2002年 6月15日 作成 キャッシュフロー 計算書の見かた >> 目次に もどる
2006年10月 1日 補遺  

 

 以後、以下の略語を使う。

  (1) OCF (Operating activities Cash flow) 営業活動によるキャッシュフロー
  (2) ICF (Investing activities Cash flow) 投資活動によるキャッシュフロー
  (3) FCF (Free Cash Flow) フリー・キャッシュフロー

1. 収益性の判断

 収益性を判断するための指標として、以下の 3つがある。

  (1) キャッシュ・フロー・マージン
  (2) 「OCF・自己資本」 比率
  (3) FCF

 キャッシュフロー・マージン は、営業活動による収益性を判断する指標であり、以下のように計算される。

   「OCF ÷ 売上高」

 「OCF・自己資本」 比率は、以下のように計算され、高いほど自己資本効率が良い。

   「OCF ÷ 自己資本」

 FCF は、OCF から 「経常的な経営活動に必要とされるキャッシュフロー」 を控除した キャッシュフロー である。「経常的な経営活動に必要とされる キャッシュフロー」 は、以下のように、いくつかの解釈がある。

  (1) 投資活動による キャッシュフロー の全体
  (2) 投資活動による キャッシュフロー のなかの設備投資
  (3) 減価償却費

 
2. 支払能力の判断

 支払能力を判断するための指標として、以下の 2つがある。

  (1) 「OCF・流動負債」 比率 (OCF ÷ 流動負債)
  (2) 「OCF・負債」 比率 (OCF ÷ 負債)

 いずれの比率も高いほど、財務的に安定している。

 
3. 投資効率の判断

 投資効率を判断するための指標として、以下の2つがある。

  (1) 「OCF・設備投資」 比率 (設備投資額 ÷ OCF)
  (2) 「OCF・ICF」 比率(OCF ÷ ICF)

 「OCF・設備投資」 比率は低いほど無理のない設備投資である。
 「OCF・ICF」 比率は、投資がどれだけ自己資金でまかなわれているかを示す。

 
4. 資金繰り効率の判断

 会計上の利益と OCF との比率を計算すれば、資金繰りの効率を判断することができる。
 「OCF÷当期純利益」 が 100%以下であれば、資金繰りを配慮しなければならない。

 
5. 配当性向の判断

 支払配当と OCF との比率を計算すれば、配当性向を判断することができる。
 株主への還元を重視していれば、この比率 [ 支払配当÷OCF ] は高い。

 以上を一覧表として以下にまとめる。

 

 



┌─────────────────────────────────────────┐ 
│                 収益性を判断する                │
├─────────────┬─────────────┬─────────────┤
│キャッシュフロー・マージン│ 「OCF・自己資本」 比率  │ フリー・キャッシュフロー │
├─────────────┼─────────────┼─────────────┤
│   OCF ÷ 売上高    │   OCF ÷ 自己資本  │    OCF−投資     │
├─────────────┼─────────────┼─────────────┤
│ 営業活動による収益性  │高いほど自己資本効率が良い│ 多いほど企業の価値がある │
└─────────────┴─────────────┴─────────────┘


┌───────────────────────────────────────────┐
│                 支払能力を判断する                 │
├─────────────────────┬─────────────────────┤
│     「OCF・流動負債」 比率     │     「OCF・負債」 比率       │
├─────────────────────┼─────────────────────┤
│       OCF ÷ 流動負債       │       OCF ÷ 負債        │
├─────────────────────┴─────────────────────┤
│               高いほど財務的に安定している              │
└───────────────────────────────────────────┘


┌───────────────────────────────────────────┐
│                 投資効率を判断する                 │
├─────────────────────┬─────────────────────┤
│     「OCF・設備投資」 比率     │     「OCF・ICF」 比率       │
├─────────────────────┼─────────────────────┤
│      設備投資額 ÷ OCF       │       OCF ÷ ICF         │
├─────────────────────┼─────────────────────┤
│  低いほど無理のない設備投資である   │投資がどれだけ自己資本でまかなわれているか│
└─────────────────────┴─────────────────────┘


┌───────────────────────────────────────────┐
│                資金繰りの効率を判断する               │
├─────────────────────┬─────────────────────┤
│     「OCF・当期純利益」 比率    │     「支払配当・OCF」 比率     │
├─────────────────────┼─────────────────────┤
│      OCF ÷ 当期純利益       │       支払配当 ÷ OCF      │
├─────────────────────┼─────────────────────┤
│  100%以下なら資金繰りに注意する    │     高いほど利益還元している    │
└─────────────────────┴─────────────────────┘




[ 補遺 ] (2006年10月 1日)

 財務分析の専門家でない われわれは、上述した比率のなかで、以下の 2つが大切であることを知っていればよいでしょう。

 (1) FCF (フリー・キャッシュ・フロー)
 (2) 「OCF・当期純利益」 比率

 そして、比率計算の公式を覚えなくても、本 エッセー のなかにまとめた比率一覧表を参照できればよいでしょう。ただし、ひとつの期 (単年度) の財務諸表を分析しても、その年 (会計年度) の業績を示すのみで、「企業の実態」 を把握できないでしょうね。「企業の実態」 を掴むためには、以下の 3つの比較をしなければならないでしょう。

 (1) 期間比較 (たとえば、前年比とか)
 (2) 相互比較 (同業他社との比較)
 (3) 標準比較 (同一業種の標準値との比較)

 期間比較は、少なくとも、5年くらい、できれば、10年くらいの比較数値を入手しなければ、「企業の実態」 を掴みにくいでしょう。それらの数値 (10年くらいの比較数値) は、ウェッブ上、無料で入手できますので、本 ホームページ の 「お役立ち リンク集 (企業・統計・法律 情報)」 の 「企業情報」 を活用してみて下さい。




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