2002年 2月23日 作成 資料を読む (その 1) >> 目次 (テーマごと)
2007年 4月 1日 補遺  



 TH さん、きょうは、集めた資料の読みかたについて、お話しましょう。

 資料を読む前に、まず、読む速度を正確に知っていなければ、読書計画を立てることができないでしょう。そこで、読まなければならない書物のなかから一冊を選んで、1時間ほど読んでみてください。1時間のなかで読むことができた ページ 数がわかれば、ほぼ、読書の速度が計量できる。僕の読書速度は、たぶん、速いほうだと思うのですが、時間に換算すれば 1分から 1分 30秒の間に、2 ページ (2,000字) ほど読破できます。だから、読書計画を立てるときには、読書時間を 1時間とすれば、40 ページ から 60 ページ の範囲を対象にします。

 次に、以下のような読書計画を用意します。
 以下に例示する計画表は、僕が実際に使っている読書計画表です。
 (弊社の ホームページ のなかで以前に綴った 「年間読書計画」 とはべつに、研究 テーマ があれば、研究 テーマ ごとの読書計画 (文献読破計画) を作成します。)

 

        ▼ 読書計画
    ─── ───────────────────────────── ────────
     日               テーマ                 仕事/家庭
    ─── ───────────────────────────── ────────
     1月         会計学            経営学
    ─── ─ ───────────── ─ ─────────── ────────
     09                                H 社、10:00〜
    ─── ─ ───────────── ─ ─────────── ────────
     10  ○ 伊藤/現代会計(43)     △ 藤芳/基本経営学(/E)  会食飲酒、18:00〜
    ─── ─ ───────────── ─ ─────────── ────────
     11  ○ 協会/マーケティング(66)
    ─── ─ ───────────── ─ ─────────── ────────
     12    以下、省略
    ─── ─ ───────────── ─ ─────────── ────────



 (1) 読書計画は、まず、仕事の欄を記述してください
    仕事があれば、そうそう、読書に時間を割くことができない。
    仕事のほかにも、「家庭の行事」 や 「つきあい」 なども記述してください
 (2) 次に、1日のなかで、読書に振り当てることができる時間を計算します。たとえば、3時間とか 6時間とか。
 (3) 読むべき書物を記入して、(計算した読書時間内に読破できる) 読む量 (ページ 数) を記述して下さい
    読書計画表のなかで、書物のあとに ( ) 内に記されている数値が読む量 (ページ の合計数) です。
 (4) 読書の進捗を以下のように管理します。
   (4)-1 ○ 計画通りに読破できた。
   (4)-2 △ 計画量に比べて読破できた量が少ない。
   (4)-3 × 読むことができなかった。
 (5) 計画は、まいにち、見直して、ページ 数を調整してください

 ちなみに、計画表のなかにある (/E) という記述は、「to the end」 という意味です。読書対象となっている範囲が 100 ページ 程度で、それを読めば最後まで読破することになる、という意味です。

 以上のように読書を管理すれば、迷わずに読書に専念できるでしょう。

 次に、読書とは べつに統計資料を多量に参照しなければならないことが多いのですが、われわれ シロート が入手できる統計情報は 「二次 データ」 でしかないのはやむを得ない点でしょうね。
 統計資料を入手するには、弊社 ホームページ の 「リンク 集」 のなかに用意してある 「企業・統計・法律」 情報を上手に使ってください。それらは僕自身が使っている統計資料源ですが、さらに、「G-Search」 のような商用 データベース と契約していれば、われわれ シロート が欲しいと思う資料は、ほとんど入手することができます。

 入門書や概説書ばかりを読んでいないで、(「二次 データ」 ではあるけれど) 数値を把握しておかなければ、経営手法を実際に使うときには、皆目、役に立たない。たとえば、経営分析 (財務諸表分析) の比率計算を知っているとしても、企業の アニュアル・レポート を一回も観たことがない、というのでは本末転倒でしょう。
 静的な読書と動的な資料収集を併用しながら、調査を進めてください。□

 



[ 補遺 ] (2007年 4月 1日)

