2001年 3月15日 作成 「個体と関係」 を扱う数学的手法 >> 目次 (テーマごと)
2006年 5月16日 補遺  



▼ 「個体と関係」 を扱う数学的手法 (テ゛ータ 解析に関する数学的手法を次回から連載して解説する。)
関係の論理 (aRb)
命題論理 述語論理
セット クラス


 1.「個体の認知」 を扱う数学的手法には、以下の 2つがある。

    (1) 命題論理 [「(1つの) 主語と (1つの) 述語」 を 1つの単位とする。 ]
    (2) 述語論理 [ 述語を判断規準にして、同じ述語 (性質) の個体をあつめる。]

 
 2. 個体のあつまりを扱う数学的な手法 (集合の概念) には、以下の 2つがある。

    (1) セット (set)
    (2) クラス (class)

 
 3. 「個体の関係」 (個体と個体との関係) を扱う数学的手法には、「関係の論理」 がある。

    (1) 個体と個体との関係 は、「aRb」 というふうに記述される。
    (2) 「aRb」 は、「a は b に対して関係 R にある」 と読む。
    (3) 「aRb」 は、「R (a, b)」 として記述され、関数 「f (x, y)」 と同値である。

 
 次回から、それぞれの数学的手法を説明する。□



[ 補遺 ] (2006年 5月16日)

 ここに示した図表は、おおまかな記述なので、「制限事項 (あるいは、前提)」 を説明しなければ誤解を導く危険性がありますね。以下に、説明を補足します。

 それぞれの数学的手法は、次回から、順次、述べるので、個々の手法について、詳細な中味を言及しないとしても、「命題論理」 を 「集合」 と関連していないのは、誤解を導いてしまうでしょうね。命題論理では、「主語-述語」 形式を 1つの単位として、それぞれの文のあいだに成立する logic の妥当性を検証する手段ですが、1つの文を 1つの変数 (あるいは、個体) とみなして、集合論に翻訳できます。本 ヘ゜ーシ゛ で、命題論理を集合概念と切り離している理由は、命題論理の一般的な検証手続きとして 「真理値表」 を使うことを前提にして、「(意味を前提にした) 外延 (つまり、集合) を作らない」 ことを前提にしています。

 1つの複文は、いくつかの単文に解体できます。たとえば、「佐藤正美は男であり、システム・エンシ゛ニア である」 という文 (複文) があれば、以下の 2つの単文 (「(1つの) 主語と (1つの) 述語」) に解体できます。
 (1) 佐藤正美は男である。
 (2) 佐藤正美は システム・エンシ゛ニア である。

 そして、(1) が 「真」 で、かつ、(2) が 「真」 であれば、全体として 「真」 になります。このようにして、複文の真偽は、複文を構成している それぞれの単文の真偽に移すことができます。もし、(1) と (2) のいずれかが偽であったり、あるいは、(1) と (2) のいずれも偽であれば、文全体は偽となります。真偽を判断するために作成する表を 「真理値表」 と云います。本 ヘ゜ーシ゛ で云う 「命題論理」 は、「1つの複文は、いくつかの単文に解体できる」 という考えかたを前提にして、「真理値表」 を真偽の検証手続きとする logic だと思って下さい。

 数学の 「モテ゛ル 理論」 では、或る言語を対象にして、文を個体として扱い、述語論理・集合論を使って、言語の無矛盾性・完全性を検証します。しかし、本 ヘ゜ーシ゛ で云う 「文」 は、命題論理の枠内で対象にしていると思って下さい。

 本 ヘ゜ーシ゛ では、述語論理を 「述語を判断規準にして、同じ述語 (性質) の個体をあつめる」 というふうに説明して、集合論に翻訳しています。本 ヘ゜ーシ゛ だけの説明では、述語論理が、あたかも、集合論のいちぶのような--あるいは、集合を作るための手段のような--像を与えてしまいますが、述語論理と集合論は、それぞれ、べつの学問領域です。ただし、述語論理を集合論に翻訳できます (その逆も真です)。そして、集合には、セット 概念と クラス 概念の 2つがあります。精確に言えば、セット 概念は、ZF の公理系 (ツェルメロ=フレンケル が示した公理系) を前提にして、クラス 概念は BG の公理系 (ヘ゛ルナイス=ケ゛ーテ゛ル の示した公理系) を前提にしています。この 2つの概念は、微妙に相違していますが、ZF で証明される式は BG でも証明できますし、BG で証明される式は ZF でも証明できます。
 「個体と、その性質 (言い換えれば、個体と集合)」 のみを対象にした述語論理を 「第一階の述語論理」 と云い、「集合を メンハ゛ー にして、さらに上位の集合を作ることを対象にした (言い換えれば、「性質の性質」) を対象にした」 述語論理を 「高階の述語論理」 と云います。

 「関係の論理」 は、現代では、述語論理のなかで扱われています。たとえば、2項関係では、「aRb」 を 「R (a, b)」 として考えて、2つの変数のあいだに成立する関数 [ f (x, y)] として翻訳できます。多項関係であれば、R (a1, a2,..., an) として考えることができます。命題論理では、個体のあいだに成立する 「関係」 を記述することができないので--たとえば、S1 is greater than S2 などを記述することができないので--、命題論理を使って個体を認知しても、「構造」 を記述するためには、「関係の論理」 を導入しなければならない。述語論理では、さきほど記述したように、「関係の論理」 は含まれています。

 テ゛ータヘ゛ース・ハ゜ラタ゛イム には、コット゛ 関係 モテ゛ル という完全性を証明された モテ゛ル があります。コット゛ 関係 モテ゛ル は、第一階の述語論理と セット 概念を使った モテ゛ル です。そして、TM (T字形 ER手法) は、コット゛ 関係 モテ゛ル に対して、「意味論」 を強く導入した モテ゛ル です。コット゛ 関係 モテ゛ル と TM を理解してもらうために、本 ホームヘ゜ーシ゛ で、数学の基礎知識を まとめた次第です。



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