2001年 4月15日 作成 英英辞典を読む >> 目次 (テーマごと)
2006年 6月16日 補遺  



 THさん、きょうは、アフォリズム (断章) を読むもう一つのやりかたをお話しましょう。
 そのやりかたは、(正確に言えば、読む対象がアフォリズムではないのですが、) 読書のためにまとまった時間枠を取ることができないときに、思考力を養う手段として有効です。そのやりかたとは 「辞書を読む」 ことです。読む辞書は 「英英辞典」 です。以下の2冊をお薦めします。

 (1) LONGMAN Dictionary of Contemporary English
 (2) OXFORD Advanced Learner's Dictionary of Current English

 英英辞典を読むとなれば--英英辞典は、英単語を英語を使って解釈していますから--、暗記している ボキャブ ラ リー (語彙) が少ないことを嘆くかもしれないけれど、それは杞憂です。(1) と (2) の英英辞典は、それぞれ、付録として 、(英単語を解釈するときに使っている) 「core vocabulary」 を記載しています。その 「core vocabulary」 は、高々、3,000語程度ですし、その語彙のなかには、able とか baby とか、もう、すでに知っている単語が多いので、改めて暗記しなければならない語彙は少ない。まず、「core vocabulary」 を習得して、それから、辞書を読むようにすればよいでしょう。

 辞書を読むときには、あらかじめ自らの定義を考えて、辞書の定義と比べるようにすればよい。知らない単語の定義を調べるのではなくて、既に知っている単語の定義を調べるのです。期待していた定義と実際に記述されている定義の相違を意識することが大切なのです。この相違の意識が思考力を養う。そして、記載されている例文を読めばいい。
 例えば、「internet」 を調べてみ ましょう。LONGMAN は以下のように記述しています。

 「the internet:
   a computer system that allows millions of computer users around the world to exchange information」

 さて、インターネット に アクセス できる 「携帯電話」 は 「コンピュータ」 ですか 「電話」 ですか。
 では、「computer」 と 「telephone」 を調べてください。そのようにして、「芋蔓式に」 読めばいい。

 英英辞典が携帯するには嵩ばるなら、携帯用として、以下の電子辞書をお薦めします。

    SEIKO IC DICTONARY (SR8000) [ 大きさは、約10cm×約14cm ]

 この電子辞書には、LONGMAN の英英辞典と ROGET の類語辞典 (thesaurus) が収められています
(英和辞典と和英辞典も収蔵されています)。僕は、この電子辞書を愛用しています。□

 



[ 補遺 ] (2006年 6月16日)

 この エッセー を綴ったのは 5年前です。この 5年のあいだに、電子辞書は進化して多機能になって、100冊を超える辞典群を搭載している機種まで現れました。私自身も、この 5年のあいだに、4台の電子辞書を購入しました。私が電子辞書に期待している点は、本 エッセー でも綴りましたが、ことば の定義や豊富な文例を読みたいので、以下の辞典群が収録されていることです。

  (1) 英英辞典
  (2) 英語類語辞典 (thesaurus)
  (3) 英和活用大辞典 (英語の文例集)
  (4) 英語(あるいは、日本語) の百科事典
  (5) 国語辞典

 以上の辞典群が収録されている電子辞書として、私は、いま、SII 社の SR-T7100 を愛用しています。
 電子辞書の収録辞典群に対して欲張ったことを言えば、日本語の文例集--たとえば、「読書案内」 に掲載した 「比喩表現辞典」 (中村明、角川書店) のような文例集--も搭載してほしいのですが、いずれ、収録されることを期待しましょう。さらに、「日本語語彙体系」 (NTT コミュニケーション科学基礎研究所、岩波書店) も収録してほしいのですが、これは電子辞書の値段を考えたら無理かもしれないですね。

 さて、以上に綴った辞典群から推測できるように、私が電子辞書を使う理由は、ことばの定義・語彙体系・豊富な文例を読んで、概念の体系を確認したいからです。したがって、知らない単語を調べるのではなくて--当然ながら、そういう使いかたもしますが--、知っている単語を再確認するために辞典を読むことを目的としています。

 特に、英語の 「基本単語」 には注意を払って読むようにしています。というのは、英語を学習した頃 (中学生・高校生の頃) に、英単語に対して日本語の訳語を機械的に対応して暗記してきたので、英語の基本語がもっている 「語感」 を軽視してきた危険性が高いので。言い換えれば、いったん暗記してきた訳語を unlearn しなければならないということです。そのためには、英英辞典が示す定義を確認して、かつ、豊富な文例を読まなければならないでしょうね。たとえば、以下の 「感覚」 を理解できますか。

  He had eaten such a big tea that he found it impossbile to do justice to the splendid dinner.

  You must, in justice to yourself, see the Ford before deciding on your new car.

  You cannot do justice to such a complex situation in just a few pages.

  Such a cursory survey can do no justice to the subject.

  It is impossible to do justice to the subject in a short article.

  Unfortunately, the photograpic reproduction does it scant justice.

  Your perfomance has not done full justice to your ability.

  That photo doesn't do you justice.

  She didn't do herself justice in the exam.

  It was rough justice that they lost in the closing seconds of the game.

 
 以上の 「justice」 の感覚は--もし、「justice = 正義」 というふうに丸暗記していたら--、日本人には、なかなか、感知しにくいのではないでしょうか。
 本 エッセー のなかでも綴りましたが、電子辞書は携帯しやすいので、電子辞書を つねに携帯して、「すでに知っている単語」 の定義を調べて、さらに、文例を読めばよいでしょう。




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  佐藤正美の問わず語り