2003年 1月 1日 作成 外国為替会計 (その 2) >> 目次に もどる
2007年 4月 1日 補遺  

 

1. 二取引基準と一取引基準

 外貨建て取引では、取引の構成を判断するために、以下の 2つの考えかたがある。

 (1) 二取引基準
 (2) 一取引基準

 二取引基準とは、外貨建て取引を以下のべつべつの 2つの取引から構成されるとする考えかたである。

 (1) 物品取引 (外貨建て取引)
 (2) 決済取引 (円決済取引)

 一取引基準とは、外貨建て取引と円決済取引は連続する 1つの取引であるとする考えかたである。

 二取引基準と一取引基準では、「為替差損益」 の扱いが違ってくる。
 というのは、二取引基準では、為替差益は財務活動による キャッシュフロー として解釈されるから。

 
2. 為替予約

 為替予約の会計には以下の 2つがある。

 (1) 振当処理 (一取引基準である)
 (2) 独立処理 (二取引基準である)

 独立処理では、外貨建て取引については直物 レート を使う。

 ちなみに、為替予約差額には以下の 2つがある。

 (1) 直直 (じきじき) 差額
 (2) 直先 (じきさき) 差額

 「直直差額」 とは、取引時点と予約時点との間に生じる為替 レート の変動による差額のことをいう。
 「直先差額」 とは、予約時点の直物 レート と予約 レート の違いによる差額のことをいう。

 なお、直先差額は、予約期間にわたって償却しなければならない。

 日本では、実務上、振当処理が使われてきたが、新しい会計基準では、独立処理とされ、ヘッジ に対しては振当処理が認められている。



簡単な仕訳例
 (1) ドル 建て売掛金が 10,000ドル ある。
 (2) 売掛金の決済日を 2ヶ月後とする為替予約を組んだ。 (1ドル = 125円)
 ▼ 二取引基準 (独立処理)
 [ 発生時 ] 発生時 レート は、1ドル = 140円 である。
売掛金 1,400,000 売上 1,400,000
為替予約未収金 1,250,000 為替予約未払金 1,400,000
為替差額 150,000    
 [ 決算日 ] 決算日 レート は、1ドル = 130円 である。
為替差額 100,000 売掛金 100,000
為替予約未払金 100,000 為替予約未収金 100,000
為替差額償却 75,000 為替差額 75,000
 [ 決済時 ] 決済日 レート は、1ドル = 120円 である。
現金 1,250,000 為替予約未収金 1,250,000
為替予約未払金 1,300,000 売掛金 1,300,000
為替差額償却 75,000 為替差額 75,000


[ 補遺 ] (2007年 4月 1日)

 為替予約は、デリバティブ 取引 (為替予約、通貨先物、通貨 スワップ および通貨 オプション) なので、「金融商品に係る会計基準」 にしたがって、時価で評価されるのが原則です。したがって、評価損益は、損益計算書に計上されます。 [ デリバティブ 取引を参照されたい。 ]

 ただし、外貨建て金銭債権債務と為替予約との関係が 「ヘッジ 会計」 の要件を満たしているときには、ヘッジ 会計を適用できます。したがって、評価損益を繰り延べることが認められています。 [ ヘッジ 会計を参照されたい。 ]
 為替予約を ヘッジ 手段として使った振当処理については、会計の専門書を参照して下さい。

 なお、税務上は、振当処理を採用するためには為替予約契約の締結日に、その旨を帳簿に記載しなければならない。




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