2002年 3月31日 作成 資産会計 (流動資産・固定資産・繰延資産) >> 目次に もどる
2006年 7月16日 補遺  

 
 1. 流動資産

 流動資産は、以下の 3つに類別される。
 (1) 当座資産 (現金および預金、金銭債権、有価証券)
 (2) 棚卸資産
 (3) その他の流動資産

 当座資産の評価は、以下の点を考慮しなければならない。
 (1) 現金および預金が、外貨建てなら、外国為替換算を考慮しなければならない。
 (2) 金銭債権は、貸倒引当金を考慮しなければならない。
 (3) 有価証券は、(強制あるいは任意の) 評価減を考慮しなければならない。

 「強制評価減」 とは 「時価が著しく (50%以上) 下落して回復の見込みがないなら」 時価で評価しなければならない。「任意評価減」 とは、「低価法」 の適用をいう。

[ 注意 ]
 低価法が 「任意適用」 であるとすれば、例えば、有価証券の評価基準を 「正当な理由」 があれば、時価基準から原価基準に変更できる。もし、「正当な理由」 を 「経済環境の激変」 であるとすれば、膨大な不良債権に対して、低価基準から原価基準に変更して、貸倒引当金を最小限に見積もれば、「経営状態を改善する」 ことができる(?!)。奇妙な 「からくり」 だと思う。ちなみに、IAS では、会計手続きを変更したら、過去に遡及して、数値を修正しなければならないが [ IAS 8号を参照されたい ]、日本では、変更の事実・変更理由・変更の影響額を記載すればよいことになっている。

 債権は、以下の 3つに類別して、貸倒見積高の計算がきめられている。
 (1) 一般債権
 (2) 貸倒懸念債権
 (3) 破産更正債権等

 
2. 棚卸資産

 棚卸資産は費用性資産だから、費用配分の対象である。
 棚卸資産を費用配分するためには、以下の 2つの計算をしなければならない。
 (1) 数量 (次期繰越数量を計算する)
 (2) 金額 (当期の費用と次期以降の費用を計算する)

 棚卸資産の数量計算には、以下の 2つのやり方がある。
 (1) 棚卸計算法 (実地棚卸法
 (2) 継続計算法 (帳簿棚卸法

 棚卸計算法の期末数量と継続計算法の期末数量がズレていたら、以下のように計上する。
 (1) 実地棚卸の期末数量 < 帳簿棚卸の期末数量 ---> 棚卸減耗損を計上する。
 (2) 実地棚卸の期末数量 > 帳簿棚卸の期末数量 ---> 損益修正とする。

 棚卸資産の金額計算 (数量×単価) では、通常、原価法が使われる。原価法には、以下の種類がある。
 (1) 個別法
 (2) 先入先出法 (FIFO--First-In, First-Out--ともいう) [ ファイフォと発音する ]
 (3) 後入先出法 (LIFO--Last-In, First-Out--ともいう) [ ライフォと発音する ]
 (4) 平均原価法 (総平均法と移動平均法がある)
 (5) 売価還元原価法

 以上のほかにも、最終仕入原価法や基準棚卸法がある。最終仕入原価法は、日本では、中小企業の多くが使っているが、IAS では認められていない

 棚卸資産の評価では、(強制あるいは任意の) 評価減 [ 棚卸評価損 ] を考慮しなければならない。
 IAS では、棚卸資産の評価基準として、低価基準が 「強制適用」 される [ IAS 2号を参照されたい ]。

[ 注意 ]
 「キャッシュ」 の意味は、現代では、現金 (当座預金や普通預金も対象となるが) と現金同等物 (短期の定期預金など) とされているが、歴史的に観れば、以前では、「正味運転資本」 のことであった。
 とすれば、「正味運転資本」 を 「堅実に (保守主義の原則に則って)」 計算するには、流動資産となる キャッシュ の流入を低めに評価して、流動負債となる キャッシュ の流出を多めに評価することは当然である。すなわち、結果として、流動資産に対して低価主義を適用していることになる。低価基準は、キャッシュフロー の観点のなかで使われてきた 「慣習」 なのである。
 とすれば、キャッシュフロー を重視する IAS が低価基準を 「強制適用」 することは理解できる。

