2005年 8月16日 基準編-10 参照 キー の挿入 ルール >> 目次にもどる
2010年 7月16日 補遺  

 

 基準編-10 は、いまになって読み返せば、T字形 ER手法が TM (および TM’) として整えられる過程のなかで、最大論点の 1つになった点である。基準編-10 のなかで、少なくとも、以下の 3点は、論点になる。

 (1) 「参照 キー」 という考えかたが、(認知番号を起点にする) 個体に対して妥当かどうか。
 (2) 「resource-対-event」 の 「複数-対-複数」 リレーションシップ を ルール 化していないのは、なぜか。
 (3) 「resource-対-event」 では、(R) が、どうして、「event」 のほうに複写されるのか。

 これらの論点は、「黒本」 では、そのまま、ルール として、覚えてほしい、という論調になっている。
 そして、これらの論点は、「論考」(2000年出版) のなかで、説明されている。

 「黒本」では──そして、「論考」でも──、「認知番号」 という考えかたは、いまだ、出ていない。「Identifier (指示子)」 に対して、適訳を思い浮かばないことに悩んだまま、「identifier」 という英語を、そのまま、使っている。ただ、この時点では、いまだ、「identifier」 を、「認知」 という観点に立って検討しようという考えかたは出ていなかった──そして、「論考」 では、やっと、「認知」 という行為を、「同意」 のなかで理解しようと転回したが、それでも、「identifier」 に対して、「認知番号」 という訳を思い浮かばなかった。「認知番号」 という言いかたをするようになったは、「論考」を出版したあとになってからである (2002年頃になってからである)。

 
 ● 参照 キー と 対照表 (「真理値表」 か 「集合 オブジェクト」か)

 もし、「黒本」 を執筆していた時点で、「認知」 を、「同意」 のなかで、意識していたら、「参照 キー」 という言いかたを、絶対にしなかったはずである。「黒本」 では、いまだ、「認知」 という行為を意識していないので、T字形 ER手法の体系 (構文論) として、どうしても、データ 設計法の性質を活かすように整えようとしていた。そのために、(次回の論点になるが、) 「黒本」 を執筆していた時点では、「対照表」 を「集合を組とする オブジェクト」 として考えることができなかった。「対照表」 は、どちらかと言えば、構文論的な観点に立って、(T字形 ER手法を作る前提にした) ウィトケ゛ンシュタイン 氏の 「写像理論 (picture theory)」 が提示した「真理値表 (truth-table)」 として考えていた。

 「対照表」 は、そもそも、(コッド 正規形が認めた)「null」 を除去するために──「resource」 のなかで、「null」 が起こらないようにするために──導入した技術である。しかし、その際、やっかいな論点になったのが、「参照 キー」 のみが構成する テーブル (対照表) は、(コッド 正規形の観点に立って判断すれば、) 「非正規形」 である、という点であった。
 そのために──対照表を正当化するために──、それ (対照表) を、意味論的に、(T字形 ER手法の定義に従って、) 「event」 として整えた。この時点で、対照表が、(非正規形ではあるが、) 意味論的に観て、 「集合 オブジェクト (集合を組とする オブジェクト)」 である、という点に気づかなければならなかったのだが、「文法 (生成規則)」 を説明する点 (構文論) を重視していたので、とうとう、気づかないまま、意味論を部分的に導入して、(T字形 ER手法の定義に従って、) 「event」である、という点で、論旨が止まってしまった。
 もし、この時点で、「対照表」 に対して、オブジェクト 概念を導入していれば、T字形 ER手法を、TM および TM’ として整える過程は、もっと、速まっていた、と思う。

 「論考」 以後、TM および TM’ では、「参照 キー」という言いかたは、一切、していない。

 
 ● 「resource-対-event」 の 「複数-対-複数」 リレーションシップ

 「resource-対-event」 の 「複数-対-複数」 リレーションシップ では、「HDR-DTL」 が典型的な現象になるが、「HDR-DTL」 を、(写像理論のなかで、かつ、命題論理──「主語-述語」 形式を elementary proposition とする考えかた──を前提にして、) 妥当な構造として説明し切れなかったので、「resource-対-event」 の 「複数-対-複数」 リレーションシップ を明示しなかった。そして、その ルール 化は、「論考」 でも、できなかった。というのは、「resource-対-event」 の 「複数-対-複数」 リレーションシップ が起こる現象を、いくつも、検討してきたが、──「HDR-DTL」 は、「resource-対-event」 の 「複数-対-複数」 リレーションシップ の典型的現象ではあるが──かならずしも、「HDR-DTL」 のみが、「resource-対-event」 の 「複数-対-複数」 リレーションシップ現 象として起こる訳ではないので、「ルール 化できない」 という判断をした (この点に関しては、本 ホームページ 293ページ を参照されたい)。

 「resource-対-event」 では、(R) が 「event」 のほうに複写される理由として、のちのち、「論考」 のなかで、「関係の論理 (aRb)」 を、意味論的な観点に立って、記述している。「黒本」 では、「関係の論理」 を直接の対象とはしていない。というのは、「黒本」 のなかで、説明が不充分であった点を、再度、(「関係 R」 を 「関数」 として扱わない観点に立って、) 再検討するために、「論考」 を執筆したので、「論考」 のなかで、はじめて、「関係の論理」 を論点にした。「論考」 以後、関係の生成規則 (4つの ルール) は、TM および TM’ のなかで、(関係の論理を前提にして、) 以下のように、まとめられた。

 まず、aRb として、「a ≠ b」のとき、

 R1: 「event」 と 「resource」 のあいだに成立する関係を記述する。
 R2: 「event」 と 「event」 のあいだに成立する関係を記述する。
 R3: 「resource」 と 「resource」 のあいだに成立する関係を記述する。

 さらに、aRb として、「a = b」 のとき、

 R4: 「自己言及 (再帰)」 を記述する。

 



[ 補遺 ] (2010年 7月16日)

 前回の補遺 (2010年 7月 1日) で、「黒本」 で述べた 「リレーションシップ は アクセス・パス である」 という記述は間違いであって、のちに、「赤本」 で導入した 「(導出的な) L-真」 (生成規則、構文論)・「(事実的な) F-真」 (指示規則、意味論) を使って、正確に整えられたことを述べました。

 本 エッセー の論点になっている 「参照 キー」 も──そして、図のなかでの (R) の記法を 「Reference Key」 の略語であるとした記述も──、(「黒本」 の間違いを訂正するために執筆した) 「論考 (『論理 データベース 論考』、2000年出版)」 のなかで否定して、(R) は、構文論上、「演算された (Re-used)」 という意味でしかないことを記しました。

 関係文法の 4つの規則が 「関数」 の観点で正しく まとめられたのは、やっと、「いざない (『モデル への いざない、2009年出版』)」 においてでした。この時点で、「リレーションシップ」 という語は消え去って、「リレーション」──「関数」 という意味での relation ──という語が TM のなかで主体 (中核の技術) となりました。

 そして、「いざない」 において、「同意、L-真 および F-真」 の連関が検討されて、TM (および TM’) は、以下の体系として整えられました。

    「同意」 された語彙 → (導出的な) L-真 → (事実的な) F-真.

 (導出的な) L-真を構成するときに 「関数 (リレーション)」 を使います。





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