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2007年11月 1日 補遺  

 
1. 利益計画が作成されたら、次ぎに、資金計画を作成する。

  資金は、事業過程のなかで循環しているので、以下のように分類される。

 (1) 現金預金 (cash at hand)
 (2) 設備資金 (固定資産に投下された資金)
 (3) 運転資金 (原材料、仕掛品、製品、売掛金、受取手形などに投下された資金)
 (4) 総資金 [ (1) + (2) + (3) ]

 
2. 正味運転資金は、以下の 2つの式のいずれかを使って計算される。

 (1) 流動資産 − 流動負債
 (2) (固定負債 + 自己資本) − 固定資産

 (1) では、流動資産が増加して、流動負債が減少すれば、正味運転資金は増加する。
 逆に、流動資産が減少して、流動負債が増加すれば、正味運転資金は減少する。

 (2) では、固定負債が増加し、自己資本が増加し、固定資産が減少すれば、正味運転資金は減少する。
 逆に、固定負債が減少して、自己資本が減少して、固定資産が増加すれば、正味運転資金は減少する。

  以上の式を使って資金の源泉と使途をまとめた表が 「資金運用表」 である。

  ▼ [ 資金運用表 ]

  A. 資金の源泉
   a. 固定負債の増加
   b. 自己資本の増加
   c. 固定資産の減少
  B. 資金の使途
   a. 固定負債の減少
   b. 自己資本の減少
   c. 固定資産の増加
   ____________
    正味運転資金の増減

  C. 正味運転資金の増減原因
   a. 流動資産の増加
   b. 流動負債の減少
   c. 流動資産の減少
   d. 流動負債の増加

 
3. 資金の収支を対象とした経営計画が資金計画である。

  資金計画は、資金の種類に対応して、以下の 3つに類別される。

 (1) 現金資金計画 (月次の予定資金運用表)
 (2) 運転資金計画 (年次の予定資金運用表)
 (3) 設備投資計画 (耐用年数に対応した経済性計算表)

 
4. 経営計画が作成されたら、予算が編成される。

 予算は、以下の 2つに類別される。

 (1) 経常予算 (損益予算と資金予算)
 (2) 資本予算 (設備投資予算)

 予算編成の手順 (予算案の立案、調整、審議、内示、承認、通達) は、込み入っているので割愛する。



[ 補遺 ] (2007年11月 1日)

 資金計画は、長期・短期の資金について、調達・運用 (flow と stock [ 受払と在高 ]) を計画設定する活動です。資金計画と (その計画の) 統制活動を総称して 「資金管理」 と云います。資金計画では、資金 コスト を予測して、財務流動性・財務安定性などを考慮しながら、資金源泉 (調達法 [ たとえば、増資・社債発行・銀行借入など ]) と運用形態との合理的な組み合わせを選択します。単純に言い切れば、「資産」 が 「収益獲得力」 で、「資金」 は 「購買力」 です。

 「予算管理」 も、予算計画と予算統制に区別され、管理会計の代表的な領域です。
 本 ホームページ では、財務会計を主体にして、会計を述べています。財務会計は、過去の 「取引 (の事実)」 を、いわゆる 「制度会計」 として法令に従って (事後的に) 記録・報告する会計ですが、管理会計は、寧ろ、将来の事象を (事前的に) 計量する会計です。管理会計では、機会原価 (opportunity cost) 分析・原価差異分析・損益分岐点分析・資本予算・予算管理・直接原価計算・標準原価計算などの会計的な計数管理法を使います。前回まで、損益分岐点分析を限界利益の観点から例題を使って説明してきましたが、企業活動・事業活動に対する 「管理 (計画と統制)」 を学習するのであれば、一度は、計数管理の書物を丁寧に読んで下さい--私は、昔、「実用 経済計算」(日比宗平、日本生産性本部) を丁寧に読みました。私は、大学院で財務会計を専攻したので、財務会計に関して、できるかぎり、最新情報を入手しようとしていますが、管理会計に関して、専門的に教育されていないので、(基本知識を学習していますが、) 専門的知識を習得していない。ただ、もし、管理会計を担当することになったとしても、(基礎知識を学習しているので、) 管理会計上の計数管理法を実地に使えるようになるまで、それほどの日数を費やさないでしょう。

 コンピュータ 業界では、一時、「MIS (Management Information System)」 (1970年代) とか 「SIS (Strategic Information System)」 (1980年代) が流行 (はや) りました。それらの流行のなかで、意思決定支援 システム という キーワード も飛び交いました。MIS や SIS に対する私の意見を ここで述べることは控えますが--私は、システム・エンジニアとして、それらに対して否定的な態度をとっていますが--、それらの流行が、ひとつだけ貢献した点は、それまで 「人月削減」 のための合理化機械と思われていた コンピュータ が、経営管理に関与する役割を得たという点でしょうね。ただ、当時、私が唖然とした点は、そういう システム を扱っている エンジニア たちが、管理会計の計数管理法を ほとんど知らなかったという事実を眼にしたことです。

 管理会計は、その性質上、「制度的」 ルール から自由であって、それぞれの企業の事業目的に対する手段としての有効性が問われる会計的な計数管理法です。管理会計は、管理の実践ごとに目的が違っています。たとえば、予算管理であれば、資金配分が主たる目的になるでしょうし、標準原価計算では、ロス (loss) の原因分析が主たる目的になるでしょう。そういう目的を実現するために、様々な計数管理法が使われています。したがって、管理会計の基本的な役割は、管理者たちが、企業全体の利益目標 (限界利益の目標・売上高の目標・原価の目標) に沿って、会計的な計数管理法を通じて、経営管理活動を計画・進捗・統制するという点にあります。そういう役割を コンピュータ のなかに搭載するのであれば、システム・エンジニア は、当然ながら、会計的な計数管理法の基本知識を習得していなければならないでしょうね。




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