かっては自分もひとりの子どもであったことを想い出す。　それがすべてだ。

　自分が美味いものを食わんでもいい。また、出世せんでもいいが、しかし、人の美味いものを食いたがる気持ち、出世したがる気持ちもわからんような アホ では タ゛メ だ。

　愛情に満ち溢れた心には悲しみもまた多い。

　明日は消えてゆくかもしれないささやかな喜びを慈しむべきである。

　財布の許すかぎり、身のまわりには金をかけるがいい、といって、けばけばしく飾りたてちゃいかん。
　凝るのはいいが、華美は禁物。たいてい着るもので人柄がわかるものだからな。　（「ハムレット」）

　驚異すべき秘密をこっそりと内にひそめた平凡さ、これが自然というものではなかろうか。

　生きる技術とは、ひとつの攻撃目標を選び、そこに力を集中することである。

　抹殺されたものに素早く眼をむけること、それが叡知というものである。

　わたしはこの世をただこの世として見ている。
　めいめいが何か一役ずつ演じなければならない舞台だと思っている。
　（ヘ゛ニス の商人）

　日常生活とは平凡きわまるものである。
　そのなかで徐々に発芽しているものを慈しみ育てることを忘れているのだ。

　狂熱や執拗な不安感を鎮めるには、自分の葬式の情景を思い描いてみるにかぎる。

　大都会では自然は失われてしまった。新鮮な空気も、緑の樹木も、鳥や虫の声も消滅しつつある。しかし真の悲劇は、多忙と過労によって、人間の人間らしい声も失われつつあるということだ。我々は「叫んで」生きている。

　生きるとは、夢みることだ。　賢明であるとは、.....こころよく夢みることだ。

　やがて死ぬけしきは見えず蝉の声

　あなたの夢が、一度も実現されなかったからといって、みじめに思ってはいけない。
　ほんとうにみじめなのは、一度も夢みたことのないひとである。

　歴史は二度とくりかえさない。しかし悪いことにかぎって幾たびもくりかえすように思われるのは、悪いことの可能性が人生には はるかに多いからだ。希望の予言よりも絶望の予言のほうが当たる。

　ひとは、ひとりぼっちで、死ぬであろう。だから、ひとりぼっちであるかのように、行為すべきである。

　しかし不安なので、何ものかの力をかりて「陶酔」しようとする。--これが病気になる前の病状である。

　おのれの苦悩を精細に観ることこそ、おのれの心を慰める手段である。

　智恵出でては偽あり。才能は煩悩の増長せるなり。

　どうかすると、この人生では、知恵の多いのが、ぜんぜん知恵がないよりも悪いことがしばしばある。

　ユカ゛ミ のとれたところを宗といい、ひっきょう空という。

　判断を焦ってはならない。一晩眠れば良い知恵がでる。

　愛について羞恥心なく語る人がいるように、死についても羞恥心なく語る人がいる。

　哲学における君の目的は何か？　蠅に蠅取り壺から脱出する路を示すことである。

　薬の濫用というが、実は「即効薬」を濫用しているのだ。
　何事においても即効性だけをのぞむこと、これが自然を失った現代人の病気である。

　ひとはどれほど隠遁して暮らしていようと、いつのまにか、債務者か債権者になっている。

　自由は山巓の空気に似ている。どちらも弱い者には堪えることはできない。

　神は、人間に頭脳をお授けなったとき、その中身まで保証しようとはされなかった。

　おたがいに意見を述べる会合に出席して、何も言わないと、あとで後悔する。言葉があまっているからである。
　何か言うと、あとで後悔する。言葉が足りないからである。

　幕を降ろせ。　喜劇は終わった。

　明快に言いあらわすことは大切だ。　しかし無神経なために明快である場合もある。

　　当時、私は、ぎっしりいっぱいの空虚であった （copiosa egestas）。

　　信じるほかに別の仔細なきなり。

　　魂の憂は骨を枯らす。

　　矜誇、愛慾、疑惑--あらゆる罪は三千年来、この三者から発している。同時に又恐らくはあらゆる徳も。

　　発想に富んだ豊かな頭脳をもつことは、決して危険なことではない。
　　幻影を神託と思ったり、自分の精神の痙攣を何か内面的な直観だと思ったりすることがなければ。

　　修行して ホ゛ツホ゛ツ さとりをひらくのではない。
　　修行が サトリ であり、この サトリ を行ずる -- 仏祖の坐禅を坐るのである。

　　うっかりすると仏法を階段のぼることのように思うてしまうが、そうじゃない。
　　いつでも今、一歩ふみだしたところが一行一切行、一切行一行である。

　　存在の様相はどれほどさまざまであっても、存在というものは一つである。

　　空手還郷でなければならぬ。空手でなければ、何ぞ クセ がついているわけだ。
　　仏法の極意は、「何の手形もなしに出発せい」というこっちゃ。

　　ああ、いかにも自己満足的な、不屈な、安価にあがなわれた善行の醜悪さよ。
　　それこそ、悪徳の露骨な醜悪さよりも、さらに いまわしきものではないか！

　　ほめられると、それが誤解からであっても、自分は理解されたと思いこむ。
　　けなされると、それが正しい理解からであっても、自分は誤解されたと思いこむ。

　　規則をもたぬ即興は美しくない。

　　意識に映った影を、また、蒸し返してみるのを妄想という。

　　アキレス が空間や時間のことを考えていては、亀の子を追い越すことはできない。

　　生きるとは執着することだ。　同時にこれが一切の迷いと悪の根源である。

　　すべてのものごとには終わりがある。したがって忍耐は成功をかちうる１つの手段である。

　　自分の耳に快い言葉の大半は、気休めの言葉である。