2004年 9月 1日 作成 読書のしかた (次に読む書物の探しかた) >> 目次 (テーマ ごと)
2009年 9月16日 補遺  


 
 TH さん、きょうは、「次に読む書物の探しかた」 について考えてみましょう。

 
興味を抱いた概念 (あるいは、キーワード) を、3つ、書き出す。

 こまかなことばかりに気を取られて、全体像を見失ってしまうことを非難して、「木を観て森を見ない」という言いかたをしますが、逆に、「森を見て木を観ない」という人たちも多いようです。つまり、大まかな全体像を感知しているけれど、詳細な詰めができていない、という人たちを多く観ます。

 入門書ばかり読んで、研究文献を読まなければ、「森を見て木を観ない」 状態に陥ってしまいます。なんらかの概念・技術を、はじめて学習する際には、入門書を、数冊、読んで、大まかに全体像を知ることは大切なことなのですが、概念・技術を実地に使うようになるためには、さらに、こまやかに検討しなければならないでしょうね。とすれば、入門書を起点にして、さらなる読書を積むことになります。さらなる読書を続けるには、次に読む書物を探さなければならない。

 入門書を、数冊、読んだら、以下の 2点を書き記してください。

 (1) 興味を抱いた概念 (あるいは、キーワード) を、3つ、列挙してみる。
 (2) 理解できなかった概念 (あるいは、キーワード) を、3つ、列挙してみてください。

 以上の 2点が、あなたが、これから、調べなければならない対象です。
 興味を抱いた概念と理解できなかった概念のどちらを、さきに調べるか、といえば、興味を抱いた概念のほうです。理解できなかった概念は、いくつかの辞書を調べて、それでも、理解できなかったら、とりあえず、うっちゃっておいても良いと思います──前回 (338 ページ) 引用した本居宣長の ことば を思い出してください。

 
興味を抱いた概念 (あるいは、キーワード) を、辞書で調べる。
  調べる辞書として、概念を提示した人物や参考文献が記載されている辞書を選ぶ。

 さて、興味を抱いた概念も、いくつかの辞書を調べてください。辞書は、(携帯用の用語辞典ではなくて、) 専門的な大型の辞書を使います──そういう大型の辞書を、おそらく、家のなかに所蔵していないでしょうから、図書館に出向いて調べてください。ちなみに、興味を抱いている学問領域に関して、大型の (一冊版形の) 辞典くらいは、家に所蔵しておけば良いでしょう。たとえば、私が所属している辞書は、「読書案内」 の 「テーマ ごとの目次」 を参照してください。

 調べるための辞書を選ぶ コツ は、まず、いくつかの辞書を、ざっと、ページ をめくりながら、その概念を最初に提示した人物や、その概念を改良した人物が記述されているかどうか、参考文献が記載されているかどうか、という点を調べます。大型の専門辞書には、たいがい、そういう人物や読むべき参考文献が記載されています。
 したがって、次に読む書物は、そういう人物の著作や参考文献です。
 さらに、いま、読んでいる書物のなかで、引用されている人物・参考文献も、次に読む書物の候補です。

 そういうふうにして、「芋蔓式に」 書物を探してください

 



[ 読みかた ] (2009年 9月16日)

 「芋蔓式に」 FOR (Frame of Reference) を拡大してゆく やりかた──知識を体系的に習得する やりかた── の アナロジー として、数学の 「閉包、特徴関数、外点」 を使って かつて 説明しましたので、読んでみてください [ 本 ホームページ 330 ページ ]。

 「次に読む書物」 を ウェブ で探すことは、入門段階ではやらないほうがいいでしょう。ウェブ に アップロード されている書店の ホームページ では、「○○ を読んだひとは、以下の書物も読んでいます」 というような 「呼び水」 的広告を出していますが、私の著作に関して その広告を観るかぎりでは、関連書物は的外れなので (笑)、読書案内としては信用できないと私は思っています。「次に読む書物」 を探すには、本 エッセー で綴ったように、信頼できる学術書・専門辞典を拠り所にするのがいいでしょうね。

 私が哲学を学習したときには、「次に読む書物」 は、ウィトゲンシュタイン 氏の著作を起点にして、次のように 「芋蔓式に」 拡大してゆきました。

 ウィトゲンシュタイン → ゲーデル → タルスキー → カルナップ
      |
      ├────→ フレーゲ → ラッセル → ホワイトヘッド
      |
      └────→ クワイン → デイヴィドソン

 今振り返ってみれば、これらの 「芋蔓式に」 辿った道は 「基本道」 を そのまま歩いたことがわかるのですが、哲学を学習しはじめた頃には、哲学の シロート である私には、皆目、当途 (あてど) がなかった。そのために、じぶんが読んでいる書物を起点にして、「次に読む書物」 を (本文で記した やりかた で) 「芋蔓式に」 読み進めるしかなかったのですが──そして、その進みかたが的外れではないか という不安もあったのですが──、「興味を抱いた概念」 「理解できなかった概念」 を寄る辺 (よるべ) として読み進めてきたら、振り返ってみれば、「基本道」 を歩いていた、という次第です。したがって、私は、本文で述べた やりかた に信を置いていますし、いまも、そういう やりかた で読書を進めています。





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  佐藤正美の問わず語り