2005年 6月 1日 作成 資材の計画 >> 目次 (テーマ ごと)
2009年 9月 1日 補遺  

 

 
1. MPS と MRP

1 ) MPS は、独立需要 (製品ごとの生産量) に対する計画である。
   [ 販売在庫 (marketing inventory) を管理する。 ]

2MRP は、従属需要 (製品を構成する部品) に対する所要量を計算する。
   [ 製造在庫 (manufacturing inventory) を管理する。 ]

3 ) MRP は、以下の情報を基礎資料にして、製造在庫を管理する。

   (3-1MPS (マスター・スケジュール)
   (3-2製造部品表 (BON)
   (3-3在庫記録

4 ) MRP は、資材を計画するために、以下の情報を考慮する。

   (4-1 ) 製造部品表 (構成部品をきめる。)
   (4-2 ) 設計変更 (将来の計画のなかで考慮される。)
   (4-3 ) スクラップ 比率 (製造工程のなかで起こる減損を考慮する。)
   (4-4 ) 減耗比率 (在庫記録のなかで起こる減耗を考慮する。)

5 ) MRP は、以下の変更を考慮する。

   (5-1 ) MPS の変更
   (5-2 ) 製造部品表の変更
   (5-3 ) リードタイム の変更
   (5-4 ) ロット・サイズ の変更
   (5-5 ) 在庫状態の変更

 
2. 所要量

1 ) 所要量には、以下の 2つがある。

  (1-1総所要量 (gross)
  (1-2正味所要量 (net)

2 ) 総所要量とは、
   MPS の製品 アイテム に対して、期間ごとに、所要量を計算する。

3 ) 正味所要量とは、
   総所要量を基礎資料にして、
   当該部品の在庫と注残・仕掛かりを引当した後の
   実際に手配しなければならない所用量のことをいう。

   [ 正味所要量=総所要量 − (在庫 + 注残 + 仕掛かり)]

 





[ 補遺 ] (2009年 9月 1日)

 MPS (Master Plan Schedule、基準生産計画) は、前々回および前回 概説しました。MPS は、「製造計画」 です。その 「製造計画」 が実現できるかどうか を調べるために、以下の 2つの必要量 (requirements、ふつう 「所要量」 という) が調達できるか (用意できるか) どうか を調べます。

 (1) 資材 (material)

 (2) 生産力 (capacity)

 「資材の所要量を計画する」 ことを MRP (Material Requirements Planning) といい、「生産力の所要量を計画する」 ことを CRP (Capacity Requirements Planning) といいます。すなわち、MRP は 「資材の計画」 で、CRP は 「生産力の計画」 です。それら (MPS、MRP および CRP) の計画は、以下の順で実施されます。

  MPS → MRP → CRP

 すなわち、製造計画を作成して、その計画で必要とされる資材が調達できるかどうか を調べて、資材が用意できるのであれば、製造計画どおりに製品をつくる生産力 (人と機械) が用意できるかどうか を調べます。

 生産計画 (Production Schedule) は 「総生産量」 に関する計画ですが、MPS は 「製品」 ごとの計画です。言い換えれば、MPS は 「販売在庫」 を管理する計画です。MPS が対象とする 「製品」 は、部品表 (BOM、Bill of Material) でいえば、最上位 (レベル 0) に記述される item です──それ [ BOM の最上位に記述される item ] を MRP では、「製品 アイテム」 といいます)。「製品 アイテム」 は、マーケット での需要予測の対象となります。

 マーケット の需要予測を参考にして 「製品 アイテム」 の製造計画を作成します──需要の観点でいえば、「製品 アイテム」 は 「独立需要」 項目と呼ばれています。そして、「製品 アイテム」 の製造量さえ計画すれば、資材 (BOM のなかで、レベル 1 から下位の item) は、ひとつずつ需要を予測しなくても、BOM があれば自動的に計画できます── BOM 上の資材は 「従属需要」 項目と呼ばれています [ というのは、「独立需要」 の数量がわかれば、BOM を使って自動的に計算できるので ]。したがって、MRP における在庫は、製造在庫です。

 なお、「スクラップ 比率」 および 「減耗比率」 は、「部品」 レベル ではなくて、「部品表 (BOM)」 で定義されるべき項目です。たとえば、製品 アイテム A を構成する 部品 a が、他の製品 アイテム B でも使われている、として、部品 a は製品 アイテム A を作るときに 15% の歩留まりが生じて、製品 アイテム B を作るときには 5% の歩留まりが生じる、という事態があるでしょう。そういう事態では、部品 a の スクラップ 比率は 「部品」 レベル ではなくて、「部品表」 レベル でしか定義できないでしょうね。同じ事態は、「減耗比率」 でも生じます。たとえば、部品 a は、製品 アイテム A を作るときに 5個必要だとして、なんらかの条件のなかで 1個壊れてしまうとすれば──たとえば、部品を移動するときに、箱のなかに梱包するよりも藁で縛って積んだほうが コスト が安いとか──、5個を払い出せば、実際には 4個になって欠品状態になってしまいます。したがって、払い出しは、6個 (減耗比率 20%) でなければならないでしょう。そして、減耗比率も、「製品」 ごとに違うかもしれない──たとえば、製品 アイテム A を作るときには、5個に対して 1個の減耗が生じて、製品 アイテム B を作るときには、部品 a を多量に使い、運搬で 4段に積み上げるので、20個につき 5個の減耗が生じるかもしれない [ 下の段に置かれた部品の減耗が多いかもしれない ] (減耗比率 25%)。

 本 エッセー では、MRP の全体像を まとめてみました。MRP の詳細は、次回から連載で説明します。





  << もどる HOME すすむ >>
  生産管理