能・狂言 >> 目次 (テーマごと)


 今回は、能・狂言を紹介する。

 小生は、毎月、国立能楽堂に行って、能・狂言を観ている。
 毎年、4月には、靖国神社奉納能 (いわゆる夜桜能・薪能) を観ることを行事にしている。
 (国文学者のなかには、謡曲を習っている人々もいる。)
 趣味が高じて、小生は能面 (小面) も所蔵している。

 小生が能・狂言に興味を抱いた理由は、はっきりと思い出せない。
 世阿弥の能が 「禅」 に通じていることに共鳴したのかもしれない。

 小生が読んでいる能・狂言に関する文献を以下に紹介するが、文献を読んでも、能・狂言を理解することにはならない、と思う。能・狂言を実際に観に行っていただきたい。観てから文献を読めばよい。

 はじめて、能を観れば、謡いや舞の テンポ に ノル ことができないので、おそらく、途中で居眠りをするでしょう(笑)。
 最初は、それでも、いいと思う。とにもかくにも、能は実際の舞台を観てほしい

 小生が京都の寺院を訪れて仏像を観ているとき、仏像を観ないで、仏像を解説した パンフレット ばかりを読んでいた集団に遭遇したことがあるが、「パンフレット を閉じて、どうか、本物の仏像を観てください」 と思ったことがある。
 靖国神社や国立能楽堂では、(およそ、能を頭でしか理解していない人々が増えたのか) 役者が渾身の舞台を終えて、いまだ、橋渡りを歩いている途中で、平気で席を立つ観客が、最近、多くなってきたのは唖然とする。
 舞台が終わってから拍手をするのもいいけれど、「(すべてが終わって) 空になった舞台」 を静かに味わいたい。

 なにも知らないまま能を観に行くのは、どうしても不安である、と思っているのなら、以下の書物をお薦めします。

  - お能の見方、白洲正子・吉越立雄、新潮社 (とんぼの本)

 この書物は、創元選書に収録されていた白洲正子さんの以下の著作を復刻した本です。

  - お能の見方、白洲正子、東京創元社 (創元選書 260)

 白洲正子さんが著した書物は、どれでもいいですから、お薦めします。
 そして、自らの眼で能を観てください。

 能は 「本説」--能を作るとき、典拠となる物語や詩などの本文--を大切にしています。
 能を観てから、本説を調べるために、古典文学を勉強するのも一興でしょう。

 なお、文中、(★) は、「お薦め」 の意味です。





[ 読みかた ] (2006年12月16日)

 本文を綴った日付が 2002年 6月30日ですから、今振り返ってみれば、この頃から今に至るまで、私は、能・狂言の舞台に足を運ぶことがなかった。私は、能面を所蔵するほどに 能楽を好きなのですが、舞台に足を運ばなくなった理由の 1つは、この エッセー を綴った 2002年には、父の余命がわずかであることを覚悟していた時期であり--父は、2002年 9月 6日に他界しましたが--、父の住んでいた故郷 (富山県) と埼玉県の拙宅を いくどか往復して、金銭的にも精神的にも、「能」 の舞台を観る ゆとり がなかった。いまは、愚息たち (三人) の教育費--および、かれらの携帯電話代 (!)--が嵩んで、私の窮乏な財布を圧迫しています [ 愚息三人と私の四人が使う携帯電話代合計は、ダブル 定額を適用して安くしても、基本料金をふくめたら、3万円から 4万円ほどになるので、国立能楽堂の プログラム 代にすれば、6回ほどの観劇料が ふいになってしまいます (苦笑)]。高尚な趣味の話のなかに、世帯じみた話をもちこんで申し訳ない (笑)。

 実際の舞台に足を運ぶ ゆとり がないので、いちど、テレビ で観たのですが、画面で観る舞・謡いは腑抜けのように、実際の舞台を観たときに伝わってきた緊迫がないので、がっかりしました。クラシック 音楽の演奏で云えば、生演奏 (実演) と CD に録音された演奏とのあいだには埋めきれない隔たりがありますが、「能」 の場合には、実際の舞台と録画では、クラシック 音楽に観られる隔たりに比べて、もっと 埋めきれない距離があるようです。
 「能」 は、ぜひとも、実際の舞台を観て下さい。

