2005年 1月 1日 作成 プライオリティ 計画 >> 目次 (テーマ ごと)
2009年 4月 1日 補遺  

 
1. プライオリティ 計画

 プライオリティ 計画は、生産・在庫管理の中核となる作用である。
 良い プライオリティ 計画がなければ、日程計画・負荷計画・購買管理・工程管理などが正しく作用しない。
 良い プライオリティ 計画がなければ、欠品表や督促制度のような インフォーマルシステム がまかり通る。

 
2. 在庫管理と ロットサイズ

 従来の在庫管理は以下の 2点が論点であった。

 (1) いくつ? (how much?、いくつ発注するか)
 (2) いつ?  (when?、いつ発注するか)

 「いくつ」 は ロットサイズ の論点である。EOQ (Economic Order Quantity) が研究されてきた。必要な数量を調達しても、それが不必要な時であれば役に立たない。必要な物を必要な場所で必要な時に得られることのほうが ロットサイズ を計算することに比べて有用である。

 
3. オーダー 指示 と プライオリティ 計画

 「在庫部品はない。だから、MRP は使えない」 という考えがあるが、在庫管理は、プライオリティ 計画の副産物にすぎない。また、「MRP は資材の所要量を計算する システム である」 というふうに考え違いされている。MRP は、(刻々と変化する状況のなかで、) 「したいこと」 と 「できること」 を結ぶための プライオリティ 計画 システム である。プライオリティ 計画が単なる 「オーダー 指示」 システム になってしまう理由は、以下の点にある。

 (1) 納期をわざと早目にしてある。
 (2) 猶予指示はしたくない。
 (3) フォーマル・システム と インフォーマル・システム を併存することは悪しき慣習である。

 MRP は単なる発注技法ではない。プライオリティ 計画の手法である。

 
4. 独立需要 と 従属需要

 ジョセフ・オーリキー (Orlicky J.A.) は「独立需要と従属需要」 という概念を提示した。
 独立需要品目とは、(他の品目から独立して) 受注または予測に基づいて所要量を見積もる品目 (最終製品や サービス・パーツ) のことをいい、従属品目とは、上位品目の需要から従属的に導出される品目である。

 (1) 独立需要品目には発注点方式を使う。
 (2) 従属需要品目には MRP を使う。

 在庫管理の対象品目は、独立需要品目に比べて、従属需要品目のほうが数量が多い。

 
5. 発注点方式 と MRP

 「いつ」 という論点は、「いつ発注するか」 ということである。
 「いつ発注するか」 という手法として、以下の 2つが使われている。

 (1) 発注点 (order point)
 (2) MRP

 発注点の基本式は、以下の式である。

  OP = Dlt + SS (lt:リードタイム、D:リードタイム 中の需要量、SS:安全在庫量)。

 MRP は従属需要品目に対して使われる。そのためには部品表が前提となる。

 
6. タイムフェイズ (time-phased) と タイム・バケット (time-bucket)

 資材の所要量計画には 「タイムフェイズ」 という考えかたを使う。計画を、日や週や月の単位に区切って管理する。時間域に分割して示した計画を 「タイムフェイズ された MRP」 という。「タイムフェイズ された MRP」 では、以下の 4点が アウトプット とされる。

 (1) 予定所要量 (projected requirement)
 (2) 受入確定量 (scheduled receipts)
 (3) 手持ち量 (available balance)
 (4) 計画 オーダー 発令

 タイム・バケット とは タイムフェイズ された時間域のことをいい、1週間とか 1日というふうに管理しやすい単位が使われる。

 
7. 督促 と 猶予

 計画は以下の 2点を満たしていなければならない。

 (1) 督促 (expedite) ができる。
 (2) 猶予 (unexpedite) ができる。

 「(オーダー を発令し、そのあと、) 督促をする」 だけでは計画にならない。

 
8. タイムフェイズ 型の発注点方式 と MRP

 タイムフェイズ 型の発注点方式は完成商品の在庫管理に使われる。MRP は構成部品の在庫管理に使われる。タイムフェイズ 型の発注点方式は MRP とほぼ同じであるが、タイムフェイズ 型の発注点方式は 「完成商品」 の在庫管理に対して適用される。





[ 補遺 ] (2009年 4月 1日)

 本 エッセー で述べた項目は、MRP (Manufacturing Resource Planning) の基本構造が整えられた 1970年代において すでに述べられていた基本項目です。MRP が狭義の MPR (Material Requirements Planning、資材所要量計画) から ひとつの閉じた生産体系 (Manufacturing Resource Planning) へと拡張した最大の特徴点は、「再 スケジュール」 システム として使うという点にあるでしょうね。「発注点方式 + MRP」 という構成では、MRP が発注法として使われてしまい、MRP の本来の機能たる 「スケジュール・システム」 としての使いかたができない。しかも、発注点方式は リードタイム が一定であるという前提で関数を構成しているので、現代のように、リードタイム の短縮が最大の争点になっている時代であれば、MRP を 「スケジュール・システム」 として使って、最短の リードタイム を前提にした 製造計画を立てるほうがいいでしょう。MRP を 「従属需要の計算」 のみに使うのではなくて 「独立需要の製造計画」 に使うことが オリヴァ・ワイト 氏らによって、1970年代に提唱されていました。

 「ひとつの マスター・プラン を共有する」 という スケジュール 機能は、1970年代では 「社内 (の利害関係者のあいだ、たとえば、購買部、生産部と販売部)」 を対象にしていましたが、IT の技術が進化して、経営組織が 「連結」 ベース にして ネットワーク 組織になってきた現代では、「社外」 も対象にしています──すなわち、ひとつの マスター・プラン を ネット 上で共有する」 ということ。そして、それが実現できれば、value-chain (「製-卸-販」) のなかで、それぞれの拠点ごと (工場内、物流 センター 内や販売店内などの、それぞれの場所) の在庫削減ではなくて、それぞれの拠点間に存在する流通在庫を ふくめた 「多段階の在庫削減」 が──すなわち、「製-卸-販」 の全体のなかで在庫削減が──実現できるでしょう。

 さらに、IT の技術進化に呼応して、ビジネスモデル も多彩になってきて、1970年代に典型的であった 「多量生産・大量消費」 という 「product-out, market-in」 形態のほかに、「market-out, product-in」 形態が生まれてきました。そういう多彩な ビジネスモデル に対応するためには、MRP の 「予測・計画」 機能が不可欠です。





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