2005年 8月16日 「集合 オブジェクト」 と 「組 オブジェクト」 >> 目次 (テーマ ごと)
  ● QUESTION   「集合 オブジェクト」 と 「組 オブジェクト」 を、どうして、意識しなければならないのか。
  ▼ ANSWER   「意味」 が違ってくるから。
2010年 9月 1日 補遺  



 「ベーシックス」 (7月 1日付) で、「集合 オブジェクト」 と 「組 オブジェクト」 について、述べた (420ページ 参照)。「集合 オブジェクト」 と 「組 オブジェクト」 は、以下にように定義できる。

 (1) S1、S2、・・・、Sn を オブジェクト (あるいは、セット の メンバー) とする。

 (2) オブジェクト の並びを論点にすれば、
   ( S1、S2、・・・、Sn ) は、「組 オブジェクト」 である。

 (3) オブジェクト の並びを論点にしないなら、
   { S、S2、・・・、Sn } は、「集合 オブジェクト」 である。

 すなわち、「並び」 が論点になるかどうか、という点が、「集合 オブジェクト」 と 「組 オブジェクト」 の相違点である (「組 オブジェクト」 は、いくつかの集合値が、或る規則に従って、並べられた組である)。

 データ を、ひとつの情報として、様々な 「view」 の形で作成するなら、「並び」 を論点にすることは、ほとんど、ない、と思う。たとえば、データ 構造として、再帰的構造 ( a, b )──たとえば、部品構成表を考えて──は、「正展開 (の多段階表示)」 では、( a, b ) という 「view」 を作ればよいし、「逆展開 (の多段階表示)」 では、( b, a ) という 「view」 を作ればよい。

 しかし、データ 構造を作るなら、「集合 オブジェクト」 と 「組 オブジェクト」 は、構造の 「意味」 が相違する。たとえば、従業員番号と部門 コード を メンバー とする 「集合 オブジェクト」 は──すなわち、{ 従業員番号、部門 コード } でも { 部門 コード、従業員番号 } でもよいので──、「配属」 という 「できごと」 を意味する。いっぽう、出荷番号と請求番号を メンバー とする 「組 オブジェクト」 は、(出荷番号、請求番号) と (請求番号、出荷番号) になるが、それぞれ、意味が違う──(出荷番号、請求番号) は、「後払い」 であるが、(請求番号、出荷番号) は、「前払い」 である。

 TM でいう 「event」 概念は、定義によって、「組 オブジェクト」 であるが、かならずしも、そうならない事象が起こることもある。それが、「FAQ」 のなかで、前回示した 「2つの 『event』 を、1つとして扱う」 という現象である。

 前回の例を使えば、入庫番号と検査番号が、コード 体系上、定義されていて、、実地の作業では、(入庫、検査) もあれば、(検査、入庫) もあるので──それぞれは、「組 オブジェクト」 なのだが──、入庫と検査を、1つの 「集合 オブジェクト」 として考えざるを得ないことも、現実的には起こる。

 ほかにも、「組 オブジェクト」 の典型的な例として、「銀行口座」 を示すことができる。

 (1) {銀行 コード、銀行名称、・・・}.

 (2) {支店 コード、・・・}.

 (3) {口座番号、・・・}.

 (4) {銀行 コード (R)、支店 コード (R)、銀行支店名称、・・・}.

 (5) {銀行 コード (R)、支店 コード (R)、口座番号 (R)、口座種別 コード、名義人名称、・・・}.

 
 (2) は、単独で、「意味」 をなさない。たとえば、「虎ノ門支店」 という属性値を与えても、なんら、事実を指示することはできない──というのは、東京三菱銀行の虎ノ門支店もあれば、みずほ銀行の虎ノ門支店もあるから。支店名称は、(4) のなかで、はじめて、事実との指示関係を示す (「F-真」 を示す)。同じように、「銀行口座」 も、(5) の構造にしなければ、「意味」 をなさない──事実との指示関係を示さない (「F-真」 を示さない)。

 (4) および (5) は、いずれも、「組 オブジェクト」 である。そして、TM では、「対照表」 として記述される構成である。「対照表」 には、以下の 2つがある。

   - 「event」 を示す。

   - 「構成表」 を示す。

 
 さて、「構成表」 には、「F-真」 (事実との指示的 「真」 概念) と 「L-真」 (「F-真」 を前提にした導出的 「真」 概念) がある。「F-真」 を示す 「対照表」 は、「resource」 的性質の個体であるが、「L-真」 を示す 「対照表」 は、「真理値表」 に過ぎない。

 「『F-真』 を示す 『対照表』」 を 「resource」 扱いすることには、私は、抵抗を覚える。たとえば、「部品構成表」は──もし、部品構成表番号が付与されていれば、「resource」 であるが──、もし、部品構成番号を付与されていなければ、あくまで、部品の構成を示した 「情報」 であって、単独の 「個体」 としてみなされていない、というふうに解釈できる。

 あるいは、「銀行口座」 も、もし、単独の個体として認知するのであれば、銀行 コード と支店 コード と口座番号を使って記述される「組 オブジェクト」 に対して、単独の認知番号を付与すべきであって、その認知番号が、内訳として、「part-of」 関係として──たとえば、「年-月-日」 のように──、集約・切断される、というふうに考えるべきではないか。すなわち、この 「組 オブジェクト」 は、あくまで、「情報」 であって、「個体」 として認知されている訳ではない。

 {銀行 コード (R)、支店 コード (R)、銀行支店名称、・・・} も、本来であれば、(銀行という) 「resource」 の 「HDR-DTL」 として考えるべきではないか。
 そして、おそらく、「支店 コード」 というのは、入力の簡便性のために──支店名称、たとえば、虎ノ門支店など──導入された コード であって、個体指示子として定義された コード ではない。

 
 以上に述べてきたように、「集合 オブジェクト」 と 「組 オブジェクト」 は、データ の 「意味 (事実との指示関係)」 を考える際、「F-真」 概念および 「L-真」 概念を配慮して考えなければならない。

 



[ 補遺 ] (2010年 9月 1日)

 補足説明は取り立てて いらないでしょう。





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