2003年10月16日 作成 学習環境の配慮 >> 目次 (作成日順)
2008年11月 1日 補遺  


 
 TH さん、きょうは、学習環境について お話しましょう。

 前回、ハンドアウト 作成の配慮として、じゅうぶんな準備時間を取ることを述べました。
 時間の整備と同じくらい大切な事項が学習環境でしょうね。

 
「正しい」 書斎術などない。

 ただ、学習環境の整備に関しては、一般に適用できる技術はないようです。
 というのは、書物が山積みになって書類が散らかっていなければ仕事ができない人々もいれば、すべての装飾を削ぎ落とした殺風景な場所でなければ仕事ができない人々もいます。どうも、場所の 「雰囲気」 が、その人なりの学習意欲に対して作用するので、「正しい」 書斎術というのはないようです。

 夏目漱石に関する エピソード の 1つですが、散らかっている彼の書斎を お手伝いさんが (彼の外出中に) 掃除して整理したら、彼が帰宅してから怒ったそうです。彼曰く、「無秩序の秩序」──ただし、その エピソード が綴ってあった書物を読んでから、そうとうな年数が過ぎて、私の記憶が曖昧なので、夏目漱石が、そう言ったかどうかは、正確な引用ではないので、あしからず。

 有名な作家 (小説家) たちの書斎を写真集で観たことがあるのですが、書斎の広さと豪華さを観て、私は怖じ気づいてしまいました。ああいう広い豪華な書斎は、古い・狭い マンション に住んでいる貧乏な エンジニア (私) には、夢のような空間です (もっとも、うらやましいとは思っていないのですが、、、その理由は、これから述べます)。
 古い・狭い マンション のなかで家族 5人が暮らしていて、しかも、愚息たち (3人) が騒いで うるさい。そういう環境のなかで学習を進めなければならないので、なんらかの対応をしなければならなかった。

 私は、仕事日を 比較的 自由にきめることができるので、(仕事の 「空き日」 には) 愚息たちが寝てから、明けがた まで、読書や研究に集中するようにして、明けがたに寝ることも多いのですが、会社に出向いて仕事をする時間帯がきまっていれば、時間帯を シフト した やりかたはできないでしょうね。
 時間軸 (時間帯) をずらすことができないなら、空間 (場所) をずらすしかない、ということになります。

 
「1つの隠れ場所」 を陣取るのが書斎術である。そして、ノート 型 パソコン を書斎にすればよい。

 最初に配慮しなければならない点は、「1つの隠れ場所」 を陣取るということです。
 幸いにも、携帯用の パソコン を使うことができる時代ですから、パソコン のなかに、辞書類を インストール しておけば、パソコン さえ携帯していれば、どのような場所でも書斎に早変わりします。
 さらに、私は、ホームページ のなかに、(「隠し ボタン」 を埋め込んでいて、「隠し ボタン」 を クリック すれば) 「私用の ウェッブ・オフィス」 の ページにジャンプ するようにしています。ブラウザー があれば、ウェッブ のなかで、情報を収集したり調べたりできるような私用の ページ を用意しています。パソコン を携帯していれば、オックスフォード 大辞典 (20数冊) を、常に参照できるし、夜中に、書籍注文や銀行振込ができる。

 「1つの隠れ場所」 を陣取るということは、単独の 1つの部屋を専有するということではなくて、喫茶店の目立たない片隅でもよい。私は、独身の頃、仕事が終わってから、「24 時間営業」 の喫茶店に通って、読書していました。20 歳なかば頃 (今から 25年ほど以前)、私は、すでに、携帯用の ワープロ 機器 (シャープ 社製、「書院」) を購入していて、喫茶店に持ち込んで使っていました。携帯用の タイプライター に似ていて、液晶画面の表示は 1 行でしたが、プリンター が搭載されていました。ちなみに、外部記憶媒体は、カセット・テープ でした。
 ポータブル 「書院」 は、持ち運びができる大きさだったので──昔の ラップトップ・パソコン よりも小さい、ノート 型 パソコン よりも、やや大きい──、非常に役立った。それ以来、私は、「書院」 を愛用しています──いまでも、ブラウザー を使う以外の作業なら──たとえば、メール のやりとりとか、スケジュール を管理するとか、年賀状を作成するとか──、「書院」 (モバイル 型と ラップトップ 型の 2台) を使っています。パソコン は、50 歳の オジサン には むずかしすぎる、、、。

 
帰宅途上、喫茶店を書斎にすればよい。

 まいにち のように、喫茶店に通っていたので、コーヒー 代が嵩んだのですが──深夜料金は高い──、学習のための投資と思って、惜しまなかった。退社してから、間借りしていた下宿 (練馬区桜台) に帰る途上、練馬駅の近所にある喫茶店に立ち寄って、1 時間から 2 時間ほど読書して、1 時間ほど ノート を作成する、という日課でした。あるいは、家で読書していても、帰宅したという開放感のために読書に集中できないようなときには、喫茶店に出向いて読書するのもいいでしょうね。当時作成した ノート は、いまでも、役立っています。