 棚卸資産の評価損を計上した後、次の期首の棚卸高は、以下の 2つのいずれかを使って計上される。
 (1) 切り放し法 (前期末の評価切り下げ後の簿価を使う)
 (2) 洗い替え法 (切り下げ前の簿価に戻す)

 その他の流動資産としては、以下のような資産がある。
 親会社株式 (商法第 211条に規定されている親会社) は流動資産に親会社株式の科目をもって別に掲記しなければならない。また、未収収益短期貸付金、株主・役員若しくは従業員に対する短期債権が、資産の総額の 100分の1を超えるものについては、当該資産を示す名称を付した科目をもって掲記しなければならない。

 
3. 固定資産

 固定資産は、以下の 3つに類別される。
 (1) 有形固定資産
 (2) 無形固定資産
 (3) 投資など

 有形固定資産は費用性資産なので、費用配分の対象として減価償却が適用される。
 (1) 土地は半永久的な性質なので、費用化の対象にならない。
 (2) 建設仮勘定は建設途中なので、費用化の対象にならない。

[ 注意 ]
 1998年 3月、議員立法として、「土地再評価法」 が施行された。土地を時価で評価して、再評価益を貸借対照表上に [ 負債として ] 計上することを認める法律である。
 法律の対象とされたのは金融機関である。というのは、適用趣旨は [ 政策的に ] 自己資本比率を改善することにあった。1998年 3月期に再評価を実施した銀行の数は過半数を超えた。
 その後 (1999年3月に) 改正され、(再評価の実施期限を延長して) 再評価益の 60%を 「資本として」 計上できるようにして、資本計上した 3分の 2を上限として自己株式の取得消去をできる、とされた。
 さて、この 「改正」 は、なにを意味しているのか、と言えば、 「負債(他人資本)として」 扱えば、ROA (総資本利益率) が低下するので、「資本組み入れ」 にすれば、ROA の低下を食い止めることができるからである。したがって、(会計理論上の論点ではなくて) 「政策的な」 実施であった。

 減価償却には、以下の 2つのやり方がある。
 (1) 個別償却
 (2) 総合償却

 個別償却の計算方法には、以下のような方法がある。
 (1) 定額法
 (2) 定率法
 (3) 級数法
 (4) 生産高比例法

 なお、減価償却の代用として、「取替法」 が認められている。

 減価償却には、以下のような特別償却が認められている。
 (1) 臨時償却
 (2) 初年度特別償却
 (3) 割増償却

[ 注意 ]
 これらの減価償却法について、個々の解説は省略するので、資産会計の体系を把握したら、会計辞典などで調べてほしい。

 無形固定資産には、以下のような資産がある。
 (1) 法的資産
   (1)-1 無体財産権 (特許権、実用新案権、商標権、意匠権、著作権)
   (2)-2 利用権 (借地権、地上権、鉱業権、漁業権、施設利用権など)
 (2) 経済的資産 (営業権

 無形固定資産は、有償取得なら、対価を取得原価とする。
 (1) 営業権は、有償取得あるいは合併による取得にかぎって資産性が認められている
 (2) 無形固定資産を無償で取得したら、「公正な評価額を付す」 とされている [「原則」三の五のF ]。

 無形固定資産は、以下のように償却される。
 (1) 法的資産は、法律が保護している期間を限度として消却する。
 (2) 営業権は、商法上、5年以内に消却しなければならない。

[ 注意 ]
 減価償却は、対象となる資産に対応して、以下のような用語が使われている。
 (1) 「減価償却(depreciation)」 は、(天然資源以外の) 有形固定資産に関して使う。
 (2) 「減耗償却(depletion)」 は、(有形固定資産のなかでも) 天然資源のような涸渇性資産に使う。
 (3) 「なし崩し償却(amortization)」 は、無形固定資産に関して使う。

