2004年10月 1日 作成 「基準編第14章 (記号の操作に慣れるために)」 を読む >> 目次に もどる
2007年 7月 1日 更新  




[ 第 13章は、練習問題なので--しかも、ソリューション の試案を提示しているので--、割愛します。 ]

 
 第 14章は、拙著 「論考」 を綴るために読んだ参考文献を記載しています。記載されている文献を、どのように読むか、という点は、そのまま、(論理学・数学基礎論・哲学に関して、) 学習のしかたを示すことにもなるので、それぞれの節を、順次、読み下していきます。まず、「14.1 記号の操作に慣れるために」 を読み下しましょう。なお、参考文献のなかで、ぜひとも、読んでほしい文献のみを読み下します。

 データベース 設計であれ、オブジェクト 指向であれ、きちんと理解しようとすれば、数学 (論理と集合) の技術を習得していなければならない。つまり、数学的記号を操作できなければならない--あるいは、少なくとも、文献のなかに記述されている記号列を読むことができなければならない。

 いまから、数学基礎論を学習するなら、まず、以下に記載する書物を読んでください。

 ● 「数学 ビギナーズマニュアル」、佐藤文広、日本評論社、1994年

 この書物は、「14. 1. 4 数学の用語法と数の概念に慣れるために」 のなかで、推薦しているので、記述の順が、前後 逆になってしまいますが、数学基礎論を初めて学習するひとは、ほかの書物を読む前に、まず、この書物を読んだほうが良いでしょう。この書物を通読しなくても良い。第 6章のみを読んでください。
 この書物は、以下のような、数学上の常識や基礎概念を教えてくれます。

 (1) 数式は、文と同じように、(式の) 終わりに、ピリオド を打つ。
 (2) 集合を メンバー とした集合を作ることができる。
 (3) 2つの集合が同じである (同値類) ということは、どういうことを云うのか。
 (4) 変項を指示する 「高々」 「任意の」 「一意的」 や 「well-defined」 は、どういう意味なのか。
  などなど。

 「数学 ビギナーズマニュアル」 を読んで基礎概念を習得したら、以下に記載する書物を読んでください。

 ● 「Q&A 数学基礎論入門」、久馬栄道、共立出版、1995年

 この書物は、数学を学習する機会が少なかった (あるいは、ほとんど、なかった) 文科系学生向けの入門書です。数学基礎論を初めて学習するひと--数式を観たら アレルギー を覚えるひと--が、数式 (記号) の操作を覚えるには、懇切な指導書だ、と思う。この書物を読み終えたならば、(数学の プロ 向けの文献は べつとして、) 一般向けの数学書のなかに綴られている数式を読むことができるようになっているはずです。

 以上の 2冊を読んで、(数学基礎論の)「登山道具」 の使いかたを習得したならば、いよいよ、数学基礎論の五合目 (登山開始地点) まで--富士山の五合目をもじっていますが--、歩いて登るのではなくて、バス などの交通手段を活用しましょう。以下の 2冊を読んでください。

 ● 「数学・基礎の基礎」、廣瀬 健、海鳴社、1996年
 ● 「記号論理入門」、前原昭二、日本評論社、1967年

 「数学・基礎の基礎」 は、数学史の流れに沿って、数学基礎論の技術を、網羅的に (まとめて) 記述してあります。「記号論理入門」 は、テーマ ごとに--たとえば、「真理値表」 「トートロジー」 「同値」 「ド・モルガンの法則」 など--、まとめて記述してあります。ただし、この 2冊は、どちらかいっぽうを選んで読むのではなくて、2冊とも読んでください

 数学基礎論の基礎を習得するには、以上の 4冊を読んでおけば大丈夫でしょう。ただし、4冊を読んでも、五合目の 「登山口 (登山する起点)」 にいて、登山準備が整った、ということです。
 なお、以上の 4冊を読んで、余力があるひとは--数学基礎論に対して興味を感じたひとは--、さらに、入念な登山準備として、以下の入門書も読んでおけば良いでしょう--ただし、以下の 2冊は、いずれも、「入門」 とか 「いざない」 と名を打っていますが、数学基礎論を初めて学習するひとが、最初に いきなり 読んで理解できる中身ではないので、前述した 4冊を読んで、数学基礎論に対して興味を覚えなかったひとは--数学基礎論とは、どういう体系なのか、という おおまかな理解以上の学習をしたいと思わないひとは--、読まなくても良い、と思う。

 ● 「数学基礎論入門」、前原昭二、朝倉書店、1977年
 ● 「数学基礎論へのいざない」、倉田令二朗、河合文化教育研究所、1995年

 

[ 補遺 ] (2007年 7月 1日)

 数学基礎論を専攻するために、私は、数学基礎論を学習した訳ではない。私が数学基礎論を学習した理由は、あくまで、TM (T字形 ER手法) を 「モデル の理論」 の観点に立って検討するためであった。したがって、私は、数学基礎論に対して シロート にすぎない。

 私は、数学基礎論を学習する以前にも、コッド 関係 モデル を理解するために、述語論理とか集合論を学習してきていたが、改めて、数学基礎論を学習した理由は、ひとつの モデル (コッド 関係 モデル) を理解するのみでは終わらないで、TM の体系が 或る程度 形を整えてきて、TM を モデル の観点から包括的に検討しなければならなくなったので、哲学・論理学・数学基礎論を参照項として包括的に学習しなければならないと感じたからである。

 したがって、本 エッセー で記載されている書物は、数学の シロート たる私が数学基礎論を体系だって初めから学習した書物なので、これから、数学基礎論を学習しようと計画している人たちの道標 (みちしるべ) になると思う。ちなみに、私は、数学基礎論を学習して良かったと思った点は、私が 19歳の頃から読みはじめて 「座右の書」 としていた ウィトゲンシュタイン の書物を いっそう 理解できるようになったという点を明示しておきたい。ウィトゲンシュタイン の書物は、それらのみを読んでいても--言い換えれば、数学基礎論を学習していなければ--理解できないのではないかと思う。実際、かれは、当初、「哲学探究」 の第一部として 「数学の基礎」 を充てようとしていたから。

 数学の専門家が数学基礎論を どのように学習するのかを私は想像できないが、私のような シロート が学習してきた軌跡を示せば、私同様に シロート たる人たちが数学基礎論を これから学習するには役立つでしょう。

 





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