 能本の数は、約 2000番が現存するそうですが、実際に上演されるのは 200番から 250番ほどだと云われています。それらのなかで、世間で人気があって、たびたび、上演される曲があります。それらの 「定番」 のなかで、私は、「砧」 と 「隅田川」 と 「敦盛」 が好きです。「砧」 を観たときも、「隅田川」 を観たときも、私の眼には涙が溢れていました。

 「能」 は古典劇ですから、一見では、難しいように感じられますが、「能 (夢幻能)」 は、筋立てが、ほぼ きまっていて、いちど、それを掴めば、演目がちがっても、話の筋を追うことができるし、舞にも 「型」 があるので、見た目ほど、難しくないと思います。ただ、謡曲は、古語に抑揚緩急を付けてうたう詞章なので、舞台を観る前に、「謡曲集」 を読んで詞章を理解していなければ、聞き取りにくいのは勿論です。曲の筋立てがわからなければ、舞台を観ても、退屈でしょうね。

 実際の舞台を観る前に、「花伝書」 (世阿弥) を読んでも理解できないでしょうし、実際の舞台を観たとしても、数多くの舞台を観なければ、理解できないでしょうね。そして、われわれ シロート が、たとえ、数多くの舞台を観たとしても、「花伝書」 に綴られていることを理解するのは無理でしょうね。われわれ シロート は、せいぜい、「へー、『能』 は、奥が深いんだなあ」 くらいの賛嘆で終わるでしょう。でも、実際の舞台を観て、ドキドキ した興奮を覚えたとか、切なくて泣いたという経験があれば、それで良いのではないでしょうか。そういう経験をすれば、もう、「能」 の虜になっているでしょうから、「能」 に関する書物を次第に集めはじめるでしょう。

 





 ▼ [ 入門編 ]

 ● カラーブックス 能 (鑑賞のために)、丸岡大二・吉越立雄 共著、保育社 [ 文庫本、写真豊富 ]

 ● カラーブックス 能面、中西 通・今駒清規 共著、保育社 [ 文庫本、写真豊富 ]

 ● 能の四季、森田拾史郎 (写真)・児玉 信(解説)、京都書院 アーツコレクション 58 [ 文庫本、写真豊富 ]

 ● 能面入門、金春信高・増田正造・北澤三次郎、平凡社 (★) [ 写真豊富 ]

 ● 能の鑑賞講座 (一、二、三)、三宅 襄 著、檜書店

 ● 能を彩る 扇の世界、檜書店 [ 写真豊富 ]

 ● 能を彩る 文様の世界、野村四郎・北村哲郎 共著、檜書店 [ 写真豊富 ]

 ● 能楽入門 (1) 初めての能・狂言、山崎有一郎 監修・三浦裕子 (文)、小学館 [ 写真豊富 ]

 ● 能楽入門 (2) 能の匠たち (その技と名品)、山崎有一郎 監修・明石和美 (文)、小学館 [ 写真豊富 ]

 ● 婦人画報 あるすぶっくす 笑いの芸術・狂言 (よくわかる鑑賞の手引き)、婦人画報社

 ● 能の デザイン 図典、中森晶三 (監修・文)・岩田アキラ (写真)、東方出版 [ 写真豊富 ]

 ● 能百十番、増田正造・三上文規 (写真)、平凡社 (コロナ-ブックス 18) [ 写真豊富 ]

 ● 能とは何か (能芸術の表現の本質)、川瀬一馬、講談社文庫 (★)

 ● A Guide to NO^、O'Neill P.G.、檜書店 [ 文庫本、英文 ]

 ● A Guide to Kyogen、Kenny D.、檜書店 [ 文庫本、英文 ]

 ● マンガ 能百番、渡辺睦子 (作画)・増田正造 (解説)、平凡社 (★)

 ● 能がわかる本 (はじめて能を観るひとのために)、夕崎 麗 著、金園社 (★)

