2002年 3月17日 自己自身をふくむ集合 (区分 コード の パラドックス) >> 目次 (テーマ ごと)
  ● QUESTION   区分 コード のなかに、「全体」 を意味する コード がある。どうすればよいか。
  ▼ ANSWER   VE として扱えばよい。
2007年 4月16日 補遺  



 いわゆる 「自己自身をふくむ集合」 の例である。
 区分 コート゛ は部分集合を記述する コート゛ である
 したがって、区分 コート゛ は 「全体」 を記述するための コート゛ ではない。
 「全体」 を記述するための区分 コート゛ は VE を使って、サフ゛セット から隔離すればよい。

 
 「全体」 を記述するために区分 コート゛ を使うことは、「コート゛ 体系の乱れ」 である。
 「自己自身をふくむ集合」 として、以下を例示できる。

   (1) 動産不動産 コート゛ が認知番号として使われている。

   (2) 動産不動産区分 コート゛ が使われているが、以下のような中身である。
     (2)-1 値 「01」 は、「土地」 を意味する。
     (2)-2 値 「02」 は、「建物」 を意味する。
     (2)-3 値 「03」 は、「水道管」 を意味する。
     (値 「04」 以後は省略する。)

   (3) ただし、動産不動産区分 コート゛ の値 「00」 は、「動産不動産」 の全体を意味する。

  動産不動産 entity は、形式的には、以下のように記述される。

  {動産不動産 コート゛、名称、動産不動産区分 コート゛、...}.

  さて、動産不動産区分 コート゛ の値 「00」 は、「自己自身をふくむ集合」 である。
 すなわち、動産不動産 コート゛ (認知番号) と動産不動産区分 コート゛ の値 「00」 は、実質的に同じ対象を指示している。動産不動産区分 コート゛ (部分集合を記述するための コート゛) が、全体を記述するための コート゛ として使われていることは 「逆理」 である。

  したがって、動産不動産区分 コート゛ の値 「00」 を、区分 コート゛ として扱ってはならない。とすれば、以下に示すように、VE を使って、動産不動産区分 コート゛ の値 「00」 が全体を記述する コート゛ として機能するようにすればよい。

  {動産不動産 コート゛、名称、動産不動産区分 コート゛、...}.
  {動産不動産 コート゛ (R)、動産不動産区分 コート゛ (D)}.

 [ 参考 ] (R) は 「Re-used」 の意味であり、(D) は 「derivated」 の意味である。

  テ゛ータ 構造の記述のなかでは--T字形 ER図のなかでは--、テ゛ータ の値は 「明示的に (explicitly)」 記述されることはない (あるいは、記述してはいけない)。構造を表現するということは 「記号列」 を操作することであって、「記号の具体的な値」 を扱うことはしない。「記号の具体的な値」 は 「アトリヒ゛ュート・リスト」 のなかで記述される。したがって、前述の例のように、動産不動産区分 コート゛ が、(領域のなかを走る) 値によって、隔離して扱われるようなことがあれば、(テ゛ータ 構造のなかでは、区分 コート゛ が分離されていることを見て取ることができるが、) どのような値が分離されたのか、という点は、「アトリヒ゛ュート・リスト」 のなかに記述される。

 [ 参考 ] 「アトリヒ゛ュート・リスト」 の記述については、拙著「T字形ER テ゛ータヘ゛ース 設計技法」を参照されたい。

 <補筆> T字形 ER図のなかに コメント として文字を綴っている作図を、ときどき、観ることがあるが、T字形 ER図のなかには、コメント を綴らないのが原則である。なぜなら、T字形 ER図は、あくまで、記号列の構造 (形式的構造) を記述しているに過ぎないから。もし、コメント を附与したいなら、アトリヒ゛ュート・リスト (あるいは、entity の マトリックス) のなかに記述すべきである。



[ 補遺 ] (2007年 4月16日)

 サブセット (部分集合) は、1つの セット (集合) を分割・細分した状態である。言い換えれば、「対象の範囲 (object domain) を限って」 1つの集合を作って、その集合を、さらに分割すれば、2つ以上の部分集合が作られる。したがって、1つの セット と 1つの サブセット は、限られた範囲 (object domain) のなかでは、同じ外延 (集合) になるはずがない。

 「W ∈ W」 (じぶん自身を メンバー とする集合) が、カントール の素朴集合論に内在する 「パラドックス」 であることは、数学基礎論の入門書には、たいがい、記述されている。その 「パラドックス」 を回避するために、ラッセル は 「タイプ 理論」 を作ったし、ツェルメロ は、「分出公理 (「部分集合の公理」とも云う)」 を前提にして、集合を厳密に定義して 1つの公理系を作った。「分出公理」 を前提にした集合を 「セット」 と云う。したがって、セット と サブセット が同じ外延 (集合) になるはずがない。

 数学の そういう話は、実務 (practical business details) に無関係であると思うなら、早計にすぎる。本 エッセー のなかで記したように、集合と その部分集合を同じ外延 (集合) として扱ってしまう 「パラドックス」 が起こり得る -- 勿論、そういう状態は、コード 化 (個体の記号化) の失態であるが。その失態が起こった理由は、たぶん、「区分 コード」 を単なる flag として考えたか、あるいは、「区分 コード」 で示された部分集合を、本来、それぞれ、べつべつの entity (集合) として考えて、それらの集合を包括する クラス 概念を導入したかったのかもしれない。
 いずれにしても、本 エッセー では、「動産不動産 コード」 を是認した状態での--言い換えれば、「動産不動産 コード」 を使い続けることを前提にして-- ソリューション を示した。

 ちなみに、モデル (modeling) では、以下の 2つは、それぞれ、べつの論点である。

  (1) 妥当な構造
  (2) 真とされる値

 (1) は構文論の論点であり、(2) は意味論の論点である。したがって、これらを混同してはいけない。TMD (TM Diagram、T字形 ER図) は、(1) を記述した図である。(2) は、「アトリビュート・リスト」 のなかで記述される。さらに、(1) および (2) を前提にして、なんらかの 「情報」 を作成する データ 演算は、「アルゴリズム の指図書」 (および、「キー (index-key) の定義表」) として記述する。データ そのものと データ 演算は、べつの論点である。したがって、TMD のなかに、データ の値やアルゴリズム などを記入することは、適正ではない。




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