20061016

応用編-18 「みなし スーパーセット」

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2011916日 補遺

 



 TM (個体の認知、個体の性質、関係の論理、データの周延、データの多値) に対して、さらに、意味論を強く適用した体系を TM’ という。TM’ は、TM に対して、以下の 2点を増補した体系である。

  (1) みなし entity
  (2) みなし スーパーセット (概念的 スーパセットともいう)

 「黒本」本編では、「みなし スーパーセット」 を説明しているが──説明そのものは間違ってはいないが──例が適切ではなかったと思う。「取引先」 の例を使ったほうが わかりやすかったのではないか。たとえば、entity として、出荷先・納入先を考えてみる。そして、それらの entity に対して、「取引先」 という 「みなし スーパセット」 を考えてみる。

 

             ┌─────────────────┐
             │       取引先      R│
             ├────────┬────────┤
             │        │        │
             │        │        │
             │        │        │
             └────────┼────────┘
                      |
                      × 概念的 スーパーセット
                      ↓
          ┌───────────┴───────────┐
          |                       |
 ┌────────┴────────┐     ┌────────┴────────┐
 │       納入先      R│     │       出荷先      R│
 ├────────┬────────┤     ├────────┬────────┤
 │納入先コード  │納入先名称   │     │出荷先コード  │出荷先名称   │
 │        │        │     │        │        │
 │        │        │     │        │        │
 │        │        │     │        │        │
 │        │        │     │         │        │
 └────────┴────────┘     └────────┴────────┘





 「みなし スーパーセット」 は、「概念的 スーパーセット」 ともいうように、「家族的類似性」 の強い いくつかの entity を 「概念的に」 まとめる。「概念的」 といっているように、「みなし スーパーセット」 は、数学上の クラス ではない点に注意されたい。

 「みなし スーパーセット」 を作ったら、次に、「集合と メンバー」 の観点に立って、メンバー が周延しているかどうかを検証すればよい。すなわち、「みなし スーパーセット」 を、もし、1つの セット (集合) として考えれば、納入先と出荷先は サブセット になる。サブセット のあいだには、排他的 OR 関係が成立する。したがって、たとえば、納入先の メンバー は、出荷先の メンバー にはならない。もし、納入先の メンバー であり、かつ、出荷先の メンバー であるような事態が起こる──「まじわり」 が起こる──のであれば、上述した構造は周延していないので、修正されなければならない。

 また、当然ながら、「集合と メンバー」 という観点に立ってば、納入先と出荷先のほかに、「取引先」 として考えられる メンバー はないのかどうかを検討しなければならない。たとえば、支払先も 「取引先」 になる。とすれば、ユーザ に対して、支払先の データ は、どのように扱われているのかを問わなければならない。

 「みなし スーパーセット」 は、データ設計上、「一般化 (generalization)」 と同じである (「一般化」 については、105 ページ を参照されたい)。

 「みなし スーパーセット」 は、entity ばかりではなくて、アトリビュート に対しても使うことがある。たとえば、以下を考えてみる。

 

             ┌─────────────────┐
             │       単 価       │
             ├────────┬────────┤
             │        │        │
             │        │        │
             │        │        │
             └────────┼────────┘
                      |
                      × 概念的 スーパーセット
                      ↓
          ┌───────────┴───────────┐
          |                       |
 ┌────────┴────────┐     ┌────────┴────────┐
 │       受 注      E│     │       商 品      R│
 ├────────┬────────┤     ├────────┬────────┤
 │受注番号    │受注日     │     │商品コード   |商品名称    │
 │        │受注単価    │     │        │商品単価    │
 │        │        │     │        │        │
 │        │        │     │        │        │
 │        │        │     │         │        │
 └────────┴────────┘     └────────┴────────┘





 この図では、「単価」 として、「『正価』 と 『時価』 の 2つがある」 ことが示されている。

 



[ 補遺 ] 2011916日)

 本文のなかで、「『みなし スーパーセット』 は数学上の クラス ではない」 と綴っていますが、その意味は、「T之字」 形式のなかで、右側 (「性質」 の記述) を記述しないという点を注意したかったからです。というのは、数学上の クラス は f (x) として記述され、さらに、階を導入するのであれば、G (f) となって、つねに、「性質」が問われるので──ただし、数学者たちは、「性質」 という用語を使うのを嫌って、f (x) そのものを クラス と云うでしょう。TM は セット 概念を基底にしていて、クラスが その構成員として クラス をもっているなら、その (最下位の) 構成員を セット とするというのが私の考えかたです。クラス 概念を使う観点から言えば、セット は クラス の特殊形と考えていいでしょう。そうであれば、「みなし」 概念は クラス 的考えかたであると云っても間違いではないでしょうね。







 

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