2023年 8月15日 「2.17 モデルは 『関係』 の網羅性と...」 を読む >> 目次に もどる


 現実的事態を写像する形式的構造は次の 2つの要件を満たしていなければなりません。

  (1) 構文論的に証明できる (「妥当な」 構造である、L-真)

  (2) 意味論的に成り立つ (「真とされる値」 が充足される、F-真)

 「関係」 の網羅性および 「制約束縛」 の網羅性は、L-真および F-真を実現するための技術的要件です。すなわち、「関係」 の網羅性を実現していなければ L-真は満たされないし、「制約束縛」 の網羅性を実現していなければ F-真は満たされないということです。当たり前と言えば当たり前のことですが、作成された モデル の 「完全性」 を証明してくださいと問われたときに、果たして それを証明できるかどうか疑わしいような モデル らしき図 (?) を私は数多く観てきました (苦笑)。

 「関係」 の網羅性は、論理規則から演繹的に導くことができます。しかし、「制約束縛」 の網羅性は、論理規則から導くことができない。というのは、「制約束縛」 というのは、取引に付帯しているので、取引を実施するときの いわゆる 「ビジネス・ルール」 を洗いださなければならないので。ただ、いずれの網羅性も検出する技術は確立されています (第11章で述べます)。

 「関係」 の網羅性は、論理上 検証できるので モデル 図上で扱うことができるのですが、「制約束縛」 の網羅性は モデル 図で扱うことができないので 別途 「アトリビュート・リスト」 を作成して捕捉します。言い替えれば、モデル 図を作成することで モデル が完結する訳ではないということ。モデル 図と 「アトリビュート・リスト」 の二つが揃って はじめて モデル が完成するということです。しかし、DA (Data Analyst) のなかには、モデル 図の作成ばかりに興味を抱いて、「アトリビュート・リスト」 を軽視する人たちがいる──モデル 図を作成すれば事業構造を知ることができるので、モデル 図作成に夢中になるのは分からなくもないのですが、モデル 図を作成したからといって、「真とされる」 値が保全されている訳ではない。F-真が モデル の到達点であることを忘れないでいただきたい。なぜなら、モデル は 「事実 (現実的事態) を写像した形式的構造」 なのだから。 □

 




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