2004年11月16日 作成 ロット・サイズ の定式化 >> 目次 (作成日順)
2009年 2月16日 補遺  

 

 
1. ロット・サイズ

  ロット・サイズ は、「在庫 コスト」 に対して、「発注 コスト (段取り コスト)」 の トレード・オフ として定式化できる。すなわち、「コスト の和」 の最小化問題として、定式化できる。
  定式化には、以下の 2つがある。

 (1) 需要が一定であることを前提して、無限期間の平均 コスト 最小問題
    (計算された ロット・サイズ を、EOQ [ economic order quantity、経済発注量 ] という。)

 (2) 離散的な需要に基づいて、有限期間の トータル・コスト 最小問題
    (計算された ロット・サイズ を、DOQ [ dynamic order quantity] という。)

 
2. 在庫 コスト

 在庫 コスト は、保管 コストとも呼ばれる。
 在庫 コスト として、倉庫維持費用 (減価償却費、賃貸料、人件費など) や減耗費、保険、税金などが算入される。在庫 コスト は、機会損失として考える。

 (1) h = vr
   (1)-1 h (円/個・期) は、或る製品 1個を 1期だけ在庫として保管したときの コスト
   (1)-2 v (円/個) は、その製品の価値 (価格)
   (1)-3 r (円/円/期) は、1円の価値の物を 1期だけ保管したときの保管費率

 (2) r の見積もりは、概算として、金利が使われる。期を年とすれば、数%から 10%である。

 
3. 段取り コスト と 発注 コスト

 (1) 生産なら、一回の段取りあたりの生産 コスト をいう。
 (2) 購買・調達なら、一回の発注あたりの購入 コスト をいう。
 (3) 1つの ロット に対する生産 コスト・購入 コスト のことであり、そのなかの固定費をいう。

 
4. EOQ と DOQ

 EOQ は、期あたりの在庫 コスト と発注 (段取り) コスト の和を最小にする ロットサイズ である。
 DOQ では、WW 法と呼ばれる ワグナー・ウィティン (Wagner and Whitin) が提示した最適解法が知られている。ただ、WW 法の計算手順は、簡単ではないので、以下のような簡便法が、いくつか提案されている。

 (1) 定期発注量法
 (2) 最低発注単価法
 (3) 最低 トータルコスト 法

 定期発注量法は、期あたりの平均需要量を用いて EOQ をもとめ、それを平均需要量で割った期間数を固定期間とした ロット を編成するやりかたである。

 最低発注単価法は、それぞれの期の段取り コスト と在庫 コスト の計を、その数量で割った単価を計算して、それが上昇する手前の期までを ロット として構成する。

 最低 トータルコスト 法とは、在庫 コスト が段取り コスト を超える手前の期までを ロット として構成する。
 最低 トータルコスト 法に対して、段取り コスト を超えない直前と、超える直後を比べて、追加的な在庫 コスト の小さいほうを選ぶ手続きを PPB (パート・ピリオド・バランシング) という。

 参考として、 ロット 計算 を読まれたい。

 





[ 補遺 ] (2009年 2月16日)

 ロット とは、購買品であれば、発注するときの単位であり、製造品であれば、製造するときの単位のことである。「ロット のまとめ」 という言いかたをするが、「ロット のまとめ」 とは、計算された正味所要量をもとにして、品目の特性・作業効率・設備効率などを考慮して、ロット・サイズ を前提にして手配数量をまとめることを云う。

 MRP は、以下の基本 ロジック で構成されている。

 (1) 総所要量の計算
 (2) 正味所要量の計算
 (3) ロット のまとめ
 (4) リードタイム の計算
 (5) 計画 オーダー の リリース

 「総所要量の計算」 では、基準生産計画 (製造計画) で必要とされる所要量を計算する。そして、「正味所要量の計算」 では、総所要量に対して、在庫・注残などの引当可能な数量 (前回の 「在庫」 を参照されたい) を考慮して、正味の所要量を計算する。
 次に、「ロット のまとめ」 では、正味所要量に対して、発注単位である ロット・サイズ を前提にして手配数量を まとめる。そして、納期から リードタイム を逆算して、発注日 (あるいは、着手日) を計算する。

 「ロット のまとめ」 には、以下のような やりかた がある。

 (1) 正味所要量を そのまま ロット にする。
 (2) 数量を固定する。
 (3) 期間を固定する。
 (4) 費用を最小化する。

 それらの具体的な やりかた は、「ロット の計算」 として後日説明するので、ここでは、基本的な以下の 2つの やりかた を説明する。

 (1) 数量を固定する (固定数量法)
 (2) 期間を固定する (固定期間法)

 「固定数量法」 とは、定量発注法のことで、固定した数量をもとに ロット をまとめる やりかたで、(数量を固定するので、)対象期間は変動的となる。この やりかた は、ルーチン 品──言い換えれば、比較的需要が安定している品目──に適用される。

 「固定期間法」 とは、所要量を そのまま ロット にして──必要量だけを ロット・サイズ にするので、「ロット・フォア・ロット (lot for lot)」 と云われている やりかた で、数量は変動的である──、固定した期間をもとに ロット を まとめる やりかた である。言い換えれば、固定期間内の所要量を まとめる やりかた である。この やりかた は、需要が不安定で、比較的高価な品目に適用される。

 段取り コスト が高くて、需要が それほど まとまっていない場合には、PPB を用いたほうが良いのかもしれないのですが、ロット・サイズ を BOM (Bill of Material、部品表) のすべての レベル で適用した場合、(前回の 「在庫」 で述べた) 「ロット・サイズ に起因する在庫 (過剰な在庫)」 が生じます。そのために、一般には、「ロット・フォア・ロット (必要量だけ ロット・サイズ とすること)」 が使われています。

 「ロット・フォア・ロット」 は、段取り回数が多くなるので、段取り コスト が高い場合には費用が増えるのですが、現代の製造技術では段取りも効率化されていて、たとえば、自動車の製造 ライン では、ひとつの ライン で数種類の車種を扱えるようになっているので、製造 ロット に関して言えば、「ロット・フォア・ロット」 が良いでしょうね。MRP の目的は、そもそも、必要量だけを生産する点にあるのだから。発注 ロット に関しては、費用の問題が出るでしょうが、この点でも、ブランケット・オーダー を導入すれば、固定期間法が適用できるでしょう。





  << もどる HOME すすむ >>
  Advanced Learner's