 投資等 (投資その他の資産) には、以下の資産がある。
 (1) 投資 (関係会社株式、関係会社社債、出資金、投資有価証券、長期貸付金など)
 (2) 長期前払費用 (長期の前払保険料や長期の前払家賃など)

 投資の評価は、原価主義を原則とする。
 ただし、債券 (社債や国債など) の券面額と取得原価が一致しないなら、以下の方法が認められている。
 (1) アキュミュレーション (accumulation)
 (2) アモーチゼーション (amortization)

 アキュミュレーション とは、券面額を下回って買い入れたとき、取得価額を券面額と一致するまで、満期日までの間、毎期一定の方法で加算することができる方法である。
 アモーチゼーション とは、券面額を上回って買い入れたとき、取得価額を券面額と一致するまで、満期日までの間、毎期一定の方法で控除する方法である。

 株式の取得価額は購入価額であるが、購入後の評価方法には、以下の 2つがある。
 (1) 原価法 (配当があれば、受取配当金として扱う)
 (2) 持分法 (これについては、後日、別途、説明する)

4. 繰延資産

 繰延資産は、以下の 2点を認知基準 (計上の判断基準) としている。
 (1) 対価の支払いが完了している。
 (2) 経済的効果が将来に及ぶ。

 繰延資産として、「企業会計原則」 は以下を列挙している (「原則」三の四)。
 (1) 創立費
 (2) 開業費
 (3) 新株発行費
 (4) 社債発行費
 (5) 社債発行差金
 (6) 試験研究費
 (7) 開発費
 (8) 建設利息

 1998年 3月に、企業会計審議会は 「研究開発費等に係る会計基準」 を公表した。そして、1998年11月に、「財規」が改訂されて、試験研究費が繰延資産から削除された。試験研究費は、一括して、費用 (一般管理費) として計上することになった (製造費用として計上することも認められている)。
 ただし、開発費は削除されていない (開発費は繰延資産として計上できる)。

[ 注意 ]
 「試験研究費」 および開発費が 「研究開発費」 と違うことを覚えておいてほしい。
 ちなみに、繰延資産を計上している企業は少ない。朝日監査法人の調査によれば、15%程度の企業しか、繰延資産を計上していない。 [ 朝日監査法人、「会社の決算と開示」]

 最後に、以下の点を注記する。
 有形固定資産も無形固定資産も、(キャッシュフロー の観点からすれば) 「減損会計」の対象になる
 今月 (2002年 3月)、(日経新聞の報道によれば) IAS の会議が東京で開催されたとき、「減損会計」 が論点になったそうである。つまり、工場も評価減の対象とされる、ということである。日本企業のなかでは、いち早く、「減損会計」 を導入して、評価減を計上している企業もある。

 さて、(会計学を専門としていない) 我々シロート は、以上に述べてきた 「資産会計の体系」 を把握しておけば充分であろう。
 次回は、負債会計を扱う。□

 



[ 補遺 ] (2006年 7月16日)

 昨年 (2005年) 6月に会社法が公表され、今年 (2006年) 2月に会社法省令 (会社法施行規則、会社計算規則、電子公告規則) が公表された。会社法では、同じ用語に対して、いままでと違う使いかたがされていることがある。たとえば、従来の (設立時の) 「新株発行」 は、会社法では、新株発行とは云わなくなった。会社法では、「新株発行」 は、設立後に発行される株式に関する行為を云う。

 小生は、いま、会社法施行規則と会社計算規則を読んでいる最中である。会計と会社法とのあいだで、用語の使いかたおよび計算手続きの相違点などを丁寧に調べている最中である。その学習が終わったら、いずれ、相違点を整理して、本 ページ を増補したいと思う。




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