2004年 6月16日 作成 経営責任論 (その 1) >> 目次 (作成日順)
2008年 9月16日 補遺  

 

 
1. 社会的責任論(参考 1)

 (1) 大量生産・大量輸送・大量消費の システム は環境破壊を起こした。
 (2) 経済学には、「エントロピー の経済学」 のように、環境問題を社会科学的に扱う領域がある。
 (3) 経営学では、コンティンジェンシー 理論が環境を扱ってきた。
   しかし、経済的進歩と環境との乖離を埋めることが経営の課題であるという自覚はなかった。(参考 2)

 
2. 経営にとって、環境は前提であると同時に対象でもある。

 (1) 自然環境
    - 経営立地論として、自然特性が経営の施設費、生産費、輸送費など影響する。
    - 第一次産業 (資源採掘) では、エントロピー が論点になる。

 (2) 社会的・文化的・政治的な環境
    - 国際化した経営では文化的な要因は大きな影響がある。
    - 独占禁止法や雇用促進法や公害規制法など法律的要因も経営に大きな影響がある。

 (3) 当初の社会的責任論は、(租税負担義務や規制の) 政治的環境を認識していた。
    自然環境や社会環境は社会問題になってから認知されてきた。
    - 消費者問題 (製品の安全性・表示の妥当性)
    - 雇用問題 (社会的弱者への就業保障)
    - 環境問題 (公害・汚染)

 
3. 問題が社会問題となり、経営問題となるまでには、通常、以下の 3段階を辿る。

 (1) 社会的関心にはなっているが、企業が対象にはなっていない。
    [ 対応は、経営の自由裁量 ]
 (2) 企業が関与していることが認知されるが、マネジメント しか認識していない。
    [ 対応は、経営の自由裁量 ]
 (3) 経営行為がなんらかの対応をとることを期待され、経営問題となる。
    [ 反社会的行為 ] (政府も制裁や規制をとるようになる。)

 (1) の段階で問題点を感知する システム (環境 モデル) を構成しなければならない。

 
4. 企業の価値観は、以下の 4つの原理を調和して導入しなければならない。
   [ 藤芳誠一 編、「ビジュアル 基本経営学」、学文社、1999年 ]

 (1) 効率性原理
 (2) 競争性原理
 (3) 人間性原理
 (4) 社会性原理

 
5. 企業の社会的責任は、以下の 2つに類別できる。

 (1) 義務責任
 (2) 支援責任(参考 3)

 
6. 消費者の観点からすれば、以下の 4つが保証されていなければならない。

 (1) 知る権利 (to know)
 (2) 選ぶ権利 (to choose)
 (3) 安全である権利 (to be safe)
 (4) 聞いてもらえる権利 (to be heard)

 
(参考 1)
 1960年代に起こった公害病──生産 プロセス 廃棄物の問題点──や 1970年代に顕著化してきた製品廃棄物の問題点を論点にして、経営学は 「自然の観念」 を経営の論理のなかに組み込まなければならなくなった。

(参考 2)
 アンソフ (Ansoff, H.I.) は、現代経営の責任として、以下のように主張している。 [ Stragegic Management, 1979 ]
  (1) 環境汚染行動を抑制して、
  (2) 利益のあがらない事業領域にも進出して、
  (3) 社会の発展に責任を負わなければならない。

(参考 3)
 支援責任として、メセナ と フィランソロピー (philansolopy) の 2つが代表的である。
 日本では、(イギリス の 「パーセントクラブ」──経常利益の 1 %を社会貢献に投資する集まり──にならって、) 1990年10月、「経団連 1 % クラブ」 が構成された。





[ 補遺 ] (2008年 9月16日)

 広範に及ぶ テーマ (社会的責任) を 2ページ に まとめたので──今回と次回の 2回に分割して まとめましたが──、本 ページ に記述した それぞれの文に対して補遺を綴れば、膨大な量になるので、補遺を割愛します。
 「事業 = 利潤追求」 という単純な考えかたで事業を運営している企業などないでしょう──少なくとも、世間に名の通った大企業では、そういう企業がないでしょう (と思いたいのですが、近年、「名の通った食品会社の いくつかが 賞味期限の切れた商品を再流用した偽装事件」 が起こったことは記憶に新しい、、、)。
 社会的責任は、利益処分 (儲けた利潤のなかから積み立てること) のなかで おこなう行為ではないでしょう。





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