2002年 7月15日 作成 デリバティブ 取引 >> 目次 (テーマごと)
2006年11月 1日 補遺  

 

1. デリバティブ 取引の目的

 デリバティブ (derivatives) は 「金融派生商品」 と訳され、債券・株式など本来の金融商品から派生した商品で、デリバティブ 取引は以下の 4つに類別される。

  (1) 先渡取引
  (2) 先物取引
  (3) スワップ 取引
  (4) オプション 取引

 デリバティブ 取引の特徴は、将来の価格を予測して売買や交換を約束 (信用取引) するという点にある。したがって、少ない資金を使って大きな投資効果を得ることができる。将来を予測することが前提になっているので、リスク を ヘッジ できるが、リターン が大きいほど リスク も大きくなる。

 デリバティブ 取引には、取引所取引相対取引の 2つがある。先物取引は取引所取引である。先渡取引と スワップ 取引は相対取引である。オプション 取引には、取引所取引と相対取引の両方がある。

 
2. デリバティブ 取引の評価

 デリバティブ 取引は、財務会計では、以下のように評価される。

  (1) 正味の債権・債務は、時価をもって貸借対照表上に記載する
  (2) 時価の変動によって生じた評価差額は、当期の損益として計上する
  (3) 委託手数料などの付随費用は、(時価に加味しないで)その期の費用とする

 上場 デリバティブ は市場価格が成立するので、「取引所の最終価格」 を時価とする。
 非上場 デリバティブ は 「最善の見積額」 を用いる。
 デリバティブ 取引の対象となる金融商品に関して市場価格がないなら--あるいは、公正な評価額が計算できないなら--、取得価額を貸借対照表価額とする。

 以下に、先物取引の簡単な仕訳例を示しておくが、デリバティブ 取引は極めて複雑な構造になっているので、それぞれの取引の仕訳については、専門書を参照されたい。



 [ 2002年 2月 1日 ]

 2002年 6月限月の国債 (@100円/口、1,000口) を先物買建てとして、委託証拠金 \100,000 と委託手数料 \10,000 を証券会社に現金で支払った。


  (借) 先物取引差入保証金        100,000
      委託手数料               10,000

  (貸) 現 金                 110,000

 [ 2002年 3月31日 ]

 決算日に、この先物取引の時価が@110円であった。

  (借) 先物取引差金             10,000   (貸) 先物利益                10,000

 翌日(2002年 4月 1日)、「洗い替え」。

  (借) 先物利益                 10,000   (貸) 先物取引差金             10,000

 [ 2002年 6月30日 ]

 この先物の時価が@120円の時点で反対売買して決済し、証拠金といっしょに現金で入金した。


  (借) 現 金                 120,000

  (貸) 先物利益                20,000
      先物取引差入保証金        100,000


 デリバティブ 取引が ヘッジ 取引として使われたら、ヘッジ の効果を測定して計上しなければならない。
 次回は、ヘッジ 会計について説明する。


[ 補遺 ] (2006年11月 1日)

 デリバティブ は、本来、「株式や為替などの取引で生じる損失を回避するために」 開発された金融商品である。「先物取引」 は、将来の相場の変動を予測して売買・交換を約束 (信用取引) する取引である。「スワップ 取引」 には、変動金利と固定金利を交換する 「金利 スワップ 取引」 と、異なる通貨建ての債務を交換する 「通貨 スワップ 取引」 がある。デリバティブ の特徴は、取引に際して元本に相当する金額の現金受渡しが行われないことである。たとえば、スワップ 取引では、金利を交換するので、元本に比べて、わずかな現金で取引を行うことができる。スワップ 取引では、金利を計算するために元本を決めなければならない。これが 「想定元本」 である。そして、「想定元本」 を ベース として取引額が表される。したがって、取引に際して元本相当の資金の受渡しが行われないので、かつて、デリバティブ取引は貸借対照表に計上されず,オフバランス 取引であった。

 デリバティブ 取引は、原型が 1970年代に始まり、いまの形態になったのは、1972年に円や マルク の通貨先物が シカゴ 商業取引所 (CME) に上場されたのが始まりである。日本には 1980年代半ばに導入された。
 デリバティブ 取引には、金融機関が加盟する 「国際 スワップ・デリバティブス 協会 (ISDA)」 の標準契約が採用されている。

 デリバティブ 取引は、将来を予測することが前提になっているので、リスク を ヘッジ できるが、リターン が大きいほど リスク も大きくなる。かつて、「英国女王の銀行」 や日本の或る銀行の米国支店が デリバティブ 取引で破綻した事件は記憶に新しい。金融機関が破綻したら、取引金融機関はただちに債務不履行 (デフォルト) を宣言し、取引を一方的に打ち切ることができる。金融機関が破綻すれば、取付けが起きるかもしれないが、デリバティブ 取引ごとの利益や損失を相殺して決済すれば、金融機関が破綻しても、金融 システム に与える リスク は限定的になるとも言われている。 




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