2001年 6月10日 作成 読書: 読む速度 >> 目次 (作成日順)
2006年 8月16日 補遺  



 TH さん、あなたは仕事が忙しくて、英語の本を読むためのまとまった時間的な余裕がないから、細切れの空き時間を効率的に使って、英文の百科事典の項目を読んだり、英文の(口語訳)聖書を少しづつ読み続けるようになりましたね。これらの読書は、思いの外に、負担がないから愉しいでしょう。

 きょうは、「読む速さ」(速読)について話しましょう 。

 6年ほど過去のことになりますが、SDIが社員を公募したとき、英語が試験科目にあったのですが、応募者のほとんどすべての人々は、異口同音に、「英語を読むことができるが、(英語を)しゃべることは苦手です」と言っていました。「読む」ことができれば、しゃべることはできる、と僕は思っているので、彼らの言っていたことが納得できなかったので--しかも、不思議 なことに、ほとんど、全員が、そう言っていたのですが--、彼らの「読む速度」を詳しく調査してみたら、せいぜい、1分間に 80語程度しか読んでいない。こんなに「ゆっくりとした」読みかたは、「読んでいる」とは言えない。

 (英語が母国語ではない)日本人でも、(まとまった量の英文を読むなら)「読む」速度は、最低、1分間に 250語程度はないと、英字新聞や NEWSWEEK 誌を「苦痛を感じないで」読むことはできないでしょう(80語程度の速度では、NEWSWEEK 誌の一冊を読み終わらないうちに、次週の冊が届いてしまうでしょう--笑)。

 英文を読む速度を高める(入門段階の)練習のやりかたを教えましょう。入門段階の訓練は、「日本のなかで出版されている英字新聞」を--入門段階では、NEWSWEEK 誌やTIME 誌を読むことは、金輪際、無理ですから--、以下のルールに従って読んでみて下さい。

 (1) 「社説」を読む。
 (2) 読み始めて4分間経ったら、読むことを止める。
 (3) 黙読する(声をださない)。
 (4) 読みながら、後戻りをしない。
 (5) 辞書を使わない。
 (6) 英字新聞を読む前に、日経新聞を読む(日経新聞を読んでから、英字新聞を読む)
 (7) 1年間、 読み続ける。

 簡単なルールですから、毎日読んで--読む時間は、たったの4分間ですから(笑)--、1年間続けることは苦痛ではないでしょう。ちなみに、読むときのコツは、「最初の段落(paragraph)」を集中して読めばいいでしょう。というのは 、最初の段落に「結論」が述べられているから。英字新聞の社説を初めて読めば、最初の段落を読み終わった頃には4分間が過ぎてしまうでしょうが、1年後には、4分間で社説全体を読み切るようになっているでしょう。

 



[ 補遺 ] (2006年 8月16日)

 私は、英語の専門家ではないので、英語学習のやりかたについて、専門的観点に立って適切に述べる力量がないのですが、本 ページ で述べた やりかた は、仕事のなかで多量の英文 ドキュメント を読まなければならなかった私自身が採用した訓練法です。この訓練法は、当時 (30歳すぎ)、松本道弘さんの著作 「わたしは こうして英語を学んだ」 を読んで ヒント を得たと記憶しています。

 当時、私は、練馬区に住んでいて、通勤手段として西武池袋線を使っていました。私が乗車する駅は練馬駅で、終点が池袋駅です。練馬駅から池袋駅までの所要時間は、10数分です。私は、乗車する前に、駅の売店で英字新聞 (当時の Mainichi Daily News、いまでは廃刊) を購入して、電車の ドア が閉まるのを合図にして、英字新聞の社説を集中して読み始めました。でも、英字新聞を読み始めた頃は、池袋駅に着いても、社説は、2/3 しか読み切れていなかった。西武池袋線は 「地獄の鮨詰め状態」 ですから、辞書を使うことはできなかった。社説を、ただ、ひたすら、読んで理解するしかなかった。そういう やりかた を 1年続けていたら、ついには、練馬駅の次の停車駅 (桜台駅) に到着したときに--所要時間は、3分少々くらいですが--、社説を読破できるようになりました。
 社説は、政治・経済・文化などの広範な対象を扱っていますから、英文で綴られた--しかも、知らない単語がいくつも出てきて--社説のみを読んでも、理解できる訳ではない点に注意して下さい。社説に記述されている話題は、ほかの手段--たとえば、テレビ の ニュース 番組など--で、すでに、或る程度、知識を習得していれば、英文の社説を読んでも、ほぼ、理解できるはずです。

