思想の花びら 2020年 9月 1日


 ●  アラン (哲学者) のことば

  神の職業はむずかしいものではない、まにあうだけの威厳さえ備えていればよいのだ、そして大なり小なりの恩恵を人々に期待させていればよい。神さまを作るのは、礼拝者たちだ。彼らの側に、神さまの気に入るものがなくなったらどうしようという美しい恐怖があれば充分である。気楽さとか率直さとかいうものは、たとえ単なる礼儀に由来したものでも、野心の苦しみをへらす、がまた、楽しみもへらす。これに反して、野心に少々野蛮さが加わると、野心の成功もめざましくなるが、惨憺たる敗北も味わう。(略) 志願者や俳優などの恐怖もそこからくる、とくに俳優に固有な恐怖はみとめられたいと思うところからきている。

 



 ●  亀井勝一郎 (批評家) のことば

  邂逅によつて却て反撥が起ることもあるが、それでもいゝ。納得出来ないものは、たとひ世から尊敬されてゐる権威であつても、納得出来るまで追究したらいゝ。謝念は追従であつてはならない。自分の生命をのばすための苦しい戦ひである。しかもそれを通して謝念をもつならば、そこに人間の真の協和が可能だのではあるまいか。和して而して同ぜずという孔子の言葉がある。(略) 我々は多くの場合、同じて而して和せずである。妥協し外見上仲よくしてゐるが、心の中では反撥したり、ひがんだり嫉妬したりしている。人間の悲しむべき状態だが、そのために私は人生を否定的にみようとは思はない。

 


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