2004年11月 1日 作成 「文献編第14章 (網羅的に学習するために)」 を読む >> 目次に もどる
2007年 8月 1日 更新  




 「論理 データベース 論考」のなかでは、以下の 2冊を記載しています。いずれの書物も絶版になっているのですが、(図書館で借りるか、古本店で探すかして、) ぜひとも、2冊とも読んでください。この 2冊は、「論理 データベース 論考」の体系を作る際、底本になった文献です。

 
 ● 「記号論理学 (上・下)」、ゲオルク・クラウス (門上秀叡 訳)、青木書店

 私は、古本店で、ほかの書物を探していたとき、この書物を、たまたま、目にしました。青木書店は、マルクス 主義系の書物を、専門的に出版しているので、私は、当初、この書物が、「(マルクス 主義の) bias」 を織り込んでいるのではないか と思って、購入することを躊躇った。というのは、私は、マルクス 主義を信じていないので。

 しかし、「論理学 (ロジック)」 は、社会思想を離れて、論理の形式を扱うのだから、資本主義も社会主義もないのであって、「(マルクス 主義の) bias」 を想像した私のほうが、先入観を抱いていた、という軽率な態度でした。

 この書物を、一応、購入したのですが、のちのち、本気になって読むとは思っていなかったので、本棚に積んで、忘れていました。たまたま、暇潰しのために、この書物を読んだら、のめり込みました。

 「論理 データベース 論考」の体系は、この書物の体系を底本にしています。この書物は、Logic を 5つの領域 (命題論理、述語論理、集合論、関係の論理、クラス 論理) として体系化しています。この書物は、記号論理学を網羅的に独習するには、最適の文献です。

 この書物では、弁証法も記述されていますが、私は、弁証法には興味がないので、読み飛ばしました。「関係の論理」 は、懇切丁寧に記述されています。入門書として、ぜひとも、読んでいただきたい 「超」 お薦めの書物です。

 
 ● 「現代数理論理学入門」、グロスリー, J.N. (田中尚夫 訳)、共立全書

 この書物も、入門書として、ぜひとも、読んでいただきたい 「超」 お薦めの文献です。

 本文の ページ 数は、わずか、120ページです--そして、(本文のほかに、) 60ページほど、翻訳者が、丁寧な注釈を施しています。本文では、まず、数理論理学 (記号論理学) を、歴史的に概観して、次に、以下の 4点を、コンパクト に まとめています。
 (1) 述語論理の完全性
 (2) モデル 理論
 (3) チューリング 計算機と帰納的関数
 (4) ゲーデル の不完全性定理

 以上の体系が示すように、この書物は、周知になっている理論を、コンパクト に まとめています。これらの テーマ は、それぞれ、入門向けとして、丁寧に記述すれば、1冊ずつの書物になるのですが、(歴史のなかで、それらの関連性を示して、まとめてあるので、) コンパクト であるけれど、入門向けとして、理解しやすい記述になっています。

 ただ、文中、レーヴァンハイム・スコーレム の 「コンパクト 定理」 は、記述が短いので、理解できないかもしれない。
 個々の理論を理解できなかったら、それらを丁寧に理解しないでも良いから、まず、歴史的流れのなかで、数理論理学の卓越した理論が、互いに、どのように関連しているのか--「モデル」 や 「帰納的関数」 が、どうして、論点 (大切な概念) になったのか--、という点を、おおまかに理解してください。
 歴史的な関連性を理解すれば、のちのち、それぞれの理論を丁寧に学習するときに役立ちます。 □

 



[ 補遺 ] (2007年 8月 1日)

 ここに記載した 2冊は、入門者が ロジック を網羅的に学習するための書物です。ロジック を網羅的に学習するという点から言えば、クラウス の書物が最適ですが、いっぽうで、モデル という観点に立って、モデル の考えかたを鳥瞰するために、グロスリー の書物を選びました。
 もし、ここに記載されている書物が 「簡単すぎる」 と思われるのであれば、以下の書物を読んで下さい。

  「数の体系と超準 モデル」、田中一之、裳華房。
  「ゲーデル と 20世紀の論理学 (1)〜 (4)」、田中一之 編、東京大学出版会。
   (小生は、(4) を、まだ、入手していない。)

 モデル を検討するときに中核となる定理が コンパクト 性定理 (レーヴェンアイム・スコーレム・タルスキー の定理) です。第一階の述語論理式で記述された 「構造」 を 「理想的な」 状態に拡大して検討して、再び、もとの 「構造」 にもどる やりかた が、数学上、使われますが--その やりかた を 「超準 モデル」 と云いますが--、その やりかた を実現しているのが コンパクト 性定理です。
 コンパクト 性定理を証明するには、以下の 2つの やりかた があるそうです。

 (1) ゲーデル の完全性定理を使う。
 (2) ウルトラ・プロダクト (超積、無限直積) を使う。

 私は、モデル を学習するとき、ゲーデル の完全性定理から入ったので、(1) のほうが理解しやすかったのですが、もし、数学を得意としているけれど、モデル を学習したことがないひとであれば、(2) のほうが理解しやすいでしょうね。

 コンパクト 性定理を使うのであれば、当然ながら、第一階の述語論理 (言い換えれば、完全性を示す・なんらかの公理系) を前提にしていないければならないでしょうね。言い換えれば、命題論理か述語論理を前提にしていなければならないということです。

 述語論理の恒真性は、トートロジー (命題論理の恒真) のうえに、さらに、量化公理を配慮しなければならないのですが、述語論理と命題論理をむすぶ 「基本定理」 として 「ケーニヒ の補題」 が大切な役割を演じています--実際、ゲーデルの 完全性定理では、この補題が 「暗黙のうちに」 使われています。「ゲーデル と 20世紀の論理学 (2)」 では、タブロー 法を使って、まず、命題論理の完全性定理を証明して、次に、タブロー 法を述語論理に拡張して、ヒルベルト の演繹体系を導入して、ゲーデル の完全性定理を証明しています。私は、個人的にいえば、この道筋 (完全性定理を使った証明) で コンパクト 性を考える (導入する) ほうが理解しやすいです。

 ロジック を数学へ応用するときに やっかいな問題点が量化記号 (∀ と ∃) の除去だそうです。私は、数学の専門家ではないので、その点 (量化記号除去の数学的応用) について、「へー、そうなんだ」 というほどの関心しかないのですが、たしかに、ヒルベルト・ベルナイス の 「数学の基礎」 を私が読んだときに抱いた感想は、(かれらほどの天才たちが) 量化記号を除去するために、「ε-定理」 を導入して、「階数」 を、いちいち、除去して変形して--除去可能性を論証して--、推論を有限回の手続きのなかで確立しようとしていた丁寧な・慎重な態度に対する驚嘆でした (シロート の私にしてみれば、「簡単に変形できる一般手続きがないのかしら」 という感想でした--笑、そして苦笑)。

 本 ページ で推薦した入門書には、コンパクト 性定理に関する記述が ほとんど ないので、もし、モデル を 「本格的に」 学習するのであれば、かならず、コンパクト 性定理を いちどは学習して下さい。

 





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