期債務および資本項目 ]

 営業活動による キャッシュフロー には以下のような項目がある。
  (1) 売上高・売上原価・販売費に関する取引から生ずる キャッシュフロー
  (2) 営業債権・債務に関する取引から生ずる キャッシュフロー
  (3) 利息・配当に関する取引から生ずる キャッシュフロー
  (4) 法人税などに関する取引から生ずる キャッシュフロー

 営業活動による キャッシュフロー は、企業の本業である事業活動のなかで獲得された キャッシュ を示している。したがって、数値が + (プラス) であれば、業績はよい。数値が − (マイナス) であれば、損益計算書が赤字なら、業績が悪いことを示しているし、損益計算書が黒字なら、棚卸資産が多いか債権の回収が少ないことを示している。

 投資活動による キャッシュフロー には以下のような項目がある。
  (1) 有形・無形固定資産の取得と売却
  (2) 資金の貸付と貸付金の回収
  (3) 有価証券の取得と売却
  (4) 受取利息・受取配当金

 投資活動による キャッシュフロー は、数値が + (プラス) なら、なぜ、資産を売却したのか、という点を考えなければならない。不用な資産の売却ならよいが、増資もできないし借入もできないので、過去の投資を手放して キャッシュ を獲得しているのなら論点になる。そして、数値が − (マイナス) なら、事業を拡大するための先行投資なのかどうか、という点を調べなければならない。

 財務活動による キャッシュフロー には以下のような項目がある。
  (1) 株式の発行による収入
  (2) 借入金による調達
  (3) 社債の償還
  (4) 配当金の支払い

 財務活動による キャッシュフロー は、数値が + (プラス) なら、長期借入金の是非が論点になる。有利子負債は少ないほうがよい。数値が − (マイナス) なら、たとえば、営業活動による キャッシュフロー が多いのであれば、長期借入金を返済しているか、あるいは配当金が多いかを検証すればよい。

 
 4. フリー・キャッシュフロー

 営業活動による キャッシュフロー から投資 (および研究開発費) を控除した キャッシュフロー のことを 「フリー・キャッシュフロー (Free Cash Flow)」 という。
 フリー・キャッシュフロー が多ければ多いほど、企業の 「価値」 がある、ということになる。

 ただし、先行投資や研究開発費を抑制すれば、フリー・キャッシュフロー が多くなるが、フリー・キャッシュフロー を増大するために投資や研究開発費を抑制すれば、長期的に観て、競争力が低下してしまう。
 キャッシュフロー は株価と相関関係が高いといわれているし、株価は投資判断のための大きな材料ではあるが、キャッシュフロー を増大することばかりが経営の目的ではない。言い換えれば、キャッシュフロー 計算書だけが財務諸表ではない。1つの指標を使って経営できるほど事業の経営は単純ではない。

 次回は、キャッシュフロー 計算書をどのように分析すればよいか、という分析比率について説明する。□

 



[ 補遺 ] (2006年 9月16日)

 「キャッシュ」 の意味は、現代では、現金 (当座預金や普通預金も対象となるが) と現金同等物 (短期の定期預金など) とされているが、歴史的に観れば、以前では、「正味運転資本」 のことであった。とすれば、「正味運転資本」 を 「堅実に (保守主義の原則に則って)」 計算するには、流動資産となる キャッシュ の流入を低めに評価して、流動負債となる キャッシュ の流出を多めに評価することは当然である。すなわち、結果として、流動資産に対して低価主義を適用していることになる。低価基準は、キャッシュフロー の観点のなかで使われてきた 「慣習」 なのである。とすれば、キャッシュフロー を重視する IAS が (資産会計で述べたが、) 低価基準を 「強制適用」 することは理解できる。
 そして、この考えかたは、損益計算書を (「資金繰り表」 のように、) 現金主義の観点に立って作成するのみではなくて、資産の性質 (定義) の 「収益獲得力 (割引現在価値)」 という キャッシュフロー 的見かたと一致するのである。




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