2002年12月16日 作成 外国為替会計 (その 1) >> 目次に もどる
2007年 3月16日 補遺  

 

1. 外国為替会計の目的

 海外活動には以下の 2つの形態がある。

 (1) 直接的な海外活動として、海外の企業と外貨建ての取引をしている。
 (2) 間接的な海外活動として、海外子会社を使って取引している。

 直接的な海外活動では、債権債務や有価証券の換算が論点になる。
 間接的な海外活動では、連結財務諸表の作成 (あるいは、持分法の適用) のために換算が論点になる。

 
2. 換算 レート

 換算は評価尺度の変更であるから、取引の測定は既に完了している。
 換算 レート (為替 レート) の選択適用方法には以下の 2つがある。

 (1) 複数 レート 法
 (2) 単一 レート 法

 複数 レート 法には以下の 3つの やりかた がある。

 (1) 「流動・非流動」 法
 (2) 「貨幣・非貨幣」 法
 (3) テンポラル (temporal) 法 (「属性法」 ともいう)

 単一 レート 法には以下の 2つの やりかた がある。

 (1) 決算日 レート 法 (カレント・レート 法ともいう)
 (2) 計算 レート 法

[ 参考 ] 以後、以下の略語を使う。

 (1) 決算日の レート  --> CR (カレント・レート)
 (2) 取得時点の レート--> HR (ヒストリカル・レート)

 
3. 「流動・非流動」 法

 「流動・非流動」 法は以下の やりかた である。

 (1) 流動項目に対して CR を使う。
 (2) 非流動項目に対して HR を使う。

 ただ、この やりかた では、同じ属性でも適用される レート が違ってくることになる。
 たとえば、前払費用では、短期の費用に対して CR を使い、長期の費用に対して HR を使うことになってしまう欠点がある。

 
4. 「貨幣・非貨幣」 法

 「貨幣・非貨幣」法は以下の やりかた である。

 (1) 貨幣項目に対して CR を使う。
 (2) 非貨幣項目に対して HR を使う。

 すなわち、貨幣項目には CR を適用しているので、回収可能性を示すことができ、非貨幣項目は過去に取得されたのであるから HR が適用されるが、強制低価法を適用されている棚卸資産--したがって、時価を使って評価されていることになる--が HR を使って評価される欠点がある。

 
5. 「テンポラル」 法

 テンポラル 法は、基本的には、「貨幣・非貨幣」 法と同じであるが、外貨建ての段階において時価が適用されている項目に対しては CR を適用する点が特徴である。
 この点では合理的なのだが、非貨幣項目ごとに取得時点での レート を使わなければならないので、実地に使う際には非効率であることは否めない。

 
6. 「単一 レート (カレント・レート)」 法

 単一 レート 法は、すべての項目に対して CR を使うやり方であるが、(「貨幣・非貨幣」 法の欠点でもあったが) 過去に取得された項目に対しても CR を使うことになってしまい合理的ではない。

 
7. 為替損益

 換算のなかで生じた損益は為替差損益として計上される。

 
8. 二取引基準と一取引基準

 外貨建て取引では、取引の構成を判断するために、以下の 2つの考えかたがある。

 (1) 二取引基準
 (2) 一取引基準

 次回は、二取引基準と一取引基準を説明する。□



[ 補遺 ] (2007年 3月16日)

 外国為替取引は、原則として、取引発生時の為替 レート で記録します。
 外貨建資産負債の換算では、従来、貨幣・非貨幣法に流動・非流動法を加味していました。外貨建金銭債権債務では、外貨額では時価の変動 リスク を負わず、したがって時価評価の対象とならなくても、円貨額では為替相場の変動 リスク を負っていることを重視し、流動・非流動法に依らないで、決算時の為替相場で換算することが原則です。以下に例を示します。

 1. 決算の前に決済がある例

 (1) 取引時 (1 ドル = 110円)、100 ドルの商品仕入れ。

   (借) 仕 入  11,000    (貸) 買掛金  11,000

 (2) 決済時 (1 ドル = 100円)

   (借) 買掛金  11,000    (貸) 現 金  10,000
                   (貸) 為替差益  1,000  2. 決算の後に決済がある例

 (1) 取引時 (1 ドル = 110円)、100 ドルの商品仕入れ。

   (借) 仕 入  11,000    (貸) 買掛金  11,000

 (2) 決算時 (1 ドル = 100円)

   (借) 買掛金   1,000     (貸) 為替差益  1,000  (3) 決済時 (1 ドル = 105円)

   (借) 買掛金  10,000    (貸) 現 金  10,500
                   (貸) 為替差益   500

 なお、為替変動 リスク を回避するために、デリバティブ 取引を ヘッジ 手段 (変動を相殺する手段) として使うことが多いようです。海外取引をしている一般の企業 (金融機関ではないという意味) の決算報告書のなかで、デリバティブ 取引を使っているときには、たいがい、「為替予約」 のことです。
 「為替予約」 については、次回、説明します。




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