2003年 2月16日 作成 経営分析 (その 1) [ 資本利益率 ] >> 目次に もどる
2007年 5月16日 補遺  

 

 
 企業の会計情報を分析し比較することを 「経営分析」 という。経営分析は財務諸表分析 (決算書分析ともいう) を中心にしているので、財務諸表分析とも呼ばれている。
 経営分析の数値は経営比較の データ として使われる。

 
1. 財務諸表分析の対象となる計算書類

 財務諸表分析の対象とされるのは以下の 3つの計算書類である。

 (1) 貸借対照表
 (2) 損益計算書
 (3) キャッシュフロー 計算書

[ 参考 ]
 キャッシュフロー 計算書の分析については、「Advanced Learner's」 の 「財務会計論 (「キャッシュフロー 計算書の見かた」)」 を参照されたい。

 経営分析では以下の分析が対象とされ、通常、「比率」 が使われる。

 (1) 収益性の分析 (資本利益率、売上利益率、使用資本回転率)
 (2) 流動性の分析 (2対1 の原則、酸性試験比率)
 (3) 安全性の分析 (固定比率、長期固定適合率)
 (4) 資本構成の分析 (資本構成比率)

 
2. 経営比較

 経営比較では以下の数値が使われる。
 (1) 期間比較 (たとえば、前年比など)
 (2) 相互比較 (同業他社との比較)
 (3) 標準比較 (同一業種の標準値との比較)

 標準比較をするために以下の資料が使われている。
 (1) [ 大企業に対しては ]  「日経経営指標 ハンドブック」 (日本経済新聞社 編)
 (2) [ 中小企業に対しては ] 「中小企業の経営指標」 (中小企業庁 編)

 
3. 資本利益率 (収益性の判断)

 収益性の分析には資本利益率が使われる。資本利益率の基本形は以下の算式である。

  資本利益率 = 利益 ÷ 資本

 資本利益率は以下の 2つの比率から構成される。

 (1) 売上利益率 (利益 ÷ 売上高)
 (2) 使用資本回転率 (売上高 ÷ 資本)

 つまり、資本利益率 = 売上利益率 × 使用資本回転率である。
 [ 利益 ÷ 資本 = (利益 ÷ 売上高) × (売上高 ÷ 資本)]

 すなわち、どれだけの資本を使って、どれだけの売上高を実現して、売上高のなかで利益が どのくらい占めているのか、という点を示す比率である。ちなみに、利益と使用資本は以下のように計算される。

 (1) 利益 = 売上高 − 売上原価 (*1)
 (2) 使用資本 = 固定資産 (*2) + 運転資本 (*3)

 
(*1) 製造原価+販売費および一般管理費
(*2) 繰延資産は参入しない。
(*3) 流動資産−流動負債

 次回は、そのほかの比率 (流動性の分析、安全性の分析、資本構成の分析) を説明して、それぞれの比率を簡単な例題を使って計算してみる。



[ 補遺 ] (2007年 5月16日)

 資本利益率は、企業の成績を計る典型的な数値として使われている理由は、本 エッセー で述べたように、その比率が、売上利益率と使用資本回転率から構成されていて、売上高・売上原価・固定資産・運転資本という企業活動・事業活動の重立った数値を総体的に観ることができるからです。したがって、企業そのもの-の (過去の成績を報告する) 「通信簿」 です。
 ROE (Return On Equity、投資利益率) は、運転資本を株主持分 (株主の払込資本) にした式です。




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