2002年10月16日 作成 テーブル 便覧 >> 目次 (テーマ ごと)
2007年11月16日 補遺  


 TH さん、きょうは、図表を作成する やりかた として、「テーブル 便覧」 について、お話しましょう。

 以前の 「問わず語り」 のなかで (154ページ)、新井清光 著 「財務会計論」 を材料にして、サブノート の作りかたを記述しました。そのとき、サブノート は 「左右見開き ページ」 形式にして、左 ページ には文章を綴り、右 ページ には図表を作成することをお薦めしました。その図表の作成法が 「テーブル 便覧」 形式です。

 「テーブル 便覧」 という言いかたは、小生が、大学生の頃、会計学を学習していたとき、故・田島四郎 氏 (横浜市立大学商学部 教授) が著された入門書の 1つの書名が 「テーブル 便覧」 という言いかたを使っていました (技術評論社の出版だったと思うのですが、曖昧な記憶です)。田島教授の 「テーブル 便覧」 は、1 ページ ずつ、1 つの テーマ を 「テーブル」 形式を使ってまとめた書物でした。

 さて、この 「テーブル 便覧」 を サブノート の図表に流用すれば良いでしょう。
 「問わず語り」 の 154 ページ のなかでまとめた 「財務会計論」 の文章を、「テーブル 便覧」 形式にして、以下に作成してみましょう。

 


企業会計の理論的構造は、以下の 3階層から構成される
(1) 会計公準 (基礎的概念) (2) 会計原則 (会計基準) (3) 会計手続


会計公準は、以下の2つに分類される
(1) 構造的公準 (会計の構造) (2) 要請的公準 (会計の目的)


構造的公準には、以下の 3つがある
(1) 企業実体の公準 [ 計算単位 ] (2) 会計期間の公準 [ 計算期間 ] (3) 貨幣的測定の公準 [ 計算手段 ]


企業実体の公準 [ 計算単位 ]
計算単位には、以下の 2つがある
(1) 法的実体 (個別財務諸表) (2) 経済的実体(連結財務諸表)


会計期間の公準 [ 計算期間 ]
(1) 期間的に区切って計算する (会計年度) (2) 「継続企業の公準」 ともいう


貨幣的測定の公準 [ 計算手段 ]
(1) 貨幣数値を尺度にする (2) 貨幣価値の認知は、べつの論点である
  物価水準外貨建て換算

[ 以下、省略 ]


 以上の具体例から判断できるように、「テーブル 便覧」 は、中味を 「一目で見て取る (give visibility)」 ことができるという長所があります。以上の (それぞれの) 「テーブル」 は、個々の概念を テーブル 化しただけですが、それらの テーブル を組んで、もう少し広い構造を記述することもできるでしょう。

 図表化する手法は、数々ありますが、「テーブル 便覧」 は、概念を最初に解析するためには (簡単な手法ですが--したがって、使いやすい手法です)、極めて役立つ手法でしょう。概念を解析するとき、「テーブル 便覧」 を最初に使い、それから、色々な図表化をすれば良いでしょうね。

 



[ 読みかた ] (2007年11月16日)

 私が 「テーブル 便覧」 法を使い始めたのは、たぶん、いまから 30年ほど前の大学院生であった頃だと記憶しています。本 エッセー のなかで綴ったように、当時、田島先生の著作を読んで、「テーブル 便覧」 法の コンパクト な まとめかた を気にいって、大学院に入学してから、いままで、「テーブル 便覧」 法を ずっと使い続けています。セミナー 用 ハンドアウト 作成や、著作の執筆でも、「テーブル 便覧」 法を使っています。ちなみに、「テーブル 便覧」 の罫線をひくには、ワープロソフト の 「一太郎」 が使いやすいので、私は、「一太郎」 を使い続けています。

 「テーブル 便覧」 法は、概念の 「解析・構成」 では、とても役立ちます。キーワード を単に図式化するのとは訳がちがう。「テーブル 便覧」 法は、数学で使われている 「タブロー (tableau)」 法に似た技術です。すなわち、複合命題を、ひとつずつの組成命題に ばらして、それらの 「関係」 を確認 (検証) する やりかた です。この やりかた が、私の思考法に合うようです。というのは、logical thread を追跡しやすいので。「テーブル 便覧」 法を使って 「概念の解析・構成」 が終わったら、それらの まとめ を色々な図法で描き直しても良いでしょうが、私は、図法に興味がないので、たいがい、「テーブル 便覧」 のままにしています。というのは、キーワード のみを、「見える化」 と称して、きれいな図画で描いても、logical thread が追跡しにくいので、そういう資料を、私は、読みたくない。Logical thread を示していない--言い換えれば、「構成」 の からくり を示していない--資料に対して、私の興味がわかないのです。




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  佐藤正美の問わず語り