2004年12月 1日 作成 ジョブショップ (スケジューリング と バランシング) >> 目次 (テーマ ごと)
2009年 3月 1日 補遺  

 

 
1. ジョブショプ・スケジューリング 問題

(1) ジョブショップ・スケジューリング の用語

  ジョブショップ・スケジューリング は、以下の計画を作成することである。

    注文の納期
    作業順序
    作業の所要時間

 なお、ジョブショップ は、ワークショップ とか作業区とも云う。
 作業手順のことを、工順 (routing、ルーチング) とも云う。

 
(2) 静的問題と動的問題

  ジョブショップ・スケジューリング 問題には、以下の 2つがある。

    静的問題 (すでに到着済みの一定数の仕事を対象とする。)
    動的問題 (断続的に到着する仕事を対象とする。)

  静的問題の手法としては、以下の 2つがある [ 専門書を参照されたい ]。

    ジョンソン 法
    ブルック・ホワイト 法

  ジョンソン 法は、以下の 3つを対象としている手法である。

    2作業 フロー・ショップ・スケジューリング
    3作業 フロー・ショップ・スケジューリング
    2作業 ジョブ・ショップ・スケジューリング

  (ジョブ・ショップ に対して、) フロー・ショップ というのは、加工 ルート が同じである問題のことをいう。

  ブルック・ホワイト 法は、以下の 2つを対象としている。

    一般形の ジョブ・ショップ・スケジューリング
    並列 スケジューリング

  動的問題は、いわゆる「シミュレーション」 として考えられる定式化である。
  仕事の行列のなかから、なんらかの優先順位を適用して選んだ仕事を割りつける やりかた である。
  優先順位には、以下の 4つの規則がある。

    固定的優先規則
    先着順規則
    最小加工時間規則
    最小 スラック 規則

 
2. ライン・バランシング 問題

 作業遂行単位の負荷あるいは能力の均等化 (平準化) を、ライン・バランシング (line balancing) という。

 
(1) 作業 ステーション (作業区、ワークセンター) の遊休時間

 ライン・バランシング 問題の定式化は、作業 ステーション の遊休時間 (バランス・ロス は関数として記述できる) を最小化することを目的としている。逆に言えば、編成効率 (関数として記述できる) を最大化することにある。バランス・ロス (バランス おくれ [ balance delay ]) の値は、10% から 20%以下が良い、とされている。逆に言えば、編成効率は、80% から 90% 以上であることがのぞましい、とされている。

 
(2) ライン・バランシング の アルゴリズム

 さまざま、あるが、実用性の高い ムーディ・ヤング 法が有名である [ 専門書を参照されたい ]。





[ 補遺 ] (2009年 3月 1日)

 本 エッセー で扱った テーマ は、単純に言えば、以下の ふたつです。

 (1) ジョブ の優先順位
 (2) ワークステーション (作業区) の効率

 これらは、スケジューリング のなかで考えなければならないので、とても難しい テーマ です。本 エッセー では、ジョブショップ 形態を前提にして、これらの概念を言及していますが、スケジューリング には、生産設備の物的な配置によって構成されるので、ほかにも色々な形態があって、ライン・バランシング に対して一律の ソリューション はないと思って良いでしょう。生産設備の物的な配置は、典型的な配置として、以下の 4つにまとめられます。

 (1) 単一機械
 (2) 並列機械
 (3) フロージョブ
 (4) ジョブショップ

 そして、それらの設備に対応した スケジュール が考慮されます。

 単一機械の スケジュール では、機械が ひとつなので、優先順位は投入順のことです。単一機械でも、ひとつの 製品 クラス のなかで、いくつかの サブクラス が存在するなら──たとえば、段 ボール を寸法ごとに生産しているなら──機械の段取りが生じるので、段取りを考慮した スケジュール が組まれることになるでしょう。

 並列機械の スケジュール では、同種の機械を扱っているので、どの機械で生産するかという点を考慮しなければならない。すなわち、機械の代替性が出るということです。さらに、段取りが生じるかもしれない。