 ● 能楽 ハンドブック (改訂版)、戸井田道三 監修、小林保治 編、三省堂

 ● お能の見方、白洲正子、東京創元社 (創元選書 260)

 ● お能の見方、白洲正子・吉越立雄、新潮社 (とんぼの本) (★) [ 上述の本の復刻版 ]

 ● 現代語訳 花傳書、川瀬一馬 著、わんや書店 (★)

 ● 岩波講座 能・狂言(Z 狂言鑑賞案内)、小山弘志 編、岩波書店

 




 ▼ [ 中級編 ]

 ● 世阿彌自筆傳書集、川瀬一馬 校、わんや書店 (★)

 ● 頭註 世阿彌二十三部集、川瀬一馬 校、能楽社 (★)

 ● 世阿彌十六部集評釋 (上・下)、能勢朝次 著、岩波書店 (★)

 ● 風姿花伝詳解、金井清光 著、明治書院 (★)

 ● 花鏡 謡秘伝鈔 (演劇資料選書)、早稲田大学演劇博物館 編、飛島書房 (★)

 ● 歌論集 能楽論集 (日本古典文学大系 65)、久松潜一・西尾 実 校注、岩波書店 (★)

 ● 謡曲集 (上・下) (日本古典文学大系 40・41)、横道萬里雄・表 章 校注、岩波書店 (★)

 ● 謡曲集 (上・中・下) (新潮日本古典集成)、伊藤正義 校注、新潮社

 ● 謡曲集 (現代語訳 日本古典文学全集)、田中 允、河出書房 (★)

 ● 狂言集 (上・下) (日本古典文学大系 42・43)、小山弘志 校注、岩波書店 (★)

 ● 能・狂言 (上・中・下)、笹野 堅 校訂、岩波文庫 (★)

 ● 舞正語磨 (稀書復刊能楽史料 7)、表 章 編、わんや書店 (★)

 ● 世阿弥集 (日本の思想 8)、小西甚一 編集、筑摩書房 (★)

 ● 世阿弥芸術論集 (新潮日本古典集成)、田中 裕 校注、新潮社

 ● 世阿弥 (日本の名著 10)、中央公論社

 ● 狂言総覧 (内容・構想・演出)、安藤常次郎・三宅藤九郎・古川 久・小林 責、能楽書林 (★)

 ● 一子相伝之秘書、雲形本研究会 編、八木書店

 ● Japanese No^ Doramas, translated by Royall Tyler, PENGUIN CLASSICS.

 ● The No^ Plays of Japan, by Arthur Waley, TUTTLE.

 




 ▼ [ 解説書 ]

 ● 世阿弥 (人と芸術)、西 一祥 著、桜楓社

 ● 能楽論研究 (塙選書 10)、小西甚一 著、塙書房 (★)

 ● 謡曲基歌集、門脇達祐、リコー 三愛 サービス (★)

 ● 能の平家物語、秦 恒平 (文)・堀上 謙 (写真)、朝日 ソノラマ

 ● 能・狂言の音楽入門 (音楽選書)、三浦裕子、音楽之友社

 ● 能--本説と展開、小林 責・増田正造・羽田 昶 編、桜楓社 (★)

 ● 能面 (美・形・用)、中村保雄 著、河原書店

 




 ▼ [ 辞典・事典 ]

 ● 世阿弥伝書用語索引 (笠間索引叢刊 86)、中村 格 編、笠間書院 (★)

 ● 狂言辞典 (語彙編)、古川 久 編、東京堂出版 (★)

 ● 能・狂言 事典、西野春雄・羽田 昶 編集委員、平凡社 (★)

 ● 能・狂言 図典、小林保治・森田拾史郎 編、小学館

 ● 能謡語彙、観世流改訂本刊行会 編、謡曲界発行所 (★)

 ● 能楽謡曲 大辞典、正田章次郎、吉川弘文館 (★)

 ● 岩波講座 能・狂言 (別巻) 能楽図説、横道萬里雄 編、岩波書店

 ● 邦楽百科辞典 [ 雅楽から民謡まで ]、吉川英史 監修、音楽之友社

 




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