 当時 (30歳すぎ)、私の仕事は、複数の コンピュータ・ソフトウェア (欧米の物) の 「膨大な」 マニュアル を読んで、(それらの プロダクト のなかから) 日本に輸入して事業にできる プロダクト を 2つほど選んで、日本語化・日本化(参考 1)の具体的な手順を示すことでした。複数の プロダクト のなかから、「適切な」(参考 2)プロダクト を選ぶには、まず、膨大な マニュアル を読んで、次に、マニュアル から得た情報を起点にして、プロダクト を 「逆解析」 しなければならなかった。したがって、当然ながら、英語を速く正確に読む力を習得しなければならなかったのです。私が英語を学習したのは、英語 (の読解力) が、仕事のなかで、有無を言わさず入用だったからです。
 さらに、私は、(いまの私の専門技術になっている) データベース 技術を、当時、欧米人から直接に指導され--しかも、かれらは、全然、日本語を知らなかったので--、私は、英語を懸命に 「学習せざるを得なかった」。

 当時、私の仕事のなかで、英語が大きな比重を占めたので、私は英語を懸命になって学習しましたが、いまでも、英語が苦手です(苦笑)--とくに、リスニング は、いまでも、苦手です。
 私が英語を学習しはじめた当初、私に データベース 技術を指導してくれた欧米人たちは、私を ゲスト としてもてなして、「手加減 (pull punches on me)」 してくれていましたが、かれらとの仕事が数年にも及べば、もう、ゲスト 扱いをしなくなって、かれらが語る 「欧米人の欧米人による欧米人のための」 英語のなかで、私は みずからの拙い英語力に苦しみました--すなわち、かれらの自然な英語を聴き取ることができないし、私のしゃべる英語が 「意味」 を的確に伝達をしていないことに、たびたび、苦しみました。みずからの英語が、いかに弱いかを いちばんに感じたのは、かれらといっしょに トークショー を見に (聴きに?) いったときでした。コメディアン が立て続けに ジョーク を言って、会場が大笑いの渦になっても、そのなかで、私だけが笑えなかった (I felt out of place)。

 そういうふうに、英語で苦しんできた私は、日本の小学校で、英語学習が導入されたことに対して、「反対」 したい。ただ、私は、英語教育の専門家ではないし、個人的な体験のみから英語教育法を云々することを良しとはしないので、私自身の 「反対」 意見をひかえますが、英語の専門家--しかも、実用英語の第一人者であられる--篠田義明早稲田大学名誉教授の ご意見を お読み下さい。

 ちなみに、私は、仕事のなかで英語を直接に使わなくなった今でも、日本経済新聞と英字新聞を、まいにち、読んでいます。

 
(参考 1)
 「日本語化」 というのは、欧米の言語を日本語に翻訳することで、「日本化」 というのは、日本の制度・商慣習を プロダクト のなかに増補することです。「日本化」 は、たとえば、会計 パッケージ であれば、日本税法を増補するとか。

(参考 2)
 「適切な」 という意味は、プロダクト として、技術的に 「最良」 という意味ではなくて、事業として pay-off するかどうかという意味です。たとえば、技術的に 「最良」 であっても、日本語化・日本化のために多大な投資をしなければなず、しかも、技術がすぐれているがゆえに、マーケット の人たちが使い切れないかもしれない危険性があれば、セールス 量も伸びないだろうし、事業としては pay-off しないので、「最良」 ということにはならない。




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  佐藤正美の問わず語り