2023年11月 1日 「3.4 『関係』 は 4種類ある」 を読む >> 目次に もどる


 関係 R の性質 (対称性・非対称性) と関数 f の並び (全順序・半順序) が それぞれ 対応するので──非対称性と全順序、対称性と半順序が呼応するので──、関係 R と関数 f は (実務的には) 同じであると見做していいことを 1.4、2.16 および 3.3 で述べました。したがって、モノ (個体指定子が付与されている管理対象) は、全順序で並ぶ事象 (「Event (出来事、行為、取引など)」 と、それ以外 (半順序の 「Event の補集合」) の二つの クラス に分けられます── Event の補集合を 便宜上 Resource と名づけておきます。そうすれば、関係 R (a, b) 言い替えれば f (x, y) の入力項として、二つの集合 (クラス) のあいだでは、次の三つの組みあわせが考えられます──

  (1) R (Event, Resource).

  (2) R (Event, Event).

  (3) R (Resource, Resource).

 (1) および (3) は、正確に記述すれば、R {Event, Resource} と R {Resource, Resource} なので集合 オブジェクト です──ただし、意味論的に、Resource どうしの組みあわせが 組 オブジェクト になる場合もあります、たとえば R (銀行. 支店. 口座)。R (Event, Event) は 組 オブジェクト です。なお、括弧 { } は 「集める」、括弧 ( ) は 「並べる」 という意味です。

 以上の組みあわせは、二つの集合のあいだでの関係ですが、一つの集合の中から いくつかの メンバー を選んで並べて構成を作る関数も考えなければなりません──たとえば、「部品」 集合の中から いくつかの部品番号を選んできて 「部品表」 (Bill of Materials) を構成する場合や、「工程」 集合の中から いくつかの工程番号を選んで全工程の構成 (工程順) を組む場合など。一つの集合の中から いくつかの メンバー を選んで並べる関数のことを 「再帰 (resursive)」 関数と云います。「再帰」 も、勿論、R (a, b) という関数を使います。「再帰」 の場合には、a と b が (集合ではなくて、) メンバー であるというだけのことです。

 二つの集合のあいだの関係であれ、一つの集合の中の メンバー のあいだの関係であれ、そして モノ から 新たな モノ をつくるには、関数 f (x, y) を使うということです。TMは、この四種類の 「関係」 を R(a, b)の関数を使って ルール 化 (一般手続き化) しています。すなわち、Event には Event としての規則を適用し、Resource には Resource としての規則を適用します。再帰は再帰としての規則を適用して、いちいち、従業員や部門、受注、契約などを考慮しながらモデルを考えなくてもいいということです。それが法則型推論ということです。法則型推論の対象になっているのは個体指定子です。

 ただし、前回 (3.3) で述べたように、R (Event, Resource) は数学的な関数にはなっていない点に注意してください。R (Event, Resource) は、TM のなかで 唯一 数学的 ソリューション になっていない。そして、厄介なことに、この R (Event, Resource) が 関数を使っている TM の数学的弱点であるいっぽうで、事業分析法 (事業構造を 「解析」 するための モデル) として最大の強みでもあるのです。 □

 




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