和歌論 >> 目次 (テーマ ごと)



 以下に掲載する書物は、和歌を、単独に 「研究」 しようとして所蔵しているのではなくて、日本人の 「感じかた・考えかた」 を知りたいために所蔵している。
 それが目的なので、文献を、研究のために、網羅的に収集しているのではないことを御了承ください。

 なお、和歌のなかで、独立した カテゴリー として扱った書物 (万葉集、古今集、新古今集) は、それぞれの ページ を参照していただければ幸いです。



[ 読みかた ] (2008年 8月16日)

 本 ページ の テーマ を 「和歌論」 としていますが、和歌そのもの と和歌に関する歌論は、べつの テーマ です。
 和歌そのもの については、われわれ シロート は、「國歌大觀 歌集」 (あるいは、「學燈社創業四十周年記念出版 日本名歌集成」) を蔵書していればいいでしょう。和歌は中世に成熟した形式で、明治時代に至るまで、ほかの歌形式は現れなかったようです──ただ、中世において連歌がでて、連歌が次第に俳諧へと変形していきました。

 中世の歌人系統を調べてみたら、藤原俊成 (としなり)・藤原定家 (さだいえ) が後鳥羽院・摂関家の支持を得て 「御子左家 (みこひだりけ)」 として中心になっていたようです。「御子左家」 は、俊成・定家・為家と続いて、歌の家として地位を確立しましたが、為家が亡くなったあとは、以下の三家に分裂しました。

 (1) 「二条」 (二条為氏、二条為世ら)
 (2) 「京極」 (京極為教、京極為兼ら)
 (3) 「冷泉」 (冷泉為相ら)

 「御子左家」 のほかに、「六条藤家 (とうけ)」 (藤原隆経、藤原顕輔、藤原有家ら) と 「六条源家 (げんけ)」 (源経信、源俊頼、源俊恵ら) もありました。ちなみに、後鳥羽院は 「御子左家」 の流派に属して、藤原俊成の弟子です。兼好は、(「御子左家」 からでた) 「二条家」 の流派で、藤原為世の弟子です。正徹は 「冷泉家」 の流派で、鴨長明は 「六条源家」 の流派で、源俊恵の弟子です。なお、「徒然草」 が兼好の著述であると最初に言った人物は、室町時代の正徹で、正徹が書写し伝存する写本が、いわゆる 「正徹本」 と呼ばれています。

 「二条」 「京極」 および 「冷泉」 が対立して 「勅撰集」 の撰者を競って、、時の権力と結びついて 「勅撰集」 が乱発されたとのこと (ちなみに、「勅撰集」 は、21 代集までに至っています)。「二条」 「京極」 および 「冷泉」 の それぞれの歌風が どのような趣なのかを述べるほどに私は和歌に精通している訳ではないのですが、専門家によれば、「家の対立は和歌観の対立に昇華せず、和歌は形式化して衰退した」 とのこと。そして、和歌の極致は、新古今和歌集で示された 「幽玄・有心・余情・妖艶」 とのこと。(新古今和歌集については、267 ページ を参照して下さい。)

 代表的な歌論には、「古来風躰抄」 (俊成 作)、「近代秀歌」 「詠歌大概」 (いずれも 定家 作)、「後鳥羽院御口伝」 (後鳥羽院 作) や 「無名抄」 (鴨長明 作) などが遺っています。俊成は 「幽玄」 を歌の理想とし、定家は 「有心」 を唱えました。

 座に集う二人以上の作者が、短歌の長句 (五七五) と短句 (七七) を交互に詠みあって、いっしょに作る詩を 「連歌」 と云います。連歌は、当初、即興詩 (無心) でしたが、和歌の美的観念を取り込んで、有心連歌として文芸のひとつの形になりました。いっぽうで、(「能」 に対する 「狂言」 のように、) 滑稽さを詠った俳諧連歌も興りました。近世になって、俳諧連歌は、有心連歌を凌いで流行しました。ちなみに、俳諧連歌を連歌と区別して 「連句」 と云います。

 「俳諧」 とは、そもそも、「滑稽」 の意味だったのですが、「連句」 と (「連句」 から独立して詠まれた) 「発句 (俳句)」 や俳文などを総称して 「俳諧」 と云います。松永貞徳 (1624〜1644) は、俳諧を連歌から独立させて 「貞門派」 を確立しました──ちなみに、北村季吟は門人です──が、作歌規則が煩雑になって次第に飽きられてきて、西山宗因 (1661〜1673) は、「貞門派」 俳諧を批判して、俗語・漢語を自由に使った作風の 「談林派」 を興しました──ちなみに、井原西鶴は門人です。その後、(「貞門派」 「談林派」 の俳諧を学んだ) 松尾芭蕉が、俗のなかに風雅を込めた 「蕉風」 を確立します。(松尾芭蕉については、283 ページ を参照して下さい。)





 ▼ [ 史料、資料 ]

 ● 國歌大觀 歌集、松下大三郎・渡邊文雄 編纂、角川書店刊

 ● 學燈社創業四十周年記念出版 日本名歌集成、秋山 虔 ほか、學燈社

 ● 日本古典文学全集 25 神楽歌 催馬楽 梁塵秘抄 閑吟集、臼田甚五郎・新間進一、小学館

 ● 王朝秀歌選、樋口芳麻呂 校注、岩波 クラシックス 51

 ● 平安諸家集 天理図書館善本叢書 4、八木書店

 ● 玉葉和歌集 正中二年奥書系統本、三弥井書店

 ● 新日本古典文学体系 別巻 八代集総索引、久保田 淳 監修、岩波書店

 




 ▼ [ 概説書、解説書 ]

 ● 日本詩歌概論、久松潜一 著、東京堂

 ● 中世和歌史論、久松潜一 著、塙書房

 ● 改訂 日本歌謡史、高野辰之 著、春秋社

 ● 歌枕、奥村恒哉、平凡社選書 52

 ● 詩の日本語、大岡 信、中公文庫

 ● 百人一首増註、加藤盤斎 著、青木賢豪 解説、八坂書房

 



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