2004年 6月16日 作成 読書のしかた (入門書の読みかた) >> 目次 (作成日順)
2009年 7月 1日 補遺  


 
 TH さん、きょうは、入門書の読みかたについて考えてみましょう。

 
● そうとうな知識を習得している テーマ に関しても、入門書を、ときどき、読んだほうがよい。

 新しい学習 テーマ が出てきたら、おそらく、最初、その領域に関する入門書を読んで、基礎知識と研究領域の体系を学ぶでしょう。新しい学習 テーマ に関する資料の集めかたは、以前、述べました [ 98ページ 参照 ]。

 すでに、そうとうな知識を習得している テーマ に関しても、入門書を、ときどき、読んだほうがよいでしょうね。或る テーマ に関して、初めて学習するときに比べて、すでに、そうとうな知識があるのですから、入門書の読みかたも、初めてのときとは違う やりかた になるでしょうね。すでに、そうとうな知識を習得しているにもかかわらず、入門書を読む理由は、おおむね、以下の 2点でしょう。

  (1) 目次を読んで、(全体の) 体系を確認する。
  (2) 索引を読んで、習得している基礎知識の漏れがあるかどうか、という点を検証する。

 
● 入門書を読むということは、知識の体系を整えている 「視点・視座」 を読むことである。

 入門書は、「通論」 を、初級向けに記述した書物ですから、記述されている概念は、多数の書物を比較しても、それほど相違していないし、10年くらいの年月では、それほど変化する訳でもない。入門書は、個々の専門領域のなかで扱われている概念を、(少々、正確性を犠牲にして、) まとめて、体系化した知識を扱っているので、「入門的知識の専門家」 などという専門家はいないのであって、或る専門領域を研究している人が執筆します。あるいは、それぞれの専門領域の人たちが、それぞれの研究領域を担当して、共同執筆する、という形式を採ります。

 入門書は、「通論」 とされている知識を体系化していますが、体系化する際の 「視点・視座」 が、執筆している人 (あるいは、人たち) の特徴として現れてきます。「通論」 の体系というのは、試行的定式化であって、唯一無二の体系などないのですから、中級以上の人が (あるいは、専門家も) 、入門書を読む理由は、体系を整えている 「視点・視座」 を知りたいからです。つまり、どういう基礎概念を前提として、それらの基礎概念から、どのような推論を使って体系を導出しているか、という点を知りたいのです。このような整合的体系を、直接、論点にして、知識の体系化を試みた書物が 「原論」 と云われています。
 「視点・視座」 を鳥瞰するには、目次を読めばいいでしょう。そして、目次を読んで、体系を確認してから、書物の中身を、論理の糸 (logical thread) をたぐりながら読めばよいでしょうね。

 知識を体系化するために、「視点・視座」 を提示できるのは、専門家のみです。専門外の人が、入門書を執筆することなどできない。もし、専門外の人が、専門外の入門書を執筆したとすれば、「自らの専門領域から観た」 専門外の知識体系という 「視点・視座」 を提示するしかない。それは、金輪際、「専門領域の入門書」 として、(専門家のあいだで通用する) 「視点・視座」 を提示してはいない。
 拙著「IT コンサルタント の スキル」 は、会計学・生産管理・経営学・マーケティング・英語・数学という広範な領域を扱った (システム・エンジニア 向けの) 入門書です。拙著は、あくまで、システム・エンジニア の観点に立って、どのような知識を習得していればよいか、ということを述べたのであって、専門的な 「視点・視座」 を提示した訳ではない──逆に言えば、それぞれの専門領域に関して、それぞれの専門的な視点を、専門外の小生が提示できる訳がない。

 
● まず、目次を読むこと。目次は、論旨の体系なので、「視点・視座」 が示されている。

 さて、目次を読まない人たちが多いそうですが──あるいは、目次を読んでも、どのような知識が記述されているか、という 「一覧表」 くらいの意味でしか読んでいない人たちが多いそうですが──、「視点・視座」 という観点から、目次の大切さを確認してください。書物の中身を読み終わったら、再び、目次を読んでください。そうすれば、どのような観点から、論旨が体系化されているか、という点を理解できるでしょう。

 
● 入門書でも、テーマ の選択がなされているので、1冊だけ読めばよい、という訳ではない。
  入門書は、複数冊、読むこと。

 書物は、「物体」 です。ということは、執筆量 (ページ 数) に限りがある、ということです。したがって、入門書として、「全般的な」 知識を扱おうとしても、書物として収録するためには、テーマ を選択しなければならない、ということです。テーマ の選択そのものが、執筆者の 「視点・視座」 を示しています。したがって、入門書を 1冊、読んだら、その領域に関して、「全般的な」 知識を得られる訳ではない。とすれば、複数の入門書を読まなければならない。

 たとえば、生産管理の書物 (入門書) を例にすれば、(生産工程を実際に体験していない) 研究者が執筆した書物では、生産計画に関して詳細な記述がされていても、工程管理に関しては、ほとんど、記述がない、という偏りが起こりますし、逆に、(工程管理を実地に担当してきた) 実務家が執筆した書物では、工程管理の記述は詳しいのですが、生産計画は 「所与」 として、ほとんど、記述されていない、という偏りが生じます。

 執筆領域の偏りを回避するためには、複数の入門書を読まなければならないでしょうね。また、偏りを回避するためには、専門領域の事典 (大項目・中項目の事典) も、役立ちます。大項目・中項目の事典は、「体系」 を記述することを目的としていますから、テーマ を網羅的に記載しています。

 
● 「索引 (index)」 を、基礎知識の習得度を調べるための チェックリスト として使えばよい。

 入門書の 「索引 (index)」 を読みながら、索引のなかに記載されている基本的な用語を、すべて、知っているかどうか、という点を調べてみてください。専門家向けの文献では、「索引」 は、辞書のように使うことが多いのですが、入門書では、基礎知識の チェックリスト として使うことができます。

 専門家向けの文献では、「通論」 とされている基礎知識 (あるいは、専門辞典に記載されている基本的な意味) について、「通論」 とは違う使いかたをしていないかぎり、いちいち、語義を記述することはしないでしょう。したがって、入門書の 「索引」 のなかに記載されている基本的な用語を知っていなければ、いよいよ、専門家向けの文献を読むときに、論旨を理解することができないでしょうね。

 それぞれの専門領域のなかで使われている 「基礎概念」 は、入門書を読んでも、正確に理解できないのですが──正式な専門文献を読まなければ、的確に理解できないのですが──、そういう概念が、しかじかの領域では、基本的用語として使われているということを知って、入門書を読んで、まず、おおまかで良いから、基礎概念を習得しておけば、正式な専門文献を読む際、助けとなるでしょう。
 たとえば、会計学の 「資産」 とか、生産管理の 「マスター・スケジュール」 とか、経営学の 「戦略」 とか、数学の 「集合」 というような 「基礎概念」 は、入門書では、正確に理解できる概念ではないでしょうね。でも、まず、入門書を読んで、それらの 「基礎概念」 を、おおまかに把握しておいて、それから、専門文献を、多数、読みながら、それらの基礎概念の精度を増すしか、学習のやりかた はないでしょう。したがって、入門書の 「索引」 のなかに記載されている用語くらいは、すべて、知っていなければならないでしょうね。

 



[ 読みかた ] (2009年 7月 1日)

 取り立てて補遺はいらないでしょう。
 なお、「読書の しかた (書物の選びかた)」 (本 ホームページ の 302 ページ) の補遺を参照してください。





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  佐藤正美の問わず語り