2004年 5月16日 作成 シナジー 効果 >> 目次 (テーマごと)
2008年 8月16日 補遺  

 

 
1. 経営戦略は、以下の 2点を実現できなければならない。

 (1) 競争上の優位性
 (2) シナジー 効果 (synergy effect)

 
2. アーカー (Arker, D.) は、競争上の優位性を得る要因として、以下の 6つを論述している。

 (1) イノベーション (R&D、特許など)
 (2) 経営陣 (マネジメント の層と質、忠誠度など)
 (3) 製造 (コスト 構造、製品 ライン の幅、原材料調達力など)
 (4) マーケティング (ブランド、顧客 ニーズ の知識など)
 (5) 財務 (資本調達、流動資産など)
 (6) 顧客 (対象 セグメント の規模と成長性、忠誠度など)

 
3. シナジー 効果は、以下の 4つの形態を狙うことが多い。

 (1) 販売 シナジー (流通 チャネル、販売組織、倉庫などの共通利用)
 (2) 生産 シナジー (生産設備、原材料、技術、ノウハウ などの共通利用)
 (3) 投資 シナジー (R&D、ブランド などの共通利用)
 (4) 経営 シナジー (経営者の経営能力、意思決定の共通利用)

 
4. シナジー 効果が有効に作用する形態は、多角化戦略である、といわれている。
  企業合併は、シナジー 効果を期待して実施されることが多い。





[ 補遺 ] (2008年 8月16日)

 近年、企業は、「多角化」 と 「グローバル 化」 を進めてきていますし、企業合併 (特に、M&A) が多くなっています。日本に限って言えば、「会社法」 ができて、「株式を使った簡易組織再編成」 ができるようになったことが M&A を進めやすくしたようです。日本企業のあいだで M&A が おこなわれる時代になりました──製紙業界の M&A が話題になりましたが、日本企業同士の M&A は成立しなかったし、ふたつの企業のあいだに蟠 (わだかま) りを残したようですね。

 「グローバル 化」 は、前回、説明したので、今回は、「多角化」 の中核概念となっている シナジー 効果を まとめています。本 エッセー の最後で述べているように、シナジー 効果が有効に作用する形態は、多角化戦略である、といわれていますし、企業合併は、シナジー 効果を期待して実施されることが多い。

 シナジー 効果を狙って企業は合併 (あるいは、M&A) を進めて巨大化するいっぽうで、独自の イノベーション をもつ中小・零細企業も マーケット で確実な ポジション を占めています。
 「会社法」 では、会社は、以下の 4つの形態に分類できます。

 ┌────────┬────────────┬──────────────┐
 │    規模基準│    大会社     │     中小会社     │
 │閉鎖基準    │            │              │
 ├────────┼────────────┼──────────────┤
 │ 非譲渡制限  │機関設計の自由を認めない│取締役会・監査役の設置強制 │
 │(公開会社)  │            │              │
 ├────────┼────────────┼──────────────┤
 │ 譲渡制限   │会計監査人の設置強制  │機関設計を定款自治で    │
 │(非公開会社) │            │              │
 └────────┴────────────┴──────────────┘

 
 私が着目しているのは、「非公開会社の中小会社」 が──日本では、二百万社を超える中小企業が存在して、そのほとんどが非公開会社だそうですが──今後 どういうふうな編成になるのか という点です。いわゆる 「下請け」 と云われている中小企業群の比率が、今後も、変わらないのか、それとも、その比率が低下するのか という点を着目しています。べつの言いかたをすれば、「系列」 という編成が、今後、どうなってゆくのか を着目しています。販売 シナジー・生産 シナジー を目的にした場合、もし、中小企業が (いままで、「下請け (あるいは、系列)」 として貢献していたとしても、) 週単位の製造計画を立てられないのであれば、そして、さしたる イノベーション もないのであれば、たぶん、大企業は中小企業を立て直すために経営陣を送り込むと想像されるのですが──そうすれば、「連結」 の対象になるので──、はたして、今後も、「下請け (あるいは、系列)」 という形態を続けるのかどうか を注目したい。

 興味深いことに、いま、海外で収益を得ている日本の自動車会社は──売上高の 70%くらいを海外で稼得しているそうですが──、製造 コスト の 70%から 80%は、資材業者が占めています。「系列」 が効果を出している例でしょうね。

 近年の合併で私が注目していた例は、SoftBank 社が Vodafone を買収した例です。Vodafone が日本の会社であれば、株式を使った再編成をできたのですが、当時、海外の企業に対しては対象外とされていました──海外の企業を対象にした いわゆる 「三角合併」 は、一年後とされていました。ただ、当時、その年の秋が (第 3世代の) 携帯電話の勝負時になるだろうと云われていて、孫 氏が Vodafone に対して、どのような対応をするのかを注目していたのですが、孫 氏は 1兆円を調達して勝負しました。当時、経済新聞でも、SoftBank 社の財務状態から判断しても危険な勝負だったことを報道していましたが、その後の SoftBank 社の快進撃は ご存じのとおりです。見事な経営判断でしたね。そして、SoftBank 社は、一年以上にわたって、トップ の セールス 高を続けて──「犬」 を使った テレビ CM が貢献したと思うのですが──、i-PHONE の独占代理店となりました。いっぽうで、かつて独占に近い状態であった Docomo 社の シェアー は、50%を割りました。通信業界の競争は、今後も熾烈な戦いとなるでしょうが、SoftBank 社が、現時点で、ここまで見事な戦いかたをするとは、ほとんどの専門家たちは推測できなかったのではないでしょうか。海外で シナジー 効果を見事に実現した例は、アップル 社でしょう。Mac は Windows に比べて、いちぶの ファン を除いて普及しなかったのですが、i-POD を投入して、さらに、i-PHONE に至って、見事な シナジー 効果を実現しましたね。いっぽうで、マイクロソフト 社は、ヤフー 社を買収しようとして同意に至らず、ネット では グーグル 社に水を開けられた形になりましたね。マイクロソフト 社が、今後、どのような戦いにでるのかを注目しましょう。





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