 フロージョブ の スケジュール では、いちばん単純な構成は、すべての ジョブ が同一の工順 (機械の配置どおりの工程順序) で生産される構成ですが──(機械1, 機械2, 機械3) という一連の プロセス を踏んで生産される構成ですが──、(機械1, 機械2 を省略して, 機械3) のように、機械構成が いちぶ 違う形態も この スケジュール のなかで扱います。たとえば、パソコン や携帯電話などの基板組立などでは、ひとつの 製品 クラス のなかで、いくつかの サブクラス が存在するので──基板の部品点数がちがうなど──、ライン・バランシング を配慮して投入の優先順を決めることになるでしょう。

 ジョブショップ (機械設備)の スケジュール では、フロージョブ のような 「同一種類の同一工順」 を構成できない生産形態で、「設備ごとに」 生産の順番を判断することになります。たとえば、工作機械群のように、旋盤・フライス 盤、研磨機、穿孔機などが、それぞれ機械ごとに多数設置されていて、ジョブ (部品) が ジョブショップ (機械設備) のあいだを移動します。同一機能をもつ生産設備 (ジョブショップ) が一カ所に複数台集めて設置されていているならば、それらの機械群を ワークセンター と云います。したがって、ジョブ は、ワークセンター のなかから ひとつの ジョブショップ に投入されるので、ライン・バランシング を配慮して、ジョブショップ ことの投入量を決めなければならない。

 コンピュータ・システム の観点からすれば、ジョブショップ の スケジュール を基底にして、ジョブ と ジョブショップ (および、ワークセンター) と ルーチング を、それぞれ、基礎情報として扱えば、それらを組み合わせて、単一機械・並列機械・フロージョブ にも対応できるのですが、上述した スケジューリング の どれであれ、考慮しなければならない点は、「スケジューリング の最適化」 でしょう。スケジューリング のやりかたには、様々な やりかた が提示されてきましたが、本 エッセー では、そのなかから 「OR (オペレーションズ・リサーチ)」 的な やりかたを──さらに、OR の やりかた のなかから いくつかを選んで──まとめてみました。そして、「スケジューリング の最適解」 をもとめる アルゴリズム がないことが証明されています [ そのために、OR 的な やりかた──たとえば、ジョンソン 法など──に関しては、本 エッセー のなかで 「専門書を参照されたい」 と述べるに止めています ]。ちなみに、オリヴァ・ワイト 氏は、1970年代に、MRP (Manufacturing Resource Management) の体系を整えて普及した コンサルタント ですが、「OR 的な やりかたなどは、頭の刺激に良いのかもしれないが、現実的な ソリューション ではない」 と言っていました [「コンピュータ は経営に役立っているのか」 (吉谷龍一 訳、日刊工業新聞社)。MRP の パッケージ では、「優先規則を用いた シミュレーション」 が搭載されています (オリヴァ・ワイト 氏も、この やりかた を著作で説明していました)。この やりかた は、それぞれの ジョブショップ で待ち行列のなかにある ジョブ を以下のような簡単な規則を用いて評価して、最も高い評価の ジョブ を ジョブショップ に割り当てる手続きを繰り返して スケジュール を作成する やりかた です。

 (1) 先着順規則 (FCFS)
 (2) 最小加工時間規則 (SPT)
 (3) 最小 スラック 規則 (MST)

 ライン・バランシング では、ジョブショップ ごとに 「能力 (ひとの労働時間、機械の稼働時間)」 を記述して、まず、実際の着手 ジョブ のうえに、さらに、計画されている ジョブ を山積みして、ジョブショップ の負荷を計算します。そして、「能力」 を超えているなら、負荷の山を崩して──ほかの ジョブショップ に割り当てるとか、着手日を変更するとかして── 「平準化」 をおこないます。ライン・バランシング については、後日、「能力所要量計画 (CRP、Capacity Requirements Planning)」 で説明します。  





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