2004年11月 1日 作成 在庫の種類 >> 目次 (テーマ ごと)
2009年 2月 1日 補遺  

 

 
1. 典型的な在庫には以下の 3つの種類がある。

 (1) ロットサイズ 在庫 (lot size inventories, cycle stock)
 (2) 安全在庫 (safety stock)
 (3) 見越在庫 (anticipation stock)

 
2. ロットサイズ 在庫は大量効果という在庫理由に基づく在庫である。

 (1) まとめて生産すれば 1回の段取りで済むために低い コスト で生産できる。
 (2) ロットサイズ は、在庫 コスト と発注・段取り コスト との トレード・オフ である。
   (ロットサイズ 在庫を削減したければ、発注・段取り コスト を削減すればよい。)

 
3. 安全在庫は、需要や リードタイム など数量や時間の不確実性に起因する在庫である。

 (1) 需要があったとき、即座に注文に応じることのできる確率を サービス 水準 (service level) という。
 (2) 安全在庫は、サービス 水準を確保するために用意される在庫である。
    安全在庫を削減するためには、リードタイム を削減すればよい。

 
4. 見越在庫は、あらかじめ予測される変動 (たとえば、季節変動など) に対応する在庫である。
  すなわち、生産・原料の入手に能力制限があるため、予測変動に対して用意された在庫である。

 (1) 見越在庫を生産 コスト の上昇を招くことなく削減するために用いられる やりかた は、
    異なる需要 パターン の品種を組み合わせた生産設備の切り替えである。
    例えば、家電製品では、需要 パターン が正反対となる生産 (冬物と夏物の生産) を同一の工場
    で生産するなど (ファンヒータ と扇風機など。)
 (2) 生産能力を高め、稼働率を下げないようにすればよい。

 
5. 有効在庫

  有効在庫は、以下の定義である。契約可能在庫ともいう。
  基準生産計画 [ 後述 ] のなかで、有効在庫の概念を使うので、覚えておいてほしい。

 有効在庫 (available stock) = 手持在庫 (stock on hand) + 発注残 (stock on order) − 受注残 (backorder).





[ 補遺 ] (2009年 2月 1日)

 1970年代の 「多量生産・多量消費」 時代や、1980年代の バブル 経済期には、「在庫」 は多いほうが良いという考えかたが主体であった。というのは、「在庫」 は、財務上、「流動資産」 とされるし、1970年代・1980年代は、需要が強い時代だったので。しかし、1990年代に入って、バブル 経済が弾けて需要が落ち込み、マーケット (消費動向) も多様化して 「他品種少量生産」 に移行して、プロダクト の寿命も短くなったために、過剰な 「在庫」 は陳腐化の危険性に晒されるようになった。そのために、「在庫」 は、「企業の墓場 (Graveyard of Business)」 と云われるようになった。さらに、1990年代半ばから 「会計基準」 が国際会計基準に合わせるように改訂されて、2007年には、「在庫」 の評価が 「強制評価減」 のみになって──時価が原価を下回ったときには、時価で評価しなければならないので──、過剰な 「在庫」 は、多大な損失となる危険性があるので、企業は 「在庫」 を できるかぎり低減するようになった。

 1970年代・1980年代には、「在庫」 は、ひとつの拠点 (在庫点ともいう) で考慮されることが多かったが──だとえば、工場での在庫とか、販売店での在庫とか──、或る在庫点は、バリューチェーン (Supply chain、すなわち 「製・卸・販」 の流れ) のなかで、バリューチェン を ひとつの システム とすれば、サブシステム である。つまり、「在庫」 は、多段階性がある。バリューチェーン のなかの 「在庫」 総計を 「エシェロン 在庫 (echelon stock)」 と云う (「エシェロン 在庫」 の詳細は後日説明する)。
 1990年代なかば以後、エシェロン 在庫を低減することが在庫管理の目的になってきた。





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