 独身の人たちは、まいにち でなくてもいいから、1 週間のなかで 2日か 3日ほど、帰宅途上、喫茶店に立ち寄って、喫茶店を書斎にしてみてはどうでしょうか。結婚している人たちも、家に帰れば、子どもたちが騒いで うるさいのなら、帰宅する前に、喫茶店に立ち寄って、1時間ほど読書してから帰宅すればいいでしょうね。そして、帰宅したら、いっさい、仕事や学習のことを忘れて、家族といっしょになって、家事を考えるというふうにしては どうでしょうか。
 学習に集中する場所と家事との間に 「けじめ」 をつけるために、喫茶店を通過点にすればいいと思います。喫茶店を出たら、もう、仕事や学習のことを忘れるというふうにすればいい、と思います。

 できるなら、駅の近くに、「24 時間営業」 の図書館があればいいのですが、、、。

 
 [ 補足説明 ]

 以上の話は、私の若い頃の話です。
 最近は、仕事の 「空き日」 には、終日、家にいて読書しているので、仕事と家庭のけじめがない状態に陥っています。  

 



[ 読みかた ] (2008年11月 1日)

 3 年ほど前 (2005年くらい) から、私は、家 (アパート) のなかで ひとつの部屋を書斎として占有しています。そのために、ウサギ 箱の わが家では、可哀想なことに、子どもたちが 3人で ひとつの部屋を共有するはめに陥っています。拙宅が入っている アパート の隣に建っている アパート のなかに、私は書斎 (3DK) を借りています。ところが、拙宅のなかで書斎を陣取るようになってから、私は 隣の アパート に出向くのを面倒に感じて、借りている書斎は、書物の物置になっていました。で、長男が来春に大学を受験するので、長男が隣の アパート を学習部屋として使うようになりました。拙宅のなかで ひとつの部屋を書斎として占有することになってから、私は、朝起きて朝食を終えると直ぐに机に向かって、ゆうがたまで、パソコン の キーボード を打っています──私は書きながら考える性質なので、考えるときには、かならず、なにかしらの テーマ について着想・意見を綴ります。本 ホームページ の エッセー も、そういうふうにして綴られた産物です。

 じぶんの書斎を写真に撮影して公にするほどの厚かましさ (羞恥の欠如) は私にはない──住宅を セールス するための モデルハウス ならいざ知らず、小説家たちが、じぶんの書斎を写真に撮影させている感覚を私は理解できない。喩えれば、舞台役者が、作品としての舞台に立つ前に様々な準備をしている楽屋の様を──その準備には、精神を整えることもふくめて──露呈することなど、私は、まず、想像できない。「『作品』 が生まれる 『秘密』 に迫る」 などと称して、書斎や楽屋を 「資料」 扱いして探るなどという行為は 「覗き趣味」 にすぎないでしょうね。「『作品』 が生まれる 『秘密』」 は、つねに、作家の頭のなかにしかない。作家は、みずからの思考・感性が最大限に働くように環境を整えるのでしょうが──ここで、「整える」 というのは、「整然とした (整理整頓がゆきとどいた)」 という意味ではないのであって、本文のなかにも綴りましたが、とにかく、そのひとにとって、気持ちのいい環境であるということで、「雑然とした」 環境であってもいいのですが──、雑然とした環境から清楚な作品が生まれることも当然ながら在ります。

 さて、話を元にもどして、仕事に集中したいのであれば、仕事場を整えるのは当然の措置でしょうね。そして、じぶんの思考・感性が できうるかぎり最大限に作用できるように仕事場が整っていれば、仕事に集中できるでしょう。もし、そういう空間を占有できないとしても、たぶん、どこか静かな場所を探して、50 センチ × 70 センチ くらいの テーブル があれば、仕事場にできるでしょう。

 ちなみに、私の 「理想の書斎」 は、自家用車の ワゴン 型車種のなかに、書物・ノートパソコン・折りたたみ机・折りたたみ椅子・ラジカセ・数多い音楽 CD・コーヒー の入った ポットなどを積んで、近郊の山麓に出向いて、林のなかで 机と椅子を組み立て、コーヒー を飲みながら、そして、音楽を聴きながら、書物を読んだり、ノートパソコン で文を綴ったりする 「移動書斎」 です──虫除けの装置も要るでしょうね。もっとも、私は自動車の免許証をもっていないので、「移動書斎」 は夢に終わっているのですが、、、。





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  佐藤正美の問わず語り