2002年 6月15日 作成 民俗学 (辞典) >> 目次 (作成日順)
2006年12月 1日 更新  



 今回は、民俗学の辞典を紹介する。

 小生が歴史に興味を抱いた理由は、「自らが育った時代環境」 を知りたかった点にある。
 そのために、政治史や経済史を直接に研究することを主眼としないで、世相史を研究することに興味がある。
 というのは、児童であった頃の思い出には政治や経済は直接に関与していないから。
 ちなみに、「児童」 という定義は、学校教育法では満 6歳から 12歳までを学齢児童といい、児童福祉法では満 18歳未満をいう。

 学校を卒業して仕事をするようになるまでは、およそ、経済や政治とは無縁であったし--学生の頃には 「学生運動」 の末期に遭遇しているが、小生は 「ノンポリ」 であったし--、「自我」 の意識が強烈に目覚めた頃 (高校生や大学生の頃) には、読書の関心は文学や哲学にあった。
 「自我」 が形成される時期に、自らが、どのような環境にいたのか、という点を調べるとなれば、どうしても、郷土の伝承文化や世相史に関心が強くなる。
 政治や経済に対して無関心でいられなくなったのは、仕事をするようになってからのことである。

 民俗学のそれぞれの領域に関する文献は、後日、紹介する。



[ 読みかた ] (2006年12月 1日)

 私は、民俗学の専門家ではないので、民俗学が対象としている範囲を正確に述べることができない。というのは、たとえば、民俗学と民族学とのちがいも、私には、正確には理解できていない。それら (民俗学と民族学) の文献を読んでいると、民俗学が単数民族を対象として、民族学が多数民族を対象にしているように思われるし、文明 (あるいは、文化) が すでに進んでいる民族を対象にして、伝承を調査する学問を民俗学と云い、未開民族の生活形態を調査する学問を民族学と云っているようにも思われるし、いっぽうで、文化人類学と社会人類学と民俗学とのちがいも私にはわからない。

 ただ、民俗学として、私が興味を抱いている点は、歴史 (日本史) のなかで、社会の上部に現れた政治・経済・文化の歴史 (いわゆる「正史」) ではなくて、下部にある日々の生活に密着した風俗の歴史である。衣食住の風俗に関する歴史が、民俗学なのか、それとも、歴史の一分野 (有職故実) なのか を私には判断できないけれど、衣食住の風俗に関する歴史が私の興味である。

 私が小学生時代を過ごした村 (海辺の半農半漁の寒村) では、葬儀や祭りなどの「しきたり」は、(私が、いま、住んでいる) 首都圏のそれとは非常に相違していた。私が村で育っていたときに、祖父と祖母が亡くなった。そのときの葬式を、いまでも、思い起こすことができるが、棺桶を輿にのせ、喪主・親族・会葬者が列をつくって、棺の前に、位牌・供物などを供えて斎場 (海辺の近くに建てられていた) に赴いて、火葬した。火葬中、斎場の煙突から煙りがたなびいていた。たなびいた煙が薄くなった頃が、燃え尽きた頃合いだった。斎場の横には、石で作られた四角形の台場があって、会葬者がそれを囲んで集まり、喪主・親族が台場に立って、桶側の餅などの供物を会葬者に対して、まんべんなく、放り与えた。
 法事は家でおこなわれて、家の造りは、それぞれの部屋の ふすま を外したら、家そのものが一つの大きな空間になって、多数の人たちを収さめる作りであった。集まった人たちに出す配膳の食台も、数多く、家には、所蔵されていた。
 「盆踊り」 などの祭りも、当時、私が村で参加した催しと、いま、私が住んでいる町の催しは、少し、ちがうようです。もっとも、それは、当然であって、風土がちがえば、催事もちがってくるのでしょうね。

 私が小学生時代を過ごした村では、「ハレ の日」 と 「ケ の日」 のちがいが はっきりしていたのですが、都会では、それらのちがいは薄いようです。都会では、正月の行事が、年々、寂れていっているように私には思われるのですが、、、。「ハレ の日」 に向けて仕度するなかで感じた 「(みんなでいっしょに感じる) 一体感」 を、近年、感じることができないのは寂しいですね。西洋では、12月はじめ頃から、クリスマス の仕度をして、クリスマス (ハレ に日) に絶頂を迎えるように、仕度のなかで、次第に、気持ちを整えているようです。

