2020年 3月 1日 「5.2.4 真理関数と ブール 関数」 を読む >> 目次に もどる


 本節は、前節で述べた ブール 関数を使って、真理関数を扱っています。そして、本節で扱った真理関数が次節の 「恒真性の テスト」 に適用されます──「ブール 関数 → 真理関数 → 恒真性の テスト」 という一連の流れを構成しています。私の狙いは、前節の 「ブール 束」 の注釈 (7) で扱った 「無矛盾性・独立性・完全性」 を次節の 「恒真性の テスト」 すなわち 「証明可能性」 へと導くことでした。

 ブール 関数について、私は原典 (1847年、1854年の論文) を読んではいない──数学入門書のなかで通説として記述されている基礎知識しかもちあわせていない。私が ブール 関数を テーマ にした理由は、前述したように 「論理の記号演算」 のなかで 「証明可能性」 を扱うためでした。すなわち、「構文論」 を全面に打ち出したかったのです。システム 設計の いわゆる 「分析」 段階で従来から使われている 分析法が 「意味論」 に偏っていることに対して私は大きな不満を抱いていて、モデル というからには 「構文論が先で、意味論は後 (あと)」 であるべきだと私は考えています。システム・エンジニア の感覚的な 「解釈」 を付与されない対象について推論することが正当なことであることを私は示したかった ──事業を営んでいる エンドユーザ が伝達している 「情報 (言語)」 を対象にして、その言語を変形しないで、できるだけ機械的に (すなわち、代数演算に近い形で) モデル を作成することを考えていました。

 ブール は彼の論文のなかで次のように言っています (出典 「現代数学教育事典」)──

 (1) 数や量の観念について専念することは、数学の本質ではない。(1854年の論文)

 (2) 演算それ自体は、(その演算が適用される様々な) 対象から独立して取り扱う (1847年の論文)

 つまり、ブール は 「構文論」 を強調していて、従来の数学の対象であった 「数、量、図形」 の解析から 「対象、モデル、構造」 の解析への道を開きました。私は数学者ではないので、この辺りの数学史の知識がないのですが、ブール 関数 (および集合論) を基点にして 「思考・論理を解析する」 ことを学習して、そして モデル の学習へと進むことを私は考えていました。その学習の やりかた が正しい (効率的) かどうかという点については、「いざない」 を読んだ人々の判断に委ねます。

 さて、ブール 代数の特徴は、前節で述べたように、論理計算の中に、あらゆる対象の集合である 「l'univers」 として 「1」 という モノ を導入した点でしょう──x, y,・・・で主題 (主語) としての モノ をあらわし、1 で全体を、0 で皆無をあらわします (「いざない」p.126)。ブール 代数を 2項演算をもつ代数系として公理的に扱い、デジタル 回路設計に役立っている公理系が いくつかあります。その公理系の1つに ニューマン の公理系があります。この公理系は ブール 代数を結∪と交∩で規定する最小の公理系として有名です。その公理系は次のとおり──

 (1) a∩(b∪c)=(a∩b)∪(a∩c),
   (b∪c)∩a=(b∩a)∪(c∩a).

 (2) すべての a に対して、a∩ =a, a∪ ∪a= を満たす  が存在する。

 (3) すべての a に対して、a∪0=0∪a=a を満たす 0 が存在する。

 (4) 各 a に対して、少なくとも 1つの a' があり、a∩a'=0、a∪a'= を満たす。

 数学を専門にしていなかった システム・エンジニア にとって、ブール 代数といえば、(集合と ブール 代数を いっしょにして考えて) この ニューマン の公理系のほうが わかりやすいのではないかしら。この公理さえ知っていれば、a'= −a [ ブール 関数 f(¬p)=1−f(p) ] も直ぐに導出できますね。

 本節で私が示したかったことは、対象 (主語) を記号としてあらわして、対象がつくる構造 (論理) の真偽は演算を通して検証することができる [ そういう関数がある ] という点です。 □

 




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