 5年前に綴られた本 エッセー を読み返して、当時、綴るべきだったけれど、どうしてか、綴っていない点を気づきました。それは、読書計画表の対象となっている書物として、哲学・文学を除外しているという点です。つまり、哲学・文学の書物は、読書計画表のなかには入れていないということです。言い換えれば、それらの書物は、いついつまでに読み終えなければならないという期限を付していないということです。それらの書物は、年間計画表のなかに記入されても、読書計画表のなかには示されないということです。
 その理由は、私にとって、哲学・文学の書物は 「生に竢 (ま) つ」 という態度を学びの根底にしているからです。私にとって、哲学・文学の書物は、「学ンデ知ル」 ための知識源ではなくて、「思ツテ得ル」 しかない書物です。言い換えれば、哲学・文学の書物を読むということを、私は、「生身の」 ひと との つきあい と同じであると思っているのです。

 専修と雑修 (ぞうしゆ) という言いかたをすれば、私の読書の しかた は、本 ホームページ の 「読書案内」 を ご覧いただければ、雑修であることが一目で知れるでしょう。私の気質として、1つの領域で ジッとしていることが苦手です。したがって、私は、文字通り、専門家ではない。一般の読書子として、乱読しているにすぎない。乱読しているにすぎないと云っても、私は、それを恥じている訳ではない。荻生狙徠は、以下のように言っています。

      学問のありかたは、根本の大きな点を確立しさえすれば、あとは博 (ひろ) いことを
     貴び、雑になることをいとわず、疑わしいことは そのまま残しておくようにして、萌芽の
     出るのを待てばよいのである。(参考 1)

      それゆえ、私の門人どもへの教えもみなそのとおりにしております。ただし、私はそれ
     までに、できるだけ広く書物を見ておいたので、右のように経書の本文のみを眺めて納得
     ができたのです。広く、多くの書物を読まないと、いつまでも朱子の注釈で読みとった古い
     考えから離れることができません。広く書物を見るということは経書の勉強には関係ない
     ことのようにお思いでしょうが、無用の用ということがあって、思わぬところに有益なこと
     があるものです。(参考 2)

      何なりとも、ただ諸国を遍歴されて、長生きをして古今のことを見渡すようなつもりで、
     決して理屈をつけず、ひたすら事実のみをお読みとりになれば、どれを読まれても大益を
     得られることと存じます。(参考 3)

 私は、狙徠が述べている やりかた と同じ やりかた をしています。
 多読するとなれば、われわれは、一日の限られた時間のなかで読書するしかないのだから、(私にとって、哲学・文学の読書を例外として、) 読書計画表を立てて、計画的に読み進めるしかないでしょう。

 資料は、一次資料が最良なのですが、一次資料を多読することは、一般の読書子にとって、まず、無理でしょうね。たとえば、さきほど、私が引用した荻生狙徠の文は、翻訳文 (現代語訳) です。狙徠は、原典を直に読むことを薦めていますが、私は、現代語を読んでから、原文を参照しているので、狙徠に怒られるでしょうね (笑)。

 専門家と シロート とのちがいの 1つは、一次資料を計らうことができるかどうかでしょう。シロート が、書物を博く読んで、それらの書物の知識を巧みにまとめたとしても、専門家にはなれないということです。われわれ シロート は、専門家が研究して示した 「注釈」 を頼りにして読むしかない。専門家は、その性質として、専修を前提にしています。たとえば、古文では、1つの語の意味を確実にするために、専門家は、原資料を読み込んで、かつ、原資料と同時代の作品および原資料に先立つ時代の作品を調査しなければならない。そういう調査を われわれ シロート はできないでしょう。
 ただ、われわれ シロート は、専門家が研究した実りを味わうことができます。そして、われわれ シロート が博く読書するということは、さまざまな領域の果物を味わうということであって、それらの果物と常識を前提にして、事態の全貌を感知できるということでしょうね。雑修 (多読) のなかで得た知識と、みずからの仕事のなかで体得した やりかた を駆使して、人生を総体的に観るというのが われわれ シロート の 「強み」 でしょう。

 
(参考 1) 「荻生狙徠」、尾藤正英 責任編集、中公 バックス 日本の名著、中央公論社、
    95 ページ。「学則」 から引用した訳文は、前野直彬 氏の訳文である。

(参考 2) 「荻生狙徠」、尾藤正英 責任編集、中公 バックス 日本の名著、中央公論社、
    349 ページ。「答問書」 から引用した訳文は、中野三敏 氏の訳文である。

(参考 3) 「荻生狙徠」、尾藤正英 責任編集、中公 バックス 日本の名著、中央公論社、
    304 ページ。「答問書」 から引用した訳文は、中野三敏 氏の訳文である。




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  佐藤正美の問わず語り