 私は、子どもの頃、たぶん、感受性のつよい子どもであったようで、「祭り」 の余韻 (「祭り」 のあとに漂う寂しさ) を反芻するように味わっていたようです。
 私は、以下の辞典を てもとに置いて、日頃、拾い読みしています。

 (1) 日本民俗事典、大塚民俗学会 編、弘文堂。
 (2) 風俗辞典、坂本太郎 監修、東京堂出版。
 (3) 戦後世相史辞典、奥山益朗 編、東京堂出版 (読書案内 「日本史 (辞典)」 のなかで記載しました)。

 





 ▼ [ 入門編 ]

 ● 日本民俗学辞典、中山太郎 編、悟桐書院

 ● 遺補 日本民俗学辞典、中山太郎 著、昭和書店

 ● 民俗学辞典、柳田國男 監修、東京堂出版 (★)

 ● 風俗辞典、坂本太郎 監修、東京堂出版 (★)

 ● 民間学事典 (事項編)、鹿野政直・鶴見俊輔・中山 茂 編、三省堂

 ● 図説 民俗探訪事典、大島暁雄・佐藤良博・松崎憲三・宮内正勝・宮田 登 編、山川出版社

 ● 神話伝説辞典、朝倉治彦・井之口章次・岡野弘彦・松前 健 共著、東京堂出版

 ● 日本の神様 読み解き 事典、川口謙二 編著、柏書房

 ● 新釈 神様の戸籍調べ、二酉洞学人 著、佐藤栄七 校訂、錦正社

 ● 日本傳説集、高木敏雄 著、宝文館出版

 ● 上代説話事典、大久間喜一郎・乾 克己 編、雄山閣

 ● 日本俗信辞典 (動・植物編)、鈴木棠三、角川書店

 ● 日本年中行事辞典 (角川小辞典 16)、鈴木棠三、角川書店 (★)

 




 ▼ [ 中級編 ]

 ● 改訂 総合日本民俗語彙 (全 5巻)、柳田國男 監修、民俗学研究所 編、平凡社(★)

 ● 日本民俗大辞典、福田アジオ・神田より子・新谷尚紀・中込睦子・湯川洋司・渡邊欣雄 編、吉川弘文館 (★)

 ● 近世風俗事典、江馬 務・西岡虎之助・浜田義一郎、人物往来社 (★)

 ● 日本風俗史事典、日本風俗史学会 編、弘文堂 (★)

 ● 日本民俗事典、大塚民俗学会 編、弘文堂 (★)

 ● 風俗史事典、江馬 務 著作集第 11巻、中央公論社 (★)

 ● 風俗語集釈、江馬 務 著作集第 12巻、中央公論社 (★)

 ● 日本民俗語大辞典、石上 堅 著、桜楓社 (★)

 ● 日本を知る事典、大島建彦 他編集、社会思想社

 ● 年中行事図説、柳田國男 監修、民俗学研究所 編、岩崎美術社

 ● 日本祭礼行事事典、宮尾しげを 編、修道社 (★)

 ● 日本伝承名彙、柳田國男 監修、日本放送協会 編、日本放送出版協会

 ● 日本民俗宗教辞典、佐々木宏幹・宮田 登・山折哲雄 監修、東京堂出版

 ● 日本伝奇伝説大事典、乾 克己・小池正胤・志村有弘・高橋 貢・鳥越文蔵 著、角川書店

 ● 図説 日本呪術全書、豊島泰国、原書房

 ● [ 図説 ] 民俗建築大事典、日本民族建築学会 編、柏書房

 




 ▼ [ 研究の手引書 ]

 ● 文献資料調査の実務、木村 礎 編、柏書房

 ● 民族研究 ハンドブック、上野和男・高桑守史・野村純一・福田アジオ・宮田 登 編、吉川弘文館

 ● 民族調査 ハンドブック、上野和男・高桑守史・福田アジオ・宮田 登 編、吉川弘文館

 




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