2006年 2月 1日 作成 プレゼンテーション の技法 (構成表) >> 目次 (テーマ ごと)
2011年 1月16日 補遺  


 
 TH さん、きょうは、「プレゼンテーション の技法 (構成表)」 について考えてみましょう。

 
 かって (230 ページ) 、プレゼンテーション 技法のなかで、「構成の ルール」 を語りました。その随筆のなかで、モーツァルト が交響曲を構成する際に、3 部構成にするか 4 部構成にするかを悩んでいたことも言及しました。「作品」 の構成に関して、天才 モーツァルト でさえ悩んだ点なので、われわれ凡人が、(プレゼンテーション を作品として考えれば、) 構成に悩んでも致しかたないのかもしれないですね。

 プレゼンテーション では、構成は時間割りを考慮しなければならないでしょう。たとえば、30分の プレゼンテーション と 2時間の プレゼンテーション では、構成は相違します。30分の プレゼンテーション を 「水増し」 すれば──たとえば、引用例を増やして、それぞれの例を丁寧に解説するとか──、2時間の プレゼンテーション になる訳じゃない。

 (丸 1日間とか、丸々 2日間とかの長さで、 セミナー の講師を勤めることを除けば、) 私は、講演会や講義では、たいがい、1時間、1時間半、2時間という長さの プレゼンテーション をすることが多い。それらの時間のなかで、意見を系統立って旋回するには、あらかじめ、旋回の手順を考えていなければならないでしょうね。「旋回」 と綴ったように、講演会では、話の起点が終点になるように、円をえがいて着地することを狙っています。プレゼンテーション の テーマ 次第では、(テーマ に対する意見を系統立てて旋回しないで、) 意見を羅列して提示する形態もありますが、1つの テーマ を語るなら、基本的には、「構成の ルール」 のなかで述べたように、テーマ を旋回するのが定形でしょうね。プレゼンテーション は (意見を) 「数珠つなぎ」 にするのが基本形でしょうね。

 さて、3 部構成にするか 4 部構成にするかは、モーツァルト でさえ悩んだ点なので、私は、真っ向から考えないことにしています。天才が悩んだ点を凡人の私が追究しても確かな帰着点に辿り着ける訳じゃないから。そして、私は、「4 部構成を上限とする」 というふうに上限値のみを守るようにしています。プレゼンテーション の構成を考えるときには、「4 部構成を上限にした構成表」 を、いつも、作成しています。その構成表を以下に示します。

┌─┬────────────────┬─┬─────────────────┐
|1│                │2│                 │
├─┴────────────────┼─┴─────────────────┤
│                  │                   │
│                  │                   │
│                  │                   │
│                  │                   │
│                  │                   │
├─┬────────────────┼─┬─────────────────┤
│3│                │4│                 │
├─┴────────────────┼─┴─────────────────┤
│                  │                   │
│                  │                   │
│                  │                   │
│                  │                   │
│                  │                   │
└──────────────────┴───────────────────┘

 
 早稲田大学 エクステンションセンター で開催している 私の講義に参加した人たちは、この構成表を見慣れているでしょう (笑)。私は、講義 (1時間半の長さ) が始まる前に、かならず、この構成表を板書して、当日の テーマ を示しましたから。たとえば、昨年 12月 2日の講義では、以下の構成表を示しました──当日の構成表が、たまたま、いま、私の手近にあったので、例として使います。

┌─┬────────────────┬─┬─────────────────┐
|1│ 実例             │2│ データ構造           │
├─┴────────────────┼─┴─────────────────┤
│                  │                   │
│(1)データ構造          │(1)データの独自性         │
│(2)プログラムのソース・コード  │  (内部、概念、外部)       │
│(3)データベースのパフォーマンス │(2)データ・モデル         │
│                  │  (データ構造、データ演算、制約) │
│                  │                   │
├─┬────────────────┼─┬─────────────────┤
│3│ 関係モデル          │4│ セット・アット・ア・タイム   │
├─┴────────────────┼─┴─────────────────┤
│                  │                   │
│(1)直積集合           │(1)MAX-SIO の無制限        │
│(2)関数従属性、包摂従属性    │(2)Compound Boolean Selection   │
│(3)集合演算           │(3)traversal table         │
│(4)リレーショナル代数演算    │                   │
│                  │                   │
└──────────────────┴───────────────────┘

 
 この構成表があれば、私は、1時間半 (あるいは、2時間) の プレゼンテーション をこなすことができます。そして、この構成表が、あらかじめ、提示されていれば、プレゼンテーション を聴いている人たちも、プレゼンテーション のなかで提示される重立った概念を掴んで、logical thread を追跡することができるでしょう。構成表は、箇条書き形式でも良いのですが、一目で見て取ることが難しい。たとえば、以下の箇条書きと上述した構成表を比べてみて下さい。

 1. 実例

  (1) データ 構造
  (2) プログラム の ソース・コード
  (3) データベース の パフォーマンス

 2. データ 構造

  (1) データ の独自性
    (内部、概念、外部)
  (2) データ・モデル
    (データ 構造、データ 演算、制約)

 3. 関係 モデル

  (1) 直積集合
  (2) 関数従属性、包摂従属性
  (3) 集合演算とリレーショナル 代数演算

 4. セット・アット・ア・タイム

  (1) MAX-SIO の無制限
  (2) Compound Boolean Selection
  (2) traversal table

 
 箇条書きは、キーワード を使って記述すれば、一覧しやすいと言われていますが、上に示したように そうでもないことが わかるでしょう。箇条書きは 「手順 (logical thread)」 を示していますが、なんらかの図表を使って表現しないかぎり、全体の構成を一目で見て取ることが難しい。しかも、プレゼンテーション では、それぞれの項目を同じ リズム (rhythm) でしゃべる訳ではないので──全体の流れのなかで、話の リズム は クレッセンド (crescendo) したり、デクレッセンド (decrescendo) したり、フォルテ (forte) や ピアノ (piano) の装飾を施して緩急強弱を潤色するので──、個々の概念が全体のなかで占める ポジション を見て取る構成表があれば、プレゼンテーション を構成しやすいでしょう。「構成」 を頭のなかで思い描いて、それを一気に 「手順」 として記すことができるというのは天才でしょう──モーツァルト は、たしかに、そういう天才でした。ただ、われわれ凡人は、そういう芸当はできないでしょうし、全体の構成のなかで、それぞれの概念が担う役割を確認するために、なんらかの構成表を作るのが賢明でしょうね。



[ 読みかた ] (2011年 1月16日)

 「プレゼンテーション の構成法」 について、私は、今では、本 エッセー で述べた やりかた をしていない──他の やりかた をしています。今 使っている やりかた については、いずれ、本 ホームページ で説明します──簡単な予告をしておけば、私が今 使っている やりかた は、ひとつの概念を { 概念の定義、概念の類語・関連語、概念の反対語、私の実感 } という組で定立して、{ 時間軸、(生起する) 可能性 } という組で構成する やりかた です。





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  佐藤正